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 【第39回】北海道の自然に溶け込むイングリッシュガーデン、イコロの森を訪ねて

【第39回】北海道の自然に溶け込むイングリッシュガーデン、イコロの森を訪ねて

2017/03/07

うっそうとしたカラマツなどの森林を抜けると出合えるイングリッシュガーデン、イコロの森。アイヌ語で「イコロ」とは宝物を意味するとか。今月は、昨年の初夏に訪ねた、宝物がたくさん詰まったイコロの森の訪問記です。

美しい正統派イングリッシュガーデン、イコロの森は必見です!

もともとの木々を残し、周りの森の再生も手掛けるイコロの森

北海道苫小牧市にあるイコロの森。森林に囲まれた自然の息遣いが感じられる美しいイングリッシュガーデンです。イコロの森はローズガーデンやホワイトガーデンなど主に11個のガーデンで構成され、北海道のその地に合った植栽やガーデナーの工夫なども見どころ。イギリスで園芸を学んだガーデナーたちが設立当初から携わっているから、本場のイングリッシュガーデンをほうふつとさせる植栽やデザインは訪れる人々の期待を裏切りません。

美しい芝生が広がるエントランスガーデン

最初に出合ったのは、芝生が美しいガーデン。円柱形のすらっとした樹形が目を引く5本のヤマナラシ「エレクタ」がシンボルツリーです。このガーデンの右にナチュラルガーデンが、左奥にボーダーガーデンが、そして奥にローズガーデンやホワイトガーデンが展開します。上の写真、手前右の銅葉はメギ、左はイチイ。

[1]入り口を左に少し進むと、左側にナーセリー、右側にガーデンがあります
[2]黒板にその日の見どころや作業の情報が。近くの半日陰に広がる斑入りイワミツバがきれい!

ピンクや白、紫の優しい配色が魅力のレストランガーデン

レストランを訪れる方に無料で開放しているガーデン。紫のサルビアやネペタ、ピンクのアスチルベやバラなどが咲くかわいらしい配色のボーダー花壇に囲まれたガーデンです。もちろん花だけでなく、紫葉のアメリカテマリシモツケ「ディアボロ」やシラタマミズキなどの葉ものの美しさも見逃せません。

[1]冷涼な気候がお好みで高温多湿が苦手な銀色に光り輝くエリンジューム アルピナム
[2]日なたでも日陰の花壇でもよく育つ、ブロンズの葉が魅力のカレックス ペトリエイ
[3]日なた~半日陰の湿った花壇がお好みのアスチルベ。冷涼地では花穂がたくさん!
[4]手前が紫葉のアメリカテマリシモツケ「ディアボロ」、奥がシラタマミズキ
[5]寒冷地がお好みだけど、京都でも明るい半日陰の花壇なら育てられるゲラニウム

必見! 白花と緑葉のコラボが見事なホワイトガーデン

白い花穂を多数立ち上げた、大株の草丈約2mのペルシカリア ポリモルファを点在させ、斑入りや銀緑色の葉ものを巧みに配置してホワイトガーデンがデザインされています。また、白花や斑入り葉の配置が絶妙でとってもリズミカル。地味だけど、印象に強く残る美しいホワイトガーデンです。

[1]手前左から赤花のロドゲルシア、白花のギボウシ、ロドゲルシア、白花のアスチルベ「ドイチェランド」。奥は白花のアメリカアジサイ「アナベル」など
[2]ギボウシの定番「パトリオット」。白い斑入り葉が美しく、早く大株に育つのが魅力
[3]落葉後の赤い枝が見事な斑入り葉のシラタマミズキ「エレガンティシマ」
[4]耐寒性も耐暑性も強く丈夫なペルシカリア ポリモルファ。庭園の主役になれる花

[5]手前左からギンロバイ、アルンクス、アストランティア、左奥からギボウシ「グロッサリ リーガル」、レウカンセマム、バラ
[6]白花が多いホワイトガーデンの引き締め役、赤花のロドゲルシア(和名はヤグルマソウ)
[7]寒冷地向きの宿根草、アストランティア。ナチュラルガーデンにぴったり
[8]半日陰がお好みのアルンクス(別名ヤギのあごひげ)は、耐寒性が強い多年草
[9]丈夫な花茎に多数の花を咲かせるカンパニュラ ラティフォリア マクランサ アルバ
[10]左手前がシラタマミズキ「エレガンティシマ」、構造物に絡むバラはつるバラ「シーガル」
[11]ナチュラルな雰囲気がかわいい、花付きのよいつるバラ「シーガル」

