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連載

【第18回】ブロッコリー

佐倉朗夫

さくら・あきお

1975年、東京教育大学農学部卒業。神奈川県農業総合研究所や民間企業で野菜栽培の経済性や環境保全型農業の研究、有機野菜の栽培技術向上に取り組む。現在、明治大学特任教授、黒川農場副農場長。同大学リバティアカデミー「アグリサイエンス」講座で市民を対象とした有機農業講座を担当。著書に『有機農業と野菜づくり』(筑波書房)、『佐倉教授「直伝」! 有機・無農薬栽培で安全安心な野菜づくり』(講談社)、『家庭菜園 やさしい有機栽培入門』(NHK出版)などがある。

【第18回】ブロッコリー

2017/06/06

花や蕾を食べる野菜の中でも、開花への発達途上の花蕾(からい)を食べるブロッコリーは、日持ちがしない野菜です。収穫したてが楽しめる家庭菜園には取り入れたい一品、格別な味を楽しんでください。
頂花蕾(ちょうからい)・側花蕾(そくからい)の両方が採れる品種を選べば、秋からひと冬ずっと収穫ができます。太い茎(花茎)もゆで方次第でおいしく食べられますが、最近では細長い茎に小さな花蕾が付いた側花蕾がたくさん収穫できる、ブロッコリータイプの新しい野菜も出てきています。茎ブロッコリーと総称され、茎と花蕾の食感の違いを同時に楽しめます。

栽培適期の幅が広く、全国的に栽培される中早生品種「緑嶺(りょくれい)」。側花蕾もよく採れる 写真:谷山真一郎

分類と生態

原産地:地中海周辺
科名:アブラナ科アブラナ属
連作障害:あり(2〜3年空ける) 
生育適温:15〜20℃

作型と栽培

苗がある程度大きくなって低温にあうと花芽分化する

ブロッコリーはアブラナ科の野菜で、キャベツと同様に地中海周辺が起源です。また、生育適温が15~20℃、花ができるには低温にあう必要があり、体がある程度大きくなってから、低温に感応して花芽分化するグリーンバーナリ型植物※であることも同じです。しかし、キャベツは花芽ができた後の花の発達には長日が必要になりますが、ブロッコリーでは長日を必要としないので、低温が充足されれば、その後は花蕾の発達、抽だい(ちゅうだい=トウ立ち)、開花へと進んでいきます。

※同じアブラナ科のハクサイやダイコンも花芽分化には低温が必要ですが、発芽当初から低温に感応するのでシードバーナリ型植物と呼ばれます。

地域に合った品種選びとタネまきのタイミングが大切

キャベツなどの葉菜類では花ができることは栽培の障害になりますが、ブロッコリーは花蕾の元となる花芽が分化することが必要であり、花芽分化が早ければ収穫時期も早まります。品種の早晩性で見た花芽分化の低温遭遇条件は、早生品種では本葉5~6枚、15℃以下で3~4週間、中生品種では本葉10枚、15℃以下で6週間、晩生品種では本葉15枚、10℃以下で6週間以上です。

全国的に見れば、寒地から温暖地、暖地などの地域、およびタネまきの時期と品種を組み合わせることで作型が成り立ち、ほぼ一年を通して収穫が可能になっています。農家は大きな花蕾を収穫するために、頂花蕾専用品種を栽培しますが、家庭菜園では収穫を長期間楽しめる頂花蕾・側花蕾どちらも採れる品種がおすすめです。

茎ブロッコリーは品種によって栽培特性が異なる

茎ブロッコリーは、中国野菜のカイランとの掛け合わせで作られた野菜で、「スティックセニョール」はその代表的な品種です。他に花も花茎も食べられる別の中国野菜との組み合わせで作られたものもあります。組み合わせる相手により、栽培上の特性も異なってくるので、タネ袋や苗の説明をよく読み、タネまきや植え付け時期の参考にしてください。

ブロッコリーおよび茎ブロッコリーの作型例

各作型の特徴と栽培のポイント

[夏まき栽培]
ブロッコリーは葉茎(栄養成長期)は比較的暑さ寒さに強く、花蕾(生殖成長期)は低温、高温に敏感で花蕾の異常が発生しやすくなる。従って、温暖地や暖地では、生育初期が高温で、花蕾形成期が冷涼となる夏から秋にかけての時期が一番作りやすく、7月にタネまきをして10~11月に収穫する夏まき栽培が基本作型。
茎ブロッコリーは、ブロッコリーよりも暑さに強いために適応性が広くなるが、茎ブロッコリーのみに適応する遅めのタネまき(8月)では、植え付け後の株があまり大きくならず収穫量も少なくなる。
寒地や寒冷地では早生品種を使うことで、温暖地と競合しない8~9月に収穫することができる。

[冬春まき栽培]
温度が段々と上昇していく時期の栽培なので、早生品種のタネを早くまいて収穫期が高温になるのを避ける。まき時期はまだ寒いため、花芽分化が早過ぎないように苗作りや植え付け時には保温が必要。
春まき栽培はトウ立ちしやすく、収穫期間も短い上に、保温のための資材や施設が必要になるので家庭菜園向きではない。

