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【第8回】オクラ

【第8回】オクラ

2016/08/23

写真集『野菜美』(新樹社刊)より

フヨウやムクゲ、ハイビスカスの花と驚くほど似ている

園芸植物のように黄色い大輪の花を咲かせるオクラは、彩りが少ない我が菜園を華やかに飾ってくれる。花壇や植え込みを飾るフヨウやムクゲなどと同じアオイ科で、花の形は驚くほどよく似ている。かつて、沖縄県の石垣島を訪れた時に出迎えてくれたハイビスカスも同じ仲間だ。どの花も照りつける太陽がふさわしい南国育ちである。
このオクラを辞書でひもとくと、北アフリカ原産で、日本への渡来は江戸時代にさかのぼるとある。この時代の植物画譜の中にオウショクキ、アオイと名づけられた画があり、オクラと同一の実をつけた種がある。食用としてはともかく、植物細密画を描き観賞されていたことがうかがえた。

夏に必ず食べたくなる旬の料理に、生のオクラを薄くスライスし、カンナで粗く削った本節をふりかけただけのシンプルな一品がある。ネバネバと爽やかな食感が好物の理由で、北海道へ移り住んだ頃、このオクラを小さなビニールハウスを作って育てていた。当時は現在のように温暖ではなく、露地栽培では育たなかったからだ。それが今や、我が家の菜園でも露地栽培が可能になったのだから驚きである。温暖な気候の影響で大好きなオクラを身近に育てられることは何よりだが、半面、ブロッコリーのような冷涼な気候を好む野菜の栽培が難しくなってしまった。

野菜の撮影は、必要な部分を切り取って被写体にすることが多い。三脚のポジションを気にせず、撮影角度を自由に確保できるからだ。光線やバック紙を完璧に整えられることも理由のひとつである。
ただ、最大の欠点がある。茎や枝にハサミを入れ、根元から切り離した野菜は秒単位でしなり、垂れてしまうのだ。水分補給が肝心だが、鮮度の保持は否めず、テグスなどを使って姿を整える難作業が待ち受けている。

次回は「ナス」を取り上げる予定です。お楽しみに。

JADMA

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