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連載

【第16回】春花壇の手入れ法と楽しみ方

文・写真

加地一雅

かじ・かずまさ

株式会社エクステリア風雅舎代表。1987年、苗の育成から個人邸の庭のデザイン、施工、メンテナンスまで行う風雅舎を設立し、現在に至る。草花が自然風に咲くナチュラルガーデンを啓蒙、普及されるべく奮闘中。


執筆者の加地先生は2017年12月にご逝去されました。謹んでお悔やみ申し上げます。皆様の園芸知識向上にこの連載を役立ててほしいとのご家族様のご意向から、文章はご執筆当時(2016-2017年)のまま継続して掲載をさせていただくことになりました。時代を感じさせる部分があるとは思いますが、お含みおきの上ご覧ください。

【第16回】春花壇の手入れ法と楽しみ方

2017/04/11

春の訪れとともにいろいろな花が次々と咲く春花壇。今月はその演出の仕方や長く楽しむ手入れ法、そして楽をして咲かせる花壇づくりや、樹木やバラ、球根との混植法をお話しします。春に咲く花は種類が豊富で、いろいろな場面展開が可能です。自分が望む理想の花壇づくりにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

イラスト:ハンダタカコ

-ポイント1- 花壇の演出は高低差を出すのが一番のおすすめ

高さのある草花を草丈別に使いこなそう

一番草丈の高いものとしてジギタリスを、次にキンギョソウとセントランサスを、さらに周囲には草丈の低いゲラニウムや宿根ネメシアなどをデザインして植栽しています

花壇というと草丈の低い草花を二次元的に平べったく、絵模様を描いて植えるイメージを思い浮かべる人が多いと思います。しかし、これに高さの変化を加えた三次元の世界をつくると、演出効果は抜群に上がります。

例えば上の写真のように、高さがあると花壇に立体感が出て、人の目線近くで花が迫ってきます。草丈の高いもの、中ぐらいのもの、低いものが、花壇の中ほどから周囲に向かってなだらかな高低差を演出すると、高さの変化が心地よく目に映ります。

手前がフランネルソウのピンクと白、その奥にアガスターシェ(銅葉)とサンジャクバーベナが植わり、遠くからでもよく目立ちます

上の写真は草丈が高くなる丈夫な宿根草をメインにした花壇です。手間いらずの植物でまとめており、春~初夏まで長く咲き続け、しかも倒れにくい優れものです。高さのある草花は存在感を発揮します。

草丈が高くなる草花は、強い風に当たると倒れやすい傾向があります。事前に支柱を立てておくことをおすすめします。タイミングは草丈がぐんぐん伸びる4月の中~下旬に、最大草丈の3分の2程度の支柱を茎に添わせながら地中にしっかり差し込み、1~2カ所を上から見て8の字を描くように、ひもやビニタイで結びます。支柱は目立ち過ぎると美観を損ねるので、太過ぎ長過ぎないように気を付けます。花穂の下端の高さまでに支柱を収めるときれいに見えます。

タンポポに似た花はクレピス ルブラ、右サイドはエリゲロン カルビンスキアヌス、左のピンクの小花はバージニアストックです。

上の写真は草丈20~50cm程度で収まる比較的低い高さの花壇です。低い高さの花壇でも、その中での高さの変化で立体感はしっかり感じられます。ちょっとした高さの変化も大事ですね。このように草丈が高くなる草花を立派に咲かせるには、理想は年内、遅くとも2月中には定植して、しっかり根を張らせることが大事です。土も深くしっかり耕して、元肥もすき込んでおきます。

高さが30cmを超える中高性の草花は、苗で販売されているものが少ないので、望む高さや花色の品種を通信販売などでじっくり選んで、8~9月にタネまきするとよいでしょう。翌年の春花壇には間に合いますので、ぜひともチャレンジしてみてください。苗作りから始めると、ひときわ喜びが違いますよ。

-ポイント2- 春もローメンテナンスプランツで、楽をして長く楽しもう!