栽培手順(温暖地の場合)

1.植え床の準備

1条植えの場合は植え床幅40cm、2条植えにする場合は植え床幅70~100cmとします。植え付けの2週間以上前に、畝の中央に幅、深さ共に15cmほどの溝を掘り、堆肥とボカシ肥料を施します。1条植えでは1平方メートル当たり堆肥1.5Lとボカシ肥料40g、2条植えでは1平方メートル当たり堆肥3Lとボカシ肥料80gを溝の底に平らに入れ、掘り上げた土を埋め戻します。植え床は、高さ15~20cmの高畝を立てます。

2.タネまき

キャベツと同様に苗床で育苗できますが、株数が少ない場合は直径7cm前後のポリ鉢で育苗します。

ポリ鉢の中央にペットボトルのキャップなどを使って直径3cm、深さ1cmの穴を作り、3〜4粒のタネをお互いが離れるようにまきます。厚さ5mmを目安に覆土をした後、手の甲で鎮圧をし、タネが流れないように丁寧に水やりをします。

ポリ鉢は地面からの照り返しがないように台の上に置き、日差しを和らげるために不織布などで日よけを作ります。

3.間引き

本葉が2枚のころまでに間引きをして1本にし、本葉5~6枚になるまで育苗します。水やりは小まめに夕方には乾くような量を施し、決して過湿にならないようにします。植え付けの3~5日前から日よけを外して、植え付け時の環境に慣れさせます。育苗期間はおおむね30日です。
なお、この時期はブロッコリー苗が入手しやすい時期でもあるので、初心者は苗を購入することをおすすめします。

4.植え付け

1条植え、2条植えとも、株間は45cmと広めに取ります。2条植えの場合は苗を千鳥に配置し、植え床の両肩に植えるようにして条間を広く空けます。

苗の植え付けは、深植えにならないように注意します。株元が植え床面よりも少し高くなるくらいがちょうどよい深さです。

植え付け後の水やりは、葉に水がかからないよう手のひらをジョウロの筒先に添えて水量を調節しながら、根鉢の周囲に円を描くように行います。
追肥として、ニーム入り油かす1つまみ(約3g)を苗の周囲にまきます。

植え付け後に不織布でトンネルを作り、防風、防虫対策を行います。

5.追肥、土寄せ

植え付けの2~3週間後に不織布のトンネルをいったん外し、1条・1平方メートル当たりボカシ肥料30gを片側にまいて土寄せを行います。その後、トンネルは元に戻しておきます。
この追肥から3~4週間後にトンネルを撤去して、前回の反対側に同量の追肥を施します。倒伏しやすいので追肥のたびに株元までしっかりと土寄せを行います。

追肥や土寄せと同時に葉の裏面をよく観察し、アオムシやコナガなどの幼虫や卵を発見したらその場で取り除きます。

6.病害虫対策

葉を小まめに観察して、卵や若齢幼虫のときに発見して取り除くことが基本です。発生初期には、週に1回程度、水で300倍に希釈した食酢や規定量の水で薄めたニーム由来の植物抽出液を、葉の裏面にまんべんなく散布することも効果が期待できます。

7.収穫

頂花蕾の直径が10~15cmになったら、花蕾の頂点から10~15cmぐらいの位置に包丁を当てて主茎から切り取ります。
頂花蕾・側花蕾どちらも採れる品種では、頂花蕾を採った後、側花蕾が次から次と付くので順次、収穫します。立派な側花蕾をより多く収穫するには、頂花蕾を若いうちに収穫するとよいでしょう。取り遅れると蕾が開いてしまうので、蕾が締まっている間に収穫します。

側花蕾の収穫は、近隣の茎葉を傷めないように注意して側枝ごとはさみで切るか、手で折るようにかき取ります。

〈茎ブロッコリーの場合〉

イラスト:角しんさく

茎ブロッコリーの場合は、側花蕾を中心に収穫するので、頂花蕾が500円玉大になったら早めに摘み取ります。
側花蕾を多く出させるためには、摘み取る頂花蕾の花茎は短く、摘芯のつもりではさみを使って摘み取ります。側花蕾(側枝)は柔らかい花茎がおいしいので、茎を長めに付けて摘み取ります。

有機栽培のコツ

土寄せをして根を安定させ、生育前半の害虫被害に注意

ブロッコリーは、株が大きく育ちます。また花蕾の大きさは株の大きさに比例するので、立派な花蕾を収穫するには、株間を広く取って株を大きく育てるのがコツです。大きく育つ割には根の張り方が浅いので、十分に土寄せをして株を安定させることが大切です。
病気は少ないですが、ヨトウムシ、アオムシなどの害虫はよく付きます。特に生育前半は、気候的に虫にとっても適温のため付きやすくなります。葉の裏をよく観察して、株全体に拡散する前の若齢幼虫の段階で捕殺するようにしましょう。

次回は「ハクサイ」を取り上げる予定です。お楽しみに

JADMA

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