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園芸通信 特別企画 幸せの扉を開ける オープンガーデン 花を育てることで、優しさと思いやりを知る園芸通信 特別企画 幸せの扉を開ける オープンガーデン 花を育てることで、優しさと思いやりを知る

ゲスト:須磨佳津江さん 「オープンガーデン」とは、「個人の庭を一般公開する」という英国から輸入されたガーデニングの楽しみ方の一つです。 今回は、日本におけるオープンガーデンの第一人者であるフリーアナウンサーの須磨佳津江さんにお話を伺いました。

オープンガーデンは「喜びのおすそ分け」 花は人を感動させ、感動は人を呼ぶ

─── 須磨さんはNHK「趣味の園芸」の司会を11年間務められ、オープンガーデンの活動を通じて多くの方と出会い、さまざまな経験をされていると思いますが、オープンガーデンについてどのような考え方をお持ちでしょうか?

須磨私は20年にわたってオープンガーデンを広める活動を、(「趣味の園芸」の)放送とは別にライフワークとしてきました。
20年前を思い出すと、イギリスの「ナショナル・ガーデン・スキーム」という団体がオープンガーデンのガイドブック、通称『イエローブック』を出版していましたが、日本ではオープンガーデンという言葉自体、分かる人はほとんどいませんでした。

そんな中、「趣味の園芸」に送られてきた視聴者からのお便りで、誰にでも開放している庭があることを知りました。また、家の周りを菊で美しく飾っていらっしゃる横浜のお宅を知り、その見事さにびっくり!そのお宅は後に「菊御殿」と呼ばれるようになりました。

何だかワクワクして、自分のための庭ではなく、他の人に見ていただこうというオープンガーデンが日本にもあるんだ!と、調べ始めたのです。
菊御殿の写真を番組で紹介したところ、放送後に何と1500人もの方が足を運ばれたそうですよ!

─── 1500人ですか!「菊御殿」については「園芸通信」でも特集を組んでご紹介させていただきましたが、当初からすごい数の方々が足を運んだのですね。

須磨そうなんですよ。番組で「菊御殿」を最初に紹介したのは1996年ごろなのですが、その翌年には、さらに7000人もの方が足を運ばれて。

最初に足を運んで感動した1500人の人たちが、知り合いに写真を見せて「すごいでしょ」「私も連れて行って!」となって、1人が5人を連れてくる。そうすると、あっという間に7000人になる。それを聞いて、あらためて「花ってすごいな」と思いましたね。やっぱり、花は人を感動させ、感動は人を呼ぶんだ、と。

オープンガーデンは、花を育てて、庭を開放して、たくさんの人に自由に見てもらうという活動ですが、私が思うに、オープンガーデンの本質は「喜びのおすそ分け」なんですね。

─── 「喜びのおすそ分け」とは、とてもすてきな言葉ですね。

須磨花を育てて、花を咲かせて、「きれいだな、自分一人で見ているのはもったいない」と思い、誰かに見せたくなる。そして、誰かに見てもらうことで、それが喜びとなり、またおすそ分けがしたくなる。そのような、花をめぐる「喜びのおすそ分け」が笑顔の連鎖を生んで、オープンガーデンが盛んになっていったのではないかと思っています。

伝え始めて10年もすると、オープンガーデンという言葉は日本中に広まっていき、今では「それって何ですか?」と聞いてくる人はほとんどいません。

オープンガーデンの数も相当増えて、最近では、私の役目は終わったかな?なんて思ったりしています。ただ、そうはいっても地域差もありますので、頼まれれば話をしに行くことはありますし、相談されれば知っていることをお伝えしたりと、できることは続けています。

だって、私自身オープンガーデンを通じてさまざまなことを学ばせていただいて、花育てには生きる知恵が凝縮されていることも感じていますので、少しでもお役に立てれば……と思って。

オープンガーデンは社会を豊かにする 日本の「縁側文化」にも通じるルーツがある

─── オープンガーデンが社会にもたらす影響についてはどのようにお考えでしょうか。

須磨オープンガーデンのよいところは、お庭に花が咲いたので、「どうぞ」と言うだけで、たとえ口下手でも引っ込み思案な方でも、花を介して会話が弾み、いつの間にか友達になって、毎日が楽しくなるということ。

NHKでは孤独死などの社会問題についても番組で多く取り上げましたが、オープンガーデンが地域や社会のコミュニケーションを活性化させ、そうした問題を解決する鍵になる可能性もあると思っています。

─── オープンガーデンで庭を開くことで、人と人とのコミュニケーションが自然に生まれるということですね。

須磨もともと、日本には「縁側文化」がありました。日本のおうちの縁側は、外から来た人と話をする場所であり、家の中と外をつなぐ交流の場所です。そして、縁側のそばにはいつも「お庭」がありました。それを考えると、日本人は昔から、お庭に人を招き入れる文化を持っているんです。

オープンガーデンはイギリスを発祥として西洋から来た文化ですが、日本の縁側文化にもDNAレベルで通じるものがあるのではないかと、私は考えています。

園芸で大事なのは足音!花は生き物、対話することで人にも優しくなれる園芸で大事なのは足音!花は生き物、対話することで人にも優しくなれる

須磨園芸のとある先生がよい言葉をおっしゃっていました。「園芸で大切なのは、足音なんだよ」と。足音というのは、いつも花のそばに行って様子を見るということで、毎日見ていれば花の微妙な変化にも気付くことができる、いつもと様子が違うと分かれば早めに対処できるということ。

