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ソバカスのお皿百合[前編] ノモカリス

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後もアドバイザーとして勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

ソバカスのお皿百合[前編] ノモカリス

2016/08/23

毎日暑い日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか? 秋風が吹くまでもう少しの辛抱です。うだるような暑さの時には、夏でも涼しい3000mを越える高根に生える美しいユリの話をしたいと思います。

その植物が生えているのは中国雲南省の高山。そこは、雲いずる南西の地、山懐は広く、そして深いのです。この地域には中国に自生する植物の半分があるといわれます。特に3000mを超える山域は、自然が豊富に残る植物の秘境です。

その中でも私のお気に入りは、お皿のように平たい花弁にソバカスを散りばめたユリの仲間、Nomocharis(ノモカリス)属です。世界中でも中国横断山脈の周辺にのみ自生します。

雲南の山岳地域。標高の高い地域にあってもチベット族は牧畜をして暮しています。家畜を放牧すると、そこは背が極めて低い植物、苦味の強い植物や毒草などが寡占する草原になります。乾いた場所では特にユーフォルビア属、キョウチクトウ科のガガイモ類、ジンチョウゲ類が目立ちます。湿った場所には家畜が好まないプリムラ類が見渡す限りに自生しています。

動物たちは生きている芝刈り機のようです。この子たちが植物を食べる量は、虫たちとは比べようもなく圧倒的な量です。大きなずうたいで日がな一日草を食べるので、植生を大きく変えるほどの影響があります。

家畜の採餌圧がやや少ない場所には、草丈10cmほどの背の低い植物がびっしり花を咲かせていました。小さなアネモネ類のAnemone rupestris(アネモネ ルペストリス)は、花色を白と青に咲き分けます。その他、キジムシロ類、アンドロサセ類が所狭しと咲いています。

Anemone rupestris(アネモネ ルペストリス)を拡大してみて見ましょう。この植物は、日本でいえばイチゲの仲間です。花の大きさは1.5cmほどの小さな植物ですが、その色合いがなんともかわいらしいのです。種形容語のrupestrisとは、岩に生えるという意味をもっています。

草丈が10cmほどの小さなアヤメです。まだ、種の同定はできていません。この花が草原の所々に散りばめられたように咲いています。

ノモカリスの生えている場所は、標高3400m程度の低木に覆われた小高い丘でした。山ユリが斜面を好むように、ノモカリスも斜面を好みます。きっと、水はけがよいことが必要なのでしょう。丘の手前にはPolygonum macrophyllum(ポリゴナム マクロフィラム) タデ科ポリゴナム属が咲いていました。

丘にはさまざまな低木が生い茂ります。Rhododenron hippophaeoids(ロドデンドロン ヒポファエオイデス)ツツジ科ロドデンドロン属。

刺のある低木は、家畜が嫌います。この辺りではムレスズメの仲間Caragana francheritiana(カラナガ フランケティアナ)が鉄条網のように家畜の侵入を拒むようでした。

Nomocharis forrestii(ノモカリス フォレスティー)ユリ科ノモカリス属。ちょうどタイミングよく花を咲かせていました。そこは低木や腰の高さに茂るワラビがほどよい日陰を作る環境でした。

次回は「ソバカスのお皿百合[後編] ノモカリス」を取り上げる予定です。お楽しみに。

JADMA

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