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Plant of Kunming [その11]長虫山の植生 前編

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後も嘱託として勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

Plant of Kunming [その11]長虫山の植生 前編

2018/10/09

昆明市は、三方が山に囲まれた盆地です。中心部から北に向かうと裏山に突き当たります。見た目は、小高い丘ですが、市街地の標高自体が1900mほどなので丘の頂上は2000m以上です。そこには雲南地方の亜高山帯植生を見ることができます。

丘というには、少し高過ぎです。標高は2200m、名前を長虫山(ながむしやま)といいます。長虫とは蛇のこと、昆明盆地の北側を大蛇のような姿で守護する山です。

長虫山に登ると昆明市の郊外が一望できます。頂上付近は、一面の草原で高い樹木が見当たりません。岩山で水を蓄える力がないこと、アルカリ性土壌であることなどがその理由だと考えられます。

ここは、亜熱帯高地カルストという特殊な地形です。山肌は石灰岩が露出し、岩と岩の隙間に特殊な植生が見られるのです。

季節は晩秋、イネ科の一年草の枯れ野には、秋の草花の最終版の花を見ることができます。Delphinium(デルフィニウム)属のことを中国語で翠雀(ツィチャオ)Cuìqiāoといいます。日本ではオオヒエンソウ属(大飛燕草属)です。この種は、キンポウゲ科デルフィニウム属。学名では、Delphinium grandiflorum(デルフィニウム グランディフロルム)です。中国の雲南省以北の省、内蒙古(内モンゴル自治区)などの草原に生えます。種形容語のgrandiflorumとは、大きな花の意味です。

デルフィニウム属の意味は、蕾の形がDelphis(イルカ)に似ていることによります。人の感性は地域によって違うもので、西洋ではこの花を見てイルカといい、中国では雀(スズメ)、日本では燕(ツバメ)に見立てました。

花の色は薄い青から紫までの色幅があり、花の大小などの変異が野生の状態であります。

こちらは、中心の雄しべと雌しべのが黒いタイプのデルフィニウム グランディフロルムです。山ごとに花のタイプが違い、形質がある程度固定されていると思います。花の育種をするには、いくつかの山を歩けば違う形質の固定種を集めることができると思います。

草原で秋の花といえばリンドウです。雲南省はリンドウが特に多く特定が困難なのです。この種はあまり自信がありませんが、Gentiana primuliforia(ゲンティアナ プリムリフォリア)リンドウ科リンドウ属でいいと思います。昆明市など標高1600~2500mの地域に自生します。

ゲンティアナ プリムリフォリアをアップにするとこんな感じです。とにかく大量に、昆明市付近の山には広範囲に生えています。リンドウは薬草としての需要が高く、地方に行くと換金作物として山採りされ自生量が減少している傾向があります。それゆえに都会近郊の山の方が自生している量が多いといいます。

他の場所には、コケリンドウのような、小さなリンドウが生えていました。種は不明です。Gentiana sp.(ゲンティアナ)リンドウ科リンドウ属。

もう少し標高が上がった近隣の山ではGentiana cephalatha(ゲンティアナ ケファランタ)が咲いていました。中国名を頭花竜胆(とうかりんどう)といい、頭状花序のように花がまとまって咲きます。日本のリンドウGentiana scabra var. buergeri(ゲンティアナ スカブラ )に近い植物だと感じました。

ゲンティアナ ケファランタの基本花色は、薄い青色ですが、ピンク色をした個体もあります。もう少し時間をかければ白花なども見つかるでしょう。

次回は「Plant of Kunming [その12]長虫山の植生 中編」です。お楽しみに。

JADMA

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