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スズメとカラスの間に[後編] ソラマメ属

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後も嘱託として勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

スズメとカラスの間に[後編] ソラマメ属

2018/03/13

カラスノエンドウでは、先端がへこんでいるかいないか、巻きひげがあるかないかなどとささいなことで区別し、変種に分類したりします。小さな事柄かもしれませんが、科学はそのような観察眼によって進歩してきました。毛が1本多いとか少ないとか、そんなことが楽しいのだから仕方ありません。 さて、後編では大陸に生えていたノエンドウの仲間とソラマメ属のもう一つのグループであるクサフジの仲間を紹介します。

山東省玫瑰鎮(メイクイチン)の畑では、カラスノエンドウにしては、大柄な豆花を付ける植物が生えていました。何となく雰囲気はレンリソウ属です。オオハナノエンドウ(大花野豌豆)Vicia bungei(ビシア ブンゲイ)マメ科ソラマメ属。種形容語のbungeiは以前紹介しましたが人の名前にちなみます。

オオハナノエンドウの花は、写真くらいです。カラスノエンドウに比べ2倍程度は大きいと思います。上に立つ旗弁(きべん)と呼ばれる花弁が縦長なのでウサギの耳みたいに見えます。オオバナノエンドウの花期は4~5月で、中国東北部、華北などの道端や畑の雑草として生えています。

ソラマメ属にはノエンドウの仲間の他に、日本に原生するクサフジ類などがあります。クサフジVicia cracca(ビシア クラッカ)マメ科ソラマメ属。種形容語のcraccaとは、豆を表す古い名前です。ユーラシア大陸に広く分布する植物で日本各地の山地の草むらなどで見ることができます。クサフジの仲間はよく似ていて見分けるのが難しいのですが、写真のものは私の見立てではクサフジです。

写真は、日本のビシアと学名がついている植物です。ヒロハクサフジVicia japonica(ビシア ヤポニカ)マメ科ソラマメ属。近畿地方より北の海岸草原に自生し、日本以外でも樺太など東アジア北部の海岸がお好みです。クサフジに比べ小葉の幅が広いのでヒロハクサフジです。

ヒロハクサフジはクサフジに比べ小葉の幅が広いので区別がつきます。風通しのよい海岸付近に生えるので作りが剛直で丈夫です。

写真は、内モンゴルの荒野で見かけたソラマメ属です。ヒロハノクサフジより小葉は大きく、株も1メートル程度に生育していました。大きなクサフジです。つるで絡むのではなく自立して立ち上がっているように見えます。

オオバクサフジVicia pseudo-orobus(ビシア プセウド オロブス)マメ科ソラマメ属。種形容語のpseudoとは、偽を意味します。偽のVicia orobusという意味です。本当のVicia orobusは、ヨーロッパの大西洋岸の海岸草原などに原生しています。山地草原に自生するオオバクサフジVicia pseudo-orobusは、日本にも自生があります。しかし、降雨量が多く樹木が豊かに茂る国土では、草原環境が維持されにくいために日本で見ることは少ないのではないかと思います。

四国の香川県土器川の河川敷です。何やら青い花が咲いています。それは、遠目から見ても、クサフジ類であることは分かるのですが、少し様子が違っていました。

どうも日本で見慣れているクサフジにしては、葉や花が細く、花筒が長いのです。ビロードクサフジVicia villosa(ビシア ビルロサ)マメ科ソラマメ属。種形容語のvillosaは、軟毛の多い様を表します。地中海沿岸地域に原生する植物です。緑化用(ヘアリーベッチ)として種子が販売されていることから、耕作地から逸出したものです。花色も赤紫や紫、白花もあり、よく見るとそれなりにきれいですが、全草に毒性が指摘されています。ソラマメ属だからといって食べることができるとは思わないでください。

ソラマメ属の最後に少し変わった種を紹介します。ナンテンハギVicia unijuga(ビシア ユニジュガ)マメ科ソラマメ属。種形容語のunijugaは、一対を表し、小葉が2枚一対になっているこの植物の特徴を表します。また、別名をアズキナといい、マメや若葉を利用する地域があります。

マメ科は、キク科植物の次に多い植物群です。根に共生する根粒バクテリアの力を借りて荒れ地でも元気に暮らせる技を開発しました。日本に自生する多くのソラマメの仲間たちは、食用になるもの、してはいけないものとさまざまです。それらは、春から夏にかけて野や山、あるいは海岸縁で見ることができます。あなたは、いくつのソラマメの仲間に出会うことができるでしょうか?

次回は「種芋考(たねいもこう) ジャガイモ」です。お楽しみに。

JADMA

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