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連載

食香バラ(R)[その5] 栽培と利用

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後も嘱託として勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

食香バラ(R)[その5] 栽培と利用

2018/02/27

三国志の英雄、劉備玄徳(りゅうびげんとく)は諸葛孔明を軍師に迎えるとき、彼の庵を三度訪ね誠意を見せたといわれます。それは『三顧の礼』といわれる故事です。バラの村(玫瑰鎮)の方々も、三度目の訪問でようやく、心を開いてくれました。今では、ここの代表者とはお互いの家庭を訪問する間柄になり、親戚のような関係です。隣接する国家同士は、利害関係が絡みますので、付き合い方は難しいと思います。しかし、個人が交流し言葉が通じなくても、心が分かり合うことを積み重ねていくことが、国同士の付き合いを支えることになるのだと思います。

さて、食香バラの連載を4回続けましたので、どんな植物なのか分かっていただけたかと思います。このシリーズの最終回は、栽培と利用の仕方をお話しします。食香バラ「豊華」の畑にいる筆者です。玫瑰鎮では、畝幅140cm程度に90cm間隔に植栽しています。丈は、1~1.5m程度です。

真冬の玫瑰鎮です。手前の食香バラ「紫枝(ズズ)」は、前年に伸びた枝が真っ赤に色づき、冬枯れが楽しめるのです。写真はまだ葉が付いていますが、栽培するにあたっては、この時期は葉を取り去りましょう。葉を取ると玫瑰をゆっくり休ませることができ、葉で越冬する病害虫を防ぐこともできます。下に落ちた葉も病害虫の防除のためきれいに取り去ります。植える用土は水はけがよければあまり気にしないでよいでしょう。pHは弱酸性でよいので普通にしておけばよいのです。強いていえば庭の土に馬ふんなどを30%程度混ぜ、ふっくらした水はけと水持ちがよい土にするとよいでしょう。接ぎ木の台木がノイバラなので、あまり気にしないで大丈夫です。

冬の剪定

食香バラは、新しく伸びた枝の先端に花を付けます。また元気に枝を伸ばしますので大株は徒長する枝を切ったり(随時)、冬には剪定が必要です。剪定の時期は、12~2月です。
写真のように伸びた株は、まず、古い枝を根元から切ります。それだけでだいぶすっきりします。次に新しい枝の先端を70~80cmを基準に細い部分を切ります。すると右の写真のようになり、剪定終了です。新苗の場合は、とにかく株を作ることが優先なので、徒長する枝を切り詰める以外は、冬の剪定以外に切らないで枝を自由に伸ばしましょう。

病害虫と肥料

玫瑰鎮は病害の少ない土地柄で、無農薬で栽培しています。このバラは、黒星病にはかからないと思います。うどんこ病にも強いのです。筆者が日本で栽培した場合、多少うどんこ病にかかりましたが、大した被害ではなかったので放置しました。アブラムシなどは玫瑰鎮で見ましたが、現地ではあまり気にしていない様子です。蕾に付いていたアブラムシは花が咲き香りを出すと、どこかへ行ってしまうのです。研究しないと分かりませんが、食香バラの香りにそのような効果があるのかもしれません。コガネムシ類が花を食べるので見つけ次第、取り去りましょう。

肥料

どんな植物にもいえることですが、光、水、二酸化炭素が十分であれば、植物は自活します。肥料をあげなくても枯れることはありません。しかし、植物の糧を利用する場合、大きく育てないと意味がありません。肥料は、休眠期以外絶えず少量ずつ植物は欲しいはずです。あえて肥料やりの方法を書けば以下の通りです。
時期は、年3回に分けてあげます。3月(芽出しの時期)、6月(お礼肥と枝葉を茂らせる時期)、11月(休眠期に入る前にあげます)、有機肥料と緩効性化成肥料を混ぜて施しますが、庭植えの場合、1株当たり一握りから二握り程度(30~60g)。鉢植えの場合は、鉢の大きさによって3~6g程度与えましょう。

利用方法

食香バラの「豊華」です。一季咲きですが、多花性でたくさんの花を咲かせます。収穫は、蕾が開く瞬間に行います。朝5~9時ごろが最高の品質です。

私もたくさんの花を収穫しました。生の花は、何といっても天ぷらが一番です。

無農薬で作った花は、そのまま薄く衣を付けて油で揚げます。泡が少なくなったら出来上がりです。グラニュー糖を薄くまぶしていただきます。おいしいですよ!

花弁を取り、同じ重さのグラニュー糖と一緒に手でこねます。そのままで熱を加えません。食香バラは、苦みがなく花弁にワックス成分が少ないのでそのままジャムにできるのです。

玫瑰鎮では、そのまま甕(かめ)に何年も寝かせジャンにします。この場合は、花弁の重さの1.5倍の砂糖を入れます。

出来上がったジャンは、月餅の餡やおまんじゅうの餡に使われます。とにかく香りのよいものは、口で味わうのが中国風なのです。写真は、この地に伝わる名物で玫瑰の揚げまんじゅうです。これもおいしいのです。

玫瑰鎮では、換金手段として生の花を乾燥してお茶にします。

玫瑰茶は、ビタミンが豊富で、特に女性にとって有効な中医薬として利用されてきました。薬用以外にも嗜好品としてもバラの香りと味を素直においしくいただくことができます。そのお茶は、最初、アントシアンの青い色をしてから、フラボノイド系の黄い色を出します。そして、香りと甘さを醸し出すのです。

玫瑰の花を蒸留すると貴重な精油が採れます。花びらには重量に対し4000分の1の割合で精油が含まれます。4トンの花弁から1kgの精油が採れる計算です。その香りの素晴らしさは、例えることができません。突き抜けるような爽快感を持った香りです。美容と薬理効果のある玫瑰精油は、金より高く取引されます。この過程で副産物のオーデコロンも採れます。香りがよく化粧水として女性に人気です。
生の花を白酒(パイチュウ)に2年漬けると香りがお酒に溶け込み玫瑰酒になります。アルコール度数は45度です。会食ではこの酒を飲むのですが、食事時の乾杯攻撃には、強靭な肝臓と覚悟が必要です。

生の花弁を酢に漬けると赤いバラ酢が作れます。リンゴ酢を使うと飲み物になります。自家製のローションや化粧水作りなど、正直、利用方法は書ききれないのです。
薬用、食用に特化した東アジアのバラ、食香バラ。バラとの暮らしに、新しい魅力がプラスされました。豊かな東アジアの花文化が広がっていくのが楽しみです。

次回は「雀とカラスの間に[前編] ソラマメ属」です。お楽しみに。

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