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インドの石鹸 アワアワの実 [後編] 無患子

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後もアドバイザーとして勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

インドの石鹸 アワアワの実 [後編] 無患子

2014/10/03

前編はこちら

先週ご紹介した“無患子”はムクロジと読み、学名のSapindus mukorossiは“Sap indus”、つまり、インドの石鹸という意味になります。この植物は東アジアでも暖地性植物で、日本では本州中南部を北限として台湾、長江以南の中国各省、ヒマラヤ、インド北部までに自生しています。中国南部の里山では様々な場所でムクロジを見ました。

ムクロジは20m近くになる落葉高木で、大きくならないと実をつけないようです。自宅の近くでは、山から清水が出てくる場所に大木があります。その昔、おそらくそこは村の洗濯場だったのでしょう。

小さな花は黄色で開花期は短く、葉は羽状複葉で互生ですが、葉や木姿で植物を鑑別するのは難しいでしょう。ですが、多くの場合、独特の実が落ちているかついているので、この植物を鑑別するのは簡単にできます。

前回述べたとおり、ムクロジは合成洗剤に頼らない天然の石鹸です。幼稚園や小学校、中学校などに植えて、子どもたちだけでなく大人も含め、植物の恩恵を“実を(身を)もって”学ぶに相応しい植物ではないでしょうか。

今回は実だけでなく、ムクロジの全体をご紹介しましょう。暖地性の落葉高木で、葉はご覧のとおり羽状の複葉となります。

5~6月に咲く黄色い小さな花。開花期は短く、パラパラと地面に落ちます。足元に黄色い粒が散らばっていたら、注意して見てください。

受粉に成功した花が実をつけました。

実は急速に成長します。が、まだ青く固い状態。

枝の上で成熟しますが、結構長い間木についています。嵐の後などには大量に実が落ちてきます。

このような花や実が落ちていたら、そこにはきっと見上げるような高木のムクロジが立っていることでしょう。

JADMA

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