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連載

【第5回】ポットまきでタネまきをもっと手軽に

文・写真

三橋理恵子

みつはし・りえこ

園芸研究家。一年草・多年草をタネから育てる研究をしている。著書に『三橋理恵子の基本からよーくわかるコンテナガーデン』(農文協)、『イラストで学ぶ、はじめてのガーデニング』(角川マガジンズ)などがある。


※タネのまきどきなどは神奈川県横浜市における栽培に基づいて記載しています。

【第5回】ポットまきでタネまきをもっと手軽に

2017/05/23

移植を嫌う草花には、ポットまきが向いています

前回はタネまきの基本である床まきをご紹介しましたが、今回はポットまき。まき床ではなくポリ鉢を用意して、そこにタネをまきます。基本的に1つのポリ鉢で1株を育てます。
この方法を使うのは、移植を嫌う草花があるため(下表参照)。移植嫌いのタイプは、直まきする方がよいのですが、花壇では季節によって雨風が当たるなど環境も変化し、苗育てのリスクは増えます。それよりポリ鉢にまいて、手近なところで育てる方が成功率は上がります。また品種改良された園芸草花には、よりデリケートな管理が必要。苗の大きさに見合った土の量(=ポリ鉢の大きさ)で育てる方が、格段によい育ちをします。

草花の中でも移植を嫌うのは直根性といって、中心の太い根が真っすぐに伸びるタイプです。床まきすると鉢上げのときに根を傷めやすく、その後の成長を妨げます。主にケシ科やセリ科の草花がその代表です。また、大粒ダネも根が切れるとダメージが大きいので、移植に向きません。ただし、苗の小さいうちに根を傷めないように移植できれば、床まきもできます。

移植嫌いの草花は、大粒ダネの他にもたくさんあります(1)ボリジ(2)アイスランドポピー(3)カスミソウ(4)ゴデチヤ(5)ナスタチューム(6)イベリス(7)ルピナス(8)ラークスパー

この他、ポットまきには用途がたくさんあります。春など花壇に直まきする場所が空いていない場合にも、ポットまきすれば苗をあらかじめ作っておけて便利です。タネが大粒の植物は成長が早いので、ポリ鉢にまく方が手軽です。さらに、ほんの少し苗が欲しいときや、鉢上げが面倒なときにもポットまきは手軽。種類によって、また場合によって、ポットまきと床まきをうまく使い分けすると便利です。

ポリ鉢はサイズを使い分けましょう

ポットまきに使うのはポリ鉢。よく市販の花苗に使われているもので、黒色が多いです。直径9cmのものをよく見かけますが、直径6cmのものが一番出番が多いです。直径6cm、直径7.5cm、直径9cmの3サイズを用意して、タネの大きさやまき方によって使い分けます。
用意するポリ鉢の数は、自分で育てたい苗の数によります。まずはどのくらいの苗数を育てたいのかをイメージしてポリ鉢を用意します。もちろん1袋のタネの数にもよります。全て発芽するわけではなく、また芽が出てから枯れるリスクもあります。特に初心者の方は、やや多めにまく方が欲しい苗の数をキープできます。ただし、往々にしてたくさんまき過ぎてしまい、育てきれない苗を抱えることも多いもの。適量のタネをまいて育てることは難しいですが、多過ぎるときは間引くなどします。大量に苗ができると、育てるのも雑になります。

ポリ鉢は柔らかい素材でできているので、根鉢を出しやすく、根を傷めません。タネの大きさに合わせてサイズを使い分けますが、小粒以下のタネなら直径6cmのものが使いやすく、多粒まきなら直径9cmのものを使います。またポリ鉢の代わりにセルトレーも使えます

大粒のタネは発芽率が悪いことがあります。発芽しなかったポリ鉢の土を探ってみてもタネが見つからないような場合は、早い段階でタネが腐ってしまったため。大粒のタネは呼吸量が多いので、水分量が多過ぎたり、タネの周りに細か過ぎる土がまとわっていて呼吸できないと、腐ってしまいます。
大粒のタネをまくときは、赤玉土などタネの大きさに見合ったやや粗めの土を混ぜるなど、用土を工夫すると発芽率がよくなります。

