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種芋考(たねいもこう)[その2] ジャガイモ

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後もアドバイザーとして勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

種芋考(たねいもこう)[その2] ジャガイモ

2018/08/07

2018年3月20日掲載の「種芋考(たねいもこう)」で紹介したジャガイモを実際に栽培してみました。畑がなくても鉢で育てるとどのくらいの収穫量になるのか? タネイモの重さに対しどのくらい増えるのか? 鉢栽培においてどうすれば楽しいジャガイモ栽培ができ、満足のいく収穫を得ることができるのか考えてみたいと思います。そして、品種ごとに特性を把握し、東アジアの片隅で暮らす私たちのタネイモ選びの参考にしたいと思います。

まず、栽培概要をお話しします。
栽培期間:2018年2月27日~6月12日 
栽培品種:22品種(上記の表を参照) 
鉢:内径30cmプラスチック鉢を使用
用土:一度使用した廃棄用残土
肥料:スーパービガーA(窒素:リン酸:カリ:苦土:マンガン:ホウ素=9:12:9:4:1:0:1)を元肥1鉢当たり30g、追肥は適宜。合計1鉢当たり40g。

倍数性に関しては、すでに掲載済みの「種芋考(たねいもこう)」を参照してください。カテゴリーは、私の独断区分です。その結果の詳細は後ほどご紹介します。まずは、どの品種を栽培したのか見て下さい。

今年は、芽が出るのは、思いの外、遅く1カ月ほどかかりました。3月下旬~4月上旬にそれぞれの芽が出そろいました。ジャガイモは、芽が出る前に根が出てくるのが分かりました。2月下旬にタネイモを植えましたが、もう少し早く植えるべきだったと思います。芽が出たら、芽かきをします。芽は大きな芽を2つ残すことを基本にしました。他は全て取りました。そして、1鉢当たり5g追肥し3cmほど土増しをします。畑なら土寄せですが、鉢栽培では土寄せができないので土を増していきます。

すると、毎日のように目覚しい成長をしていきます。とっても楽しいジャガイモ栽培の始まりです。2週間を基準に1鉢当たり10gの追肥を行い、そのたびに土増しをします。この段階で4月中旬です。

栽培していると、4倍体品種と3倍体品種、そして2倍体品種の違いに気が付きます。4倍体品種は、葉が幅広で大きく、2倍体品種は葉の幅が狭く小さな葉を付けます。4倍体品種や3倍体品種は、「種芋考(たねいもこう)」で話してあるので省きます。なるほど、葉が大きければそれだけ光合成量が多くなるので収量が上がるわけです。3倍体品種は、その中間的成長具合でした。

肥料をあげ土増しをするたびに、成長にターボがかかります。日々成長が実感できる勢いです。ジャガイモ栽培の楽しさを満喫できます。4月下旬でここまで成長します。追肥と土増しを1週間に一度に変更しました。

しっかり見守ると、薬剤を使わずにアブラムシやテントウムシダマシなどの害虫を手で捕ることができます。最後の最後まで、病害虫で悩むことがありませんでした。人の目に勝る病中害防除はありません。5月にストーブが必要なほどの低温の日が何日かありました。葉に低温障害の兆候が出ましたが、難なくやり過ごすことができました。

4月下旬~5月下旬、この時期の成長は驚くほどで、ぐんぐん育ちます。肥料を1回15gに変えて毎週あげることにして、そのたびに土増しをしていきます。肥料は、成長に応じた量を回数多くあげるべきだと思います。言い換えれば、量は少なくても数多く与えるべきです。誰だって毎日食べたいはずです。するとジャガイモ君たちは、それに応えて、ますます成長していきます。

ジャガイモは、3カ月ほどで収穫できます。5月下旬になると葉が黄色くなり枯れてきます。もう収穫時期を迎えているのです。

営利用栽培主力品種の「男爵薯(だんしゃくいも)」や「キタアカリ」などは思いの外、早く枯れ、地上部がなくなるので、やや生育に不満があります。それでも収量は、少なからず、多からずという中庸を示します。早く地上部が枯れ上がる早生性は、生産者の立場に立てば重要な美点です。なぜならトラクターなどの機械収穫を考えると地上部が残っているとロータリーに絡み邪魔です。晩生で収量が多少多いというよりは、生産効率がよい品種が営利栽培に向いているというわけです。

一方、すぐに枯れ上がらず、長く緑を保つ晩生の品種ほど収量が上がる傾向にあります。多くの品種を作ると品種の早晩性が理解できます。写真は3倍体品種の「ジャガキッズ パープル」ですが、長く成長を続けるので光合成産物の蓄積が続き多収になります。家庭菜園では、丈夫に育ちたくさん採れる、中生や晩生の品種がいいと思います。この品種の収穫量は、驚きの量だったのでした。それは後ほどお楽しみに。

6月上旬に長崎で改良した「はるか」という品種を試し掘りしてみました。芽を2つ残しました。1鉢でこの収穫量です。収量1000g、収穫倍数※で17倍程度の収量でした。「はるか」は、色白で芽が赤くおしゃれな最新改良種のジャガイモです。最新改良種は、耐病性、耐センチュウ性、収量性、食味などさまざまに検討が加えられています。聞いたことがない品種でも新しい品種にチャレンジしてほしいと思います。それぞれの品種の収穫情報は次回、「種芋考(たねいもこう)[その3] ジャガイモ」でお知らせします。

※収穫倍数:1鉢当たりの収量をタネイモの重さで割った値。タネイモからどれくらい収穫できるかが分かる。

次回は「種芋考(たねいもこう)[その3] ジャガイモ」です。お楽しみに。

JADMA

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