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黄泉帰り[前編] ソテツ

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後も嘱託として勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

黄泉帰り[前編] ソテツ

2017/03/07

日本本土の最南端は、鹿児島県にある大隅半島の佐多岬です。北緯31度に位置し、インド、エジプト、モロッコ、イラン、イラク、そしてメキシコなど亜熱帯の砂漠をイメージする国々と同じ緯度になります。今回話題にするソテツCycas revoluta(サイカス レボルタ)ソテツ科ソテツ属は、その佐多岬周辺、南九州が自然分布の世界的な北限とされる裸子植物です。シダ植物から進化したソテツは、太古の昔からその姿を変えずにたくましく生き残ってきました。他の植物が生えることができないような、過酷な環境に自生するソテツ。その不思議な生態に迫りたいと思います。

ソテツが自然分布している、鹿児島県肝属郡南大隅町の佐多岬までは、鹿児島空港からのロングドライブです。公共の交通機関ではここまで行く方法はありません。覚悟を決めて本州の南端に行きます。

岬にはいつも強い風が吹きます。本土最南端の佐多岬です。青い海の向こうには美しい姿をした薩摩富士とも呼ばれる、薩摩半島の開聞岳を見ることができます。地元の方々は、あの山の左を台風が通れば日本海に進み、右を通れば太平洋に進むのだといいます。遠く、種子島や屋久島の島影をおぼろに見ることができました。

ソテツは日本の温かい地域の公園などに南国ムードを醸し出す樹木として植栽されています。日本の各地にある大きなソテツは、古くから人々が自生地から掘り出して植えたものです。

植栽されたソテツの中でも四国、香川県小豆郡小豆島町、池田港近くの誓願寺ソテツは、その巨大さ、樹勢の強さでは群を抜きます。しかも、葉の淵が金色に輝く金冠ソテツと呼ばれる逸品なのです。一株で分枝を繰り返し、枝数を数えることができませんでした。

このソテツの樹齢は1000年を超えると推定されています。1000年も前に南九州や南西諸島から金冠ソテツを掘り出し、この寺に植えたのです。誓願寺ソテツはその堂々たる体格と風貌で、国指定の天然記念物になっています。

さて、ソテツが自生する佐多岬です。そこには接着剤で止めたように、ソテツが絶壁に生えています。どうやってソテツがその場所に生えたのか不思議です。

ここではソテツを岸壁以外に見つけることはできませんでした。周辺の海岸林には見られず、どの木も不毛な急斜面に生えているのです。歴史的に大名屋敷や寺などの景観作りに大量に掘り出されたソテツは、人の手の届く場所に自生地が残っていないだけなのでしょうか。

自生地が国の天然記念物になる貴重なソテツも、南西諸島に行くと雑草のようにどこにでもあります。しかし、佐多岬と同じで生える場所は、他の植物が繁茂できないような場所を選びます。それはなぜでしょか。次回はソテツという植物の不思議な生態とソテツにまつわる悲しい過去の話です。

次回は「黄泉帰り[後編] ソテツ」です。お楽しみに。

JADMA

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