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連載

【第10回】キクイモ

【第10回】キクイモ

2016/10/25

写真集『野菜美』(新樹社刊)より

にわかに脚光を浴びる健康野菜

最近、キクイモがにわかに脚光を浴び、健康食品などに利用するために栽培されているという。元来、江戸期や、戦前に家畜の飼料などの目的で日本へ導入された作物のようで、いまや、その子孫は日本各地で野生化している。近くの道路端でも、特定外来種のオオハンゴンソウをも凌駕(りょうが)する勢いだ。かつては我が菜園では刈り払いの対象だった。常に侵入を繰り返し、野菜の日当たりや風通しを害する厄介者だったのだ。だが、著書『野菜美』ではこのキクイモを野菜として取り上げることになった。今は、野放しにしないように管理を徹底している。

我が家の野菜になったからには味見は欠かせない。風体がショウガに似た芋は、一味唐辛子を利かせたキンピラにした。デンプンを含まない芋の感触は同じキク科のヤーコンのよう。その味は私の好み外と、以来、食卓から遠ざかってしまった。しかし、この度の10月号への掲載を機に利用法探しの再挑戦を決めている。

撮影は、興味深い芋(塊茎)の観察から始めた。未知の世界をのぞき込むような泥まみれの作業は結構楽しいものだが、地中の形態を変えないように、焦らず掘り起こすことだけに集中した。スコップは使わず、水流を使って丁寧に土を洗い流す作業は、アスパラガスやフキの根の時と同じ手法である。
撮影のセッティングは地中の再現を可能なかぎり試みた。ヒゲ根は乾燥しないように霧を吹きかけ、芋は下部から針金で持ち上げ、上からもテグスでつり下げて高さを調整した。3mにもなる地上の全体像は、株を2分割して上部から撮影を済ませた。しおれる早さは想像以上で、背景紙の制限や風の影響、ピントの甘さも考慮した結果だ。後に、パソコンで2つを合体させた。

次回は「ダイコン」を取り上げる予定です。お楽しみに。

JADMA

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