ポットまきから苗育て

芽が出て、隣同士が触れ合うくらいに育ったところから、何回かに分けて間引きます。最初から1本に間引くと、その後、枯れてしまうケースがあります。また、芽は共育ちといって、お互いに競って伸びようとする性質があるので、最初から1本で孤立して育てない方が、よく成長します。
最終的に、基本的には1つのポリ鉢に1本にします。間引くのが苦手で出た芽をそのまま育ててしまうと、苗がひ弱に育ってしまい失敗しやすくなります。適期にきちんと間引きすることがポットまきの成功のコツ。コツさえ分かれば、手軽で使いやすいまき方です。

1つのポリ鉢に1株育てるのが基本ですが、多粒まきといって、1鉢でたくさんの株を育てる方法もあります。ケイトウやコリウスなどの苗育てではポピュラーです。レタスのベビーリーフなども多粒まきが向いています。また株にボリュームを出したいときに、意図的に2〜3株残して育てることもあります。マツバボタンやケイトウ、アリッサムなど、株立ちするわい性タイプの草花に向きます。

ポットまきは、タネをまく面積が床まきより広く、よりスペースが必要になります。また鉢の底に水抜け穴が開いているので、屋内より屋外向き。春や秋などのタネまきの季節向きです。ただし、冬などに1種類だけまいてみようというときにも便利。そのときは、トレーを敷いて屋内の暖かな窓辺などで育てます。

ガーデンレタスは9〜10.5cmのポリ鉢に多粒まきすると、よく育ちます。間引きながら収穫します

ポットまきの手順

〈準備するもの〉

用土を適度に湿らせ、よくかき混ぜておきます。軽過ぎるタネまき用土は不向き。育苗用土がなければ粒のそろった培養土を使います。タネの量を確認したら、白い小皿に移します。作りたい苗の数より1〜2割多めにポリ鉢を用意します。

ポリ鉢に用土を入れます。ふんわりしている土なら、手や土入れの底で表土を押さえると沈み込みます。さらに用土を足してポリ鉢の縁から5~10mm下まで、ほどよく用土を詰めます。多粒まきや大粒のタネまきで直径9cmのポリ鉢を使うときは、下半分の用土に肥料を混ぜてもよいでしよう。

用土を入れたポリ鉢に水を与えて、用土を湿らせます。水差しかハス口をつけたジョロで均等に与えるとよいでしょう。水やり後、表土がでこぼこするなら、土入れの底などで平らにならします。

タネを1粒ずつ親指と人さし指でつまんで、表土に落としていきます。1つのポリ鉢に2~4粒が標準です。表土をよく見て、タネとタネがくっついていたらピンセットでつまみ、より均等にタネを配置します。タネの数が少なく、全部発芽させて育てたいなら、1粒ずつまいてもよいでしょう。大粒のタネの場合は、人さし指で表土に穴を開けて、そこにタネを落とします。

タネに応じて必要な高さを覆土します。標準的にはタネの厚み程度、好光性種子はやっとタネが隠れるくらい、嫌光性種子はタネの2倍程度が目安です。タネをまくときの要領で、丁寧に少しずつ土をかけましょう。

ハンドスプレーで水を与えて、表土とタネをしっかり湿らせます。ポリ鉢の底から水がにじみ出てくるくらいが目安です。タネにしっかり水分を与えて発芽を促しましょう。

イラスト:阿部真由美

油性ペンでラベルに植物名とまいた日付を書き、ポリ鉢の隅に差します。植物名が同じなら、全部のポリ鉢でなく1つだけでも。ポリ鉢はポットトレーなどに入れると管理しやすいです。この後、直射日光が当たらず風通しのよい、雨の当たらない場所で発芽を待ちます。発芽までは、表土が乾燥しないように水を与えます。ハンドスプレーで霧水を与えるか底面給水がベストですが、表土が動かない程度の緩い水圧で水を与えてもよいでしょう。

次回は「花壇や鉢にまいて、そのまま咲かせる直まき」を取り上げる予定です。お楽しみに。

JADMA

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