入り口の芝生のガーデンとレストランガーデンとの境にある、法面施工用のじゃかごで覆われた石積みの塀。裏側のレストランサイドにはハニーサックルが、こちら側には強健種のつるバラ「ニュードーン」が植えられ、つる性植物が絡みやすくしてあります。手前左は銅葉のメギ、その右隣はオレガノ。

もともとイコロの森は、樽前山が噴火してできた火山れきに覆われた土地だとか。この花壇では、ここの土を使い、この地に合った植物、バーバスカムやゲラニウムなどを植え、無肥料、無灌水で育てています。また、全体に防草シートを敷き、十字に切り込みを入れて植物を植えたそう。超手間いらずの花壇の提案です!

延々と続く植栽が見応え抜群のボーダーガーデン

長さ約90m、奥行き約5mのボーダー花壇が左右に配置され、薄紫や薄ピンク、薄黄などの宿根草で構成された優しい印象のボーダーガーデンです。3年に一度株分けしたり、土壌改良や植え替えをしたりするそう。ギボウシなども大株に育ち、背景の森にガーデンがすっかり溶け込んでいます。

[1]銅葉のフジバカマやアスチルベ「エリカ」などを植え、新しくリフォームしたエリア
[2]冷涼な気候がお好みの大株に育ったアルケミラ モリス。淡い黄花が映えます
[3]紫の穂をすっと多数立ち上げ、耐暑性も耐寒性も強いサルビア「カラドンナ」
[4]半日陰~日陰の花壇に欠かせないブロンズブルーが魅力のギボウシ「ハルシオン」
[5]初夏の半日陰の花壇を優しく彩るローメンテナンスのアスチルベ「エリカ」

パステルカラーのバラが咲き乱れるローズガーデン

ここ苫小牧は、雪は少ないけれど冬はマイナス20~30度になり、寒風が強い土地柄だとか。無農薬で育てているから、耐寒性や耐病性に優れた修景バラを主に選んでいるのが、このローズガーデンのポイントです。強風からバラを守る生け垣で囲まれているから、香りもガーデンにとどまり最高! 美しい緑に囲まれた秘密のバラの園のよう。

[1]手前の白いバラは、寒さに強い修景バラ「アルバ メイディランド」
[2]手前のピンクのバラは、耐病性に強い修景バラ「ラベンダー ドリーム」
[3]ブッシュ状に横に広がって生育する修景バラ「フラワーカーペット ローズ アンバー」
[4]手前から黄バラ「フラワーカーペット ローズ アンバー」、薄ピンクは「マリー ジェンヌ」、パーゴラの赤いバラは「クリムゾン ランブラー」

他にも見逃せないガーデンがたくさん!

[1]森に入ると出合えるナチュラルエリア。北海道の自生種や大葉のギボウシ、ピンクのアスチルベなどで構成された、自然の森に溶け込んだナチュラルガーデンです
[2]色とりどりの形もさまざまなコニファーが勢ぞろい。コニファーのそれぞれの個性がよく分かるから、新しく庭にコニファーを取り入れたいときは参考になるエリアです
[3]ナチュラルエリアを抜けてガーデンに戻ると広がるローメンテナンスなグラスガーデン。秋にそれぞれのグラスが穂を上げるとダイナミックに展開するそう!

苫小牧にあるイコロの森は、旭川・富良野・十勝までを結ぶ人気の北海道ガーデン街道にはありません。でも、新千歳エリアにも、こんなにすてきな本格的イングリッシュガーデンがあります。うっそうとした緑に囲まれた、宝箱を開けたようなイコロの森は、周りの森を再生させながら素晴らしいイングリッシュガーデンを作り上げています。ぜひ足を延ばして訪ねてみてください! きっと心に残ります!

次回は「春を楽しむアフターガーデニング」を取り上げる予定です。お楽しみに!

JADMA

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