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連載

【第15回】花色の組み合わせを考えてみよう

文・写真

加地一雅

かじ・かずまさ

株式会社エクステリア風雅舎代表。1987年、苗の育成から個人邸の庭のデザイン、施工、メンテナンスまで行う風雅舎を設立し、現在に至る。草花が自然風に咲くナチュラルガーデンを啓蒙、普及されるべく奮闘中。


執筆者の加地先生は2017年12月にご逝去されました。謹んでお悔やみ申し上げます。皆様の園芸知識向上にこの連載を役立ててほしいとのご家族様のご意向から、文章はご執筆当時(2016-2017年)のまま継続して掲載をさせていただくことになりました。時代を感じさせる部分があるとは思いますが、お含みおきの上ご覧ください。

【第15回】花色の組み合わせを考えてみよう

2017/03/14

花壇づくりで花色の組み合わせを考えることは、自分が望む花壇ができるかどうかを決める最重要事項です。色が与える影響力は非常に大きいので、ここは一つ演出家気分になって花色をコーディネートしてみましょう!

イラスト:ハンダタカコ

-ポイント1- 花色コーディネート力を磨くには

いろんな花色を見てどう感じるか、心に聞いてみよう

黄色をベースにしたボーダー花壇です。黄色、オレンジ色は緑の中でよく映えて、辺りをパッと明るくしてくれます

一昔前の花壇は、特別花色は意識せず、自分の好きな花のタネをまいて、育てて、切り花で楽しむというスタイルが多かったように思います。現在はそれなりに好みの花をコーディネートしながら植える方が、徐々に増えてきました。花壇にとっての花色とは、人の感覚に最も訴えかけられるものなので、花色コーディネート力を身に付けると、自由自在に花壇を演出できるようになります。

例えば、上写真の花壇のように黄色、オレンジ色は緑の中でよく映えて、辺りをパッと明るくしてくれます。花材は、大型黄花のバーバスカムに薄黄色のツキミソウ、黄花斑入りのユーフォルビア、オレンジ赤のポピーと、それぞれ個性の異なる植物たちですが、黄色、オレンジ色が基調色として、まとめてくれています。下の写真は夏から秋にかけて楽しむ、赤色をテーマにした花壇で秋らしさを主張しています。赤葉のコリウスに黒葉でオレンジ赤花のダリアをシンボルプランツに選んでいます。

同じ赤花でも季節が変わると、夏は夏らしくトロピカル調の赤に、秋は秋らしくさえ渡った赤に映ります

色の持つ力を理解できるようになると、花色の構成を考えることがとても楽しくなってきます。色を意識し始めた最初のころは、目立つ色、はっきりした色しか目に入らなかったものが、色に関心を持ち出すと、微妙な色の違いも識別できるようになります。さらに違う花色同士を組み合わせて、新たな感覚を感じられるようになると、ガーデナーしか体感できない演出能力を身に付けることができます。

下の写真をご覧ください。緑地の中に淡いピンクと薄黄色のチューリップを植え込みました。ピンクという色は春ののどかさを演出するにはぴったりの色です。見ているだけで春の暖かさが伝わってきます。花色コーディネート力を磨くには、いろんな花色を見てどう感じるか、感受性を磨くことが一番大切だと思います。

低木やグラウンドカバープランツをあしらった緑地の中に、淡いピンクを中心に少しだけ薄黄色のチューリップを植え込みました

-ポイント2- ブルーと黄色は好相性、ピンク、パステルはほんわかカラー

パステルカラーを使えば目にも優しい印象の花壇に

夏のボーダー花壇。薄いレモンイエローの花を咲かせるヒマワリ「イタリアンホワイト」と、ブルーの穂状花を次々咲かせるラベンダーセージの組み合わせです

花色コーディネートの初心者は、同系色もしくは相性のよい2色の組み合わせから始めるのがおすすめです。相性のよい2色の組み合わせの一番のおすすめは、ブルーと黄色です。この組み合わせは季節を問わず、まず失敗がありません。

上の写真のように組み合わせる黄色は、濃い黄色だとコントラストがきつくなるのですが、薄い黄色だと優しい雰囲気を醸し出し、目にも優しく映ります。高さを出したい花壇で夏から秋にかけて長く咲かせたいとき、ラベンダーセージとヒマワリ「イタリアンホワイト」はおすすめの組み合わせです。

下の写真もブルーと黄色を組み合わせた、夏から秋にかけて楽しむボーダー花壇です。ここではライラックブルーの花をいっぱい咲かせるニチニチソウを使いましたが、ブルーといってもいろいろなブルーがあり、それぞれに微妙に印象が変わり、色合わせの醍醐味(だいごみ)を味わえます。

ライラックブルーの花のニチニチソウ、ライムイエローの花が特徴的なケイトウ、奥にはコリウス「ガイズデライト」を組み合わせた花壇です

ほんわかとした温かい雰囲気を出したいときは、ピンクや中間色などのパステルカラーで組み合わせることをおすすめします。原色の絵の具に白を混ぜると中間色ができるのですが、赤色に白を混ぜるとピンクができます。ピンクも中間色の一つで、その他の中間色と合わせてパステルカラーと呼びます。

