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フジ

フジ

2018/04/03

新緑が芽吹き心地よい風が吹きだすと、フジの咲く季節がやってきます。フジのみやびな姿は昔から日本人に愛され、『古事記』『万葉集』『枕草子』などの古典にもたびたび登場しています。日本ではフジとヤマフジの2種が自生しており、昔からどちらもフジとして親しまれてきました。両種の違いとしてフジはときに花房が1mにもなりますが、ヤマフジは花房10~20cmと短いことが挙げられます。どちらもかわいらしい蝶形をした小花が連なり花房を作ります。自生していた2種から、より長い花房、より美しい花色へと改良が進み、さまざまな魅力的な園芸品種が生み出されました。今回ご紹介した施設では、多くの品種を楽しむことができます。日本人が愛し続けたフジの観賞に出掛けてみてはいかがでしょうか。

東京都立神代植物公園

ふじ園に併設する長さ約85mの藤棚。頭上から降るように咲く花々からはほんのり上品な香りが漂う

神代植物公園は、武蔵野の面影が残る園内で、四季を通じて草木の姿や花の美しさを味わうことができます。当初、神代植物公園は東京の街路樹などを育てるための苗圃でした。戦後、神代緑地として公開された後、昭和36(1961)年に名称も神代植物公園と改め、都内唯一の植物公園として開園されました。現在、約4800種類、10万本の樹木が植えられています。園内は、ばら園、つつじ園、うめ園、はぎ園をはじめ、植物の種類ごとに30ブロックに分けられており、景色を眺めながら植物の知識を得ることができます。つつじ園で有名な神代植物公園ですが、ほぼ同時期にフジを楽しむことができるのも同園の魅力でしょう。唯一の八重咲きのフジの「八重黒竜(やえこくりゅう)」、「白花美短(しろかぴたん)」など約10品種50本が藤棚などに仕立てられ、その美しさを満喫できます。

マメ科の花らしく小さな丸みを帯びた花が房になって垂れ下がる

柔らかな白色と緑の葉のコントラストが美しい「白花美短」。花序が通常のフジよりも短いことが名前の由来

現存する唯一の八重咲き品種の「八重黒竜」

「八重黒竜」の棚仕立て。八重咲きの豪華な花が楽しめる

施設概要

〒182-0017
東京都調布市深大寺元町5-31-10
電話番号:042-483-2300
休園日:月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日)、12月29日~1月1日
開園時間:9:30~17:00(入園は16:00まで)
入園料:大人500円、65歳以上250円、中学生200円(東京都内在住・在学の中学生は無料)
駐車場:有料駐車場あり
フジの見ごろ:4月下旬~5月中旬(開花状況は気温により変動するため事前にご確認ください)

横須賀しょうぶ園

花房は10~20cmと短く、美しい紫色の「紫甲比丹藤(むらさきかぴたんふじ)」

神奈川県横須賀市に所在する一年を通じて季節の花を楽しめる公園。園内のふじ苑は、11品種250本ものフジが4月下旬~5月上旬に見ごろを迎えます。ゴールデンウィークには「ふじまつり」が行われ、和菓子とお茶と共にフジの美しさを堪能することができます。フジが終わる5月下旬~7月上旬になると、公園名にもなっているハナショウブが見事に咲き誇ります。412品種、14万株のハナショウブが3.7ヘクタールの敷地に咲き競う様子は全国有数の美しさといわれているそうです。6月にはハナショウブの開花を祝う「花しょうぶまつり」が行われ、期間中の毎週日曜日に「琴の演奏会」などが開催されます。

横に大きく広がり見応えのある仕立て

代表的な「白野田藤(しろのだふじ)」。花房は50~60cmと長く豪華。爽やかに夏の訪れを教えてくれる

横須賀しょうぶ園のフジは全て1本仕立て。フジの美しい樹形が楽しめる

施設概要

〒238-0033
神奈川県横須賀市阿部倉18-1
電話番号:046-853-3688
休園日:毎週月曜日(月曜日が休日の場合はその翌日)、休日の翌日(翌日が土・日に当たる場合は開園し火曜日が休園)、年末年始(12月29日~1月3日)、4~6月は無休
営業時間:5~8月/9:00~19:00、9~4月/9:00~17:00
入園料:4~6月/大人310円、小・中学生100円。7月から翌年3月までは無料
駐車場:有料駐車場あり(4~6月のみ有料)
フジの見ごろ:4月下旬~5月上旬(開花状況は気温により変動するため事前にご確認ください)
イベント:2018年4月21日~5月6日 ふじまつり

春日大社神苑 萬葉植物園

濃紫花で一重咲きの「黒龍藤(こくりゅうふじ)」。花房の長さは40cm程度、園内に一番多く植栽されている

春日大社の参道に所在する春日大社神苑 萬葉植物園。昭和7(1932)年に『萬葉集』にゆかりの深い春日野の地に昭和天皇の御下賜金を賜り、約300種の萬葉植物を植栽する日本で最も古い萬葉植物園として開園されました。約3ヘクタール(9000坪)の園内は、萬葉園・五穀の里・ 椿園・藤の園に大きく分かれています。園内の南端には、春日大社の社紋が「下り藤」であることから藤の園が造られ、20品種、約200本ものフジが植栽されています。一般的には、フジは棚仕立てが多いのですが、萬葉植物園では立ち木作り(たちきづくり)という仕立てを主流としています。棚仕立てはフジの花を見上げて観賞しますが、立ち木作りは目の高さで花が咲くので、花に囲まれているような感覚を体験できます。この仕立てにより花房全体に日光が当たり、裏表なく開花するためどの方向からも花を堪能できます。園内に香りを広げる中国から伝わったといわれる「麝香藤(じゃこうふじ)」や濃いピンク色の「昭和紅藤(しょうわべにふじ)」など珍しい品種も観賞できます。
※萬葉植物園にならって「萬葉」という文字を使用しています。

立ち木作りのフジ(左)と棚仕立てのフジ(右)。立ち木作りの樹形維持のために行うまめな剪定は骨が折れる作業

園芸品種の中で一番長い花房を持つといわれる「九尺藤(きゅうしゃくふじ)」

白花のフジでは一番長い花房を持つ「白野田藤(しろのだふじ)」

「麝香藤」の香りは約150m先の正門まで届くほど強い(左)。花房が短くコロンとした真っ白な「白甲比丹藤(しろかぴたんふじ)」はヤマフジの改良種(右)

施設概要

〒630-8212
奈良県奈良市春日野町160
電話番号:0742-22-7788
休苑日:3~11月/無休、12~2月/月曜日(月曜日が祝日等の場合は翌日)
開苑時間:3~10月/9:00~16:30(17:00閉門)、11~2月/9:00~16:00(16:30閉門)
拝観料:大人500円、小人250円
駐車場:有料駐車場あり
フジの見ごろ:4月下旬~5月上旬(開花状況は気候により変動するため事前にご確認ください)

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