3~5年は植えっ放しができて、水やりもいらない宿根草を利用しよう

ローズがかった赤花はペンステモン「ガーネット」、手前の紫花は宿根バーベナ「ホムステッドパープル」。共に最強健の宿根草に分類されます

例えば上の写真の手入れ法を考えてみましょう。最強健の宿根草を植えた花壇の手入れ法は、草丈が伸びて花が少なくなってきたら切り戻すだけです。ペンステモンは晩春から初夏にかけて、宿根バーベナは真夏を除いて春から秋まで咲き続けます。しかも3~5年は植えっ放しができます。水やりもいりません。

草花は大きく分けて一年草と宿根草に分けられます。一年草は長期間咲き続けますが、花が終われば植え替えなければなりません。宿根草は、開花期間は一年草ほど長くはありませんが、3~5年は植えっ放しが効きます。手入れの必要量を考えると、断然、宿根草の方が手入れは少なくて済みます。

左側の花はエリシマム「ボーレスモーヴ」、右側の花はゲラニウム「ビオコボ」で、共に最強健な宿根草です

手入れが少なくて済むという点は、上の写真も同様です。写真の2種類も最強健な宿根草で、水やりはせず、雨水だけで十分です。共に3~5年もすると大株になり、開花期は花で株が埋まります。

これらの意味で宿根草はローメンテナンスプランツといえるでしょう。春の花壇を一年草だけにせず、宿根草だけのエリアや宿根草を混植したエリアに変えるだけで、手入れのボリュームがずいぶん減って楽になります。

左側の青い花はサルビア クレベランディー、右側のオレンジ花はスファエラルケア「ニューリーズコーラル」です

ローメンテナンスプランツは一度植えると、その場所をずっと占有することになるので、その植物がよく茂った状態を想像しながら、植える場所をよく考えて定植します。また元気でよく茂る植物が多いので、ボリュームをコントロールするために切り戻し剪定だけは、適宜行った方がよいでしょう。

上の写真で植えられているサルビア クレベランディーもスファエラルケア「ニューリーズコーラル」も木質化した硬い茎を1mぐらい立ち上げて、晩春から初夏にかけて、写真のようにいっぱい咲きます。この2種類も手入れ法は、伸び過ぎた枝を切り戻す程度で、水やりも必要ありません。

-ポイント3- 花壇での樹木やバラ、球根使いテクニック

つるバラと宿根草の組み合わせは相性抜群

つるバラ「リージャンロードクライマー」を絡ませたラティスフェンスをバックに、ジギタリス、デルフィニューム、黒花フウロ、ビオラ「ボウレスブラック」が植わった花壇です

花壇は一年草や宿根草を植えるにとどまらず、バラ、球根などと混植することも可能です。コンビネーションの是非、相性はよく考えないといけませんが、うまく組み合わさったときは、素晴らしい風景が再現できます。上の写真は宿根草とつるバラを混植した花壇です。このようにつるバラは背景の素材として最高のものです。

つるバラは一緒に植える草花とのすみ分け、相性もよく、花壇づくり、風景づくりでぜひ取り入れたい主役の植物の一つです。さらに下の写真のようにバラは花色で雰囲気がまるで変わるので、合わせる草花も、花色を一番にチェックして決めます。バラと草花の混植の注意点として、バラの根元近くには、覆いかぶさるように広がる草花は、ネキリムシ対策として植えない方がよいでしょう。

濃い赤バラにデルフィニューム「ベラモーサムインプ」という個性的な濃色の組み合わせの花壇です

ビオラにカレンデュラ「コーヒークリーム」、後ろにはリナリア「リシリアピーチ」を植え、中ほどに開花時には主役に躍り出る八重咲きチューリップを配しています

一年草との組み合わせ花壇の例として、上の写真のような球根と混植したものもあります。こちらの花壇は一年草をメインにした花壇に大変ボリュームのある八重咲きのチューリップを植えています。球根を混植する場合は、球根が咲き終わったとき、花壇が寂しくならないように、球根の花後も咲き続けてくれる一年草を周りに植えておくと、長期にわたって花壇を楽しめるでしょう。

また、次の写真のようにいろいろな樹木と宿根草を混植した花壇の例もあります。植え替えはほとんど発生しない永続性のあるローメンテナンスの花壇です。手前の宿根草はいずれも後ろの樹木と共存してくれる強健種です。

樹木は左からユズリハ、トサミズキ、イロハモミジ、宿根草は左からセラトスティグマ「デザートスカイ」(黄金葉)、リシマキア「リッシー」(黄斑)、ヒューケラ「レッドストーンフォール」(オレンジ葉)、白花アケボノフウロ、後ろの赤花はペンステモン「ガーネット」です

春の花壇は植物の組み合わせでいろいろな表現ができます。手入れの仕方も組み合わせる植物によって変わってきますが、ポイントは、伸びた枝は切り戻すことです。切り戻すことによって、次の開花が促されて2番花、3番花につながり、さらに株のボリュームのコントロールにつながります。切り戻しは結構勇気がいりますが、大事な作業なのでぜひ実行してみてください。

植物を知れば知るほど、今まで見たこともない自分だけのオリジナルの花壇ができます。ぜひともチャレンジして、味わったことのない感動を体感してみてください。

次回は「宿根草を上手に使いこなそう」を更新予定です。お楽しみに。

JADMA

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