例えば、下の花壇はパステルカラーの植物で構成したボーダー花壇です。主張らしき主張は持たず、心地よい空間をつくりたいときに特におすすめです。オルレアなどの白花をところどころに植えると、より明るさが増し、パステルカラーによく溶け込みます。高さの変化を出すのも重要です。

パステルカラーのボーダー花壇です。原色は入れず、中間色の小花で構成しています

このパステルカラーは目に最も優しく映り、ほんわかとした温かい空気感が漂います。とりわけピンクの比率が高いと温かいイメージが強まり、寒色であるブルーに白を混ぜてできた水色の比率が高くなると、さっぱりとしたイメージが強まります。

下の写真はピンクでコーディネートした花壇です。桃色タンポポという和名をもつクレピス ルブラにチューリップ「マリリン」、ピンク小花のサポナリア オキモイデスが植わっています。株間にはグリーンの穂を楽しむ小型のラグラス オバタスを植えています。春ののどかな風景を演出しています。

クレピス ルブラ、チューリップ「マリリン」、サポナリア オキモイデス、ラグラス オバタスなどを植えています

-ポイント3- 黄色、オレンジ色は元気もりもり、赤色はインパクト抜群

赤花が使いこなせると花色コーディネート上級者

手前のオレンジ花はエリシマム「アプリコットツイスト」、左手前と中ほどの黄花はライア エレガンス、左側のオレンジ花と右側の黄花はカリフォルニアポピーです

元気カラーはなんといっても、黄色、オレンジ色でしょう。生きた花で黄色やオレンジ色の花がらんらんと咲いているのを見ると、それだけで元気が湧いてきます。何よりそこの空間がパッと明るくなり、見た瞬間から気分が盛り上がります。気分が落ち込んでいるときの気分転換にもよいですよ。

上の写真をご覧ください。黄花、オレンジ花が中心に咲いているボーダー花壇です。黄色、オレンジ色は遠くからでもよく目立ち、強い日差しに当たると一層引き立ちます。下の写真は黄花、黄金葉をポイントに据えた植栽の一角です。黄花に黄金葉を組み合わせるのも、黄色を強調できるおすすめの植え方です。奥の黄花はフロミス フルティコーサという木立ち状に育つとても丈夫な宿根草で、手前の黄花はガザニア、手前右手の黄色い葉の低木は黄金葉のヒペリカムとどれも丈夫な植物で構成されています。

奥の黄花はフロミス フルティコーサ。手前の黄花はガザニア、手前右手はヒペリカム。いずれも植え替えを必要としない大変丈夫な植物です

次の写真は黄色と白をメインカラーにした、木製大型コンテナの植栽例です。黄花はビオラ、チェイランサス、宿根アリッサムが、白花はセントランサス アルブスが植わっています。バックのラティスフェンスの白色と、セントランサス アルブスの白花を結び付けて、種類の違う黄花を組み合わせました。視覚に訴えるには、このようにシンプルに組み合わせることも大切です。

黄花のビオラ、チェイランサス、宿根アリッサムと、白花のセントランサス アルブスをシンプルに組み合わせました

赤色は花の世界では一番インパクトの強い色です。インパクトが強い分、どこで、どのように、どれぐらいのボリュームで植えるかが、一番問われる色でもあります。ホットカラー(暖色)の代表格で、見て暑く感じるのは間違いなしです。

下の写真は落ち着いた黒紅色でまとめたボーダー花壇です。奥の大型のグラスはペニセタム セタケウム ルブラムで、シックな赤い葉と穂がシンボリックに見事に育っています。手前のニチニチソウは黒みがかった濃紅色のフリンジニチニチソウで、ぺニセタムに負けじ劣らじ存在感を主張しています。中ほどにはコリウス「キングスウッド タッチ」と黒紅色のダリアが植わっています。

赤色の花はここ一番のフォーカルポイントに使ったり、燃える赤を表現したいときやトロピカルな夏を演出したいときなどにうまく使えれば、抜群の効果を発揮します。赤色は出番が少ない色だけに使いこなせるようになると、表現の幅がぐんと広がりますよ。

黒紅色でまとめた花壇のアクセントに、ライム色のニコチアナと白花のセンニチコウを入れて、全体のトーンを少し抑えています

花色の組み合わせは幅広く、奥も深いです。季節の演出や自分の気持ちの表現など、何かテーマを持ってやると、やりやすいと思います。自分の思った通りに咲いたときは、ものすごく感動します。皆さんも花を植えるとき、ぜひ花色の組み合わせを強く意識してみてください。今までとは違った風景が展開すると思いますよ。

次回は「春花壇の手入れ法と楽しみ方」を更新予定です。お楽しみに。

JADMA

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