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芸達者 メギ

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後もアドバイザーとして勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

芸達者 メギ

2015/07/17

近所の林では、メギが春になると黄色い花を咲かせ、秋になると真っ赤な実をつけます。小鳥が喜んで食べるので味を見ましたが、特においしいものではありません。

メギ科ベルベリス属Berberis thunbergii。メギは関東から西の暖地に生え、雑木林の林縁などに自生する落葉低木で、葉の付け根に長いトゲをたくさん付けます。

属名のBerberisは、この仲間がberberine(ベルベリン)アルカロイドを含むことによります。これには殺菌や抗菌作用が知られ、目の炎症を抑えるため、材を煎じて目薬にするので和名をメギ(目木)といいます。メギ属は日本に4種のほか、世界に多くの種があります。

種形容語のthunbergiiとは、スウェーデンの植物学者でリンネの後継者として知られるカール ピーター ツンベルグCarl Peter Thunbergの名に因みます。彼は18世紀の日本に1年余り滞在して植物調査を行い、数多くの新属や新種に名を付けたので、学名にthunbergiiという表記をたびたび見ます。

このメギ類はいろいろ芸達者な奴らなので、その横顔を写真とともに紹介したいと思います。

メギBerberis thunbergiiは人の背丈程度の落葉低木です。枝だけになる冬にメギを探すことは困難ですが、春5月に花を咲かせるとその存在に気が付きます。材を煎じて目薬にするほか、黄色い小花、赤い実、紅葉と1年を通じて楽しめる植物です。

メギの花です。メギ属の花は皆同じような形をしているので覚えておくと同定に役立ちます。メギは葉の付け根に1cm以上の鋭いトゲを多数付けます。こんなにトゲが多いと小鳥も止まることができないだろうと「コトリトマラズ」という面白い別名(芸名)があります。

メギの実です。秋になると赤く熟します。ヨーロッパではこの仲間をスープにしたり、菓子の材料などにするそうです。おいしそうなので食べてみましたが、たいした味ではありません。

メギは芸達者です。薬や食料になるだけでなく、葉芸もすばらしく、葉の色がライムグリーンになる品種や、茎が赤く、葉に赤い斑の入る品種もあります。メギは低木のカラーリーフとしてガーデニングに使うと、渋い役回りを見せてくれる存在なのです。

ヒロハヘビノボラズ Berberis amurensis。日本に自生しますが、どちらかというと寒地性のベルベリスで、朝鮮半島・中国北部・シベリア アムール地方に分布する種です。種形容語amurensisはアムール地方に因みます。私は山東省の標高1500m程度の山頂で撮影しました。
コトリトマラズ同様に茎には葉が変形したとげがあり、これではヘビも上れないという訳で「ヘビノボラズ」という名前(芸名)が付いています。葉の縁には鋭い鋸歯があるのが特徴です。

テンジクメギBerberis pruinosa。雲南省やチベットなどに生えるメギ属です。中国では同じように実を薬用にします。雲南の里山でヤブコギをしていると、何度となくこの木に行く手を阻まれました。私はこの木に「ヒトトオサズ(人通さず)」と芸名を付けることにしました。

おなじみのヒイラギナンテンです。今まで学名はMahonia japonicaとされてきました。花や実はメギ属(ベリベリス属)に似ていますね。最近では研究の結果Berberis japonicaとされたようです。種形容語のjaponicaは日本産を意味しますが、台湾や中国南部に原生し、日本のヤブや林に生えているものは栽培品が逃げ出したものです。

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