つまり何よりも重要なのは、「相手を思う心」なんですね。花も人も生き物で、赤子を見るお母さんのように、言葉にできない変化を察することが大事だと教えていただきました。

相手のしてほしいことを読み取るという、これは「思いやり」ですよね。「私が水をやりたいんだから、水をやる」というわけにはいかない。そんなことをしたら、植物は枯れてしまいます。

毎日毎日、相手を思いやる気持ちを増幅させていく作業が、植物と向き合うということなんです。相手の望むものをきちっと与えることの大事さを知り、実践することで、見事に「ありがとう」と花は咲いてくれます。

ですから、花を育てている方は優しい人ばかりですよ。花と日常的に対話することで、人にも優しくなれるのでしょうね。

─── オープンガーデンは、一人で花の世話をするだけでなく、グループで行うことも多いかと思いますが、そうした中でも、相手を思う心や人への優しさは生きてくるものでしょうか。

須磨オープンガーデンのグループは、優しさをつないで、ネットワークをつくっていく素晴らしい取り組みです。

花を育てることで自然と仲間ができて、仲間と共に行動し、「お花がきれいですね」と褒めてくださる人たちに出会い、感謝され、喜ばれることで、また元気をもらえます。そうしたプラスの相乗効果というものが、オープンガーデンの活動ではあちこちで起こるんですよ。

また、花はペットなどの他の生き物のパートナーと比べて、自分なりの見せ方をアレンジしたり、工夫したりすることができることも面白いですよね。それに、自分の愛する花について語る「花自慢」は決して嫌みにならず、日常を彩る話題としてもすてきです。

オープンガーデンは、頑張らずに楽しむこと 「よかったらどうぞ」の一言で、仲間は自然と集まるオープンガーデンは、頑張らずに楽しむこと 「よかったらどうぞ」の一言で、仲間は自然と集まる

─── これからオープンガーデンを始めたいと思っている読者の皆さまへ、アドバイスをお願いします。

須磨気軽に、「どうぞ」という看板を立てるのはどうでしょうか?私の庭なんて大したことないから無理!という方が多いのですが、商業施設ではないのですからわが家で自慢の一本の花木でも、ちょうどきれいに咲いた花でも、「見てもらいたい!」という気持ちがあれば、立派である必要はないんです。

意気込んで始めた人ほど、頑張って疲れて、楽しくなくなってしまうということがあります。
「まずは、この一鉢から」くらいの気楽さで始めていただきたいな、と思います。ともかく、頑張り過ぎは禁物です。(笑)

花の水やりや、枯れ花取りをしているときに、「きれいですね」と声を掛けてくださる人がいたら「よかったら中にもありますよ、どうぞ」とお誘いすると、花って不思議と会話が弾んで「またどうぞ」となる……。そのうち自然に仲間ができて、花の育て方を教え合ったり、花情報を交換したり、他の庭にも出掛けて行ったりして、毎日が楽しくなると思います!

ガーデニングの上手な方は、教え上手で、親切!ゴルフでもそうではないですか?(笑)

─── 最後になりますが、これからオープンガーデンを始める読者の参考までに、須磨さんが最近お好きな花について教えてください。

須磨最近では、ラナンキュラスの品種の一つである「ラックス」が大好きです。実は、ラナンキュラスって、色が原色系で主張が強すぎるイメージがあったので、私は少し苦手でした。でも、宮崎県で「ラックス」という品種を知って、その可憐さに魅了されました。「サカタのタネ グリーンハウス」で開催された「県立相模原公園ラナンキュラス展2017」でもすてきな「ラックス」をたくさん見て、株を分けていただいて。1年たつと大株になるし、今では夢中です!

「ラックス」は、蝶々がひらひらと風に舞って揺れるようなかわいい花を咲かせるのですが、これがなんともいえずいいんです。すっかりファンになってしまったので、今では「ラックスLOVE!」って、たくさんの方にすすめています。(笑)

気に入った花があると、花人たちにすすめたくなってしまうんですよね。花が好きな人たちって、花の話をするだけでワクワクしてしまうものです。読者の皆さまも、これを機会にぜひともオープンガーデンやガーデニングをワクワクと楽しんでいただければと思っています。

─── たくさんの貴重なお話を聞かせていただき、本日はありがとうございました。

取材・撮影:サカタのタネ
2018年1月30日 更新

須磨 佳津江須磨 佳津江

須磨 佳津江須磨 佳津江

東京女子大学卒業後、NHKにアナウンサーとして入局。フリーランスとなり、「ニュースの窓」「テレマップ」など、NHKを中心とした番組キャスターを務め、1994年より「趣味の園芸」を11年間担当。「生活ほっとモーニング」で「須磨佳津江の園芸散歩」というコーナーを持つなど、園芸キャスターとして知られる。

現在はNHK「ラジオ深夜便」のアンカー(第1・3週の火曜日深夜11時15分~朝5時までの生放送)で、花や緑に関する魅力的な人々のインタビューを企画制作もしている。

主な著書は「心に花を咲かせて」(2005年、日本放送出版協会)、「ひと・まち・みどり」(2009年、東京都公園協会)、「花が好き!自然が好き!」(2014年、NHKサービスセンター)。インタビュアー、コーディネーター、エッセイ執筆、講演と仕事の幅を広げ、2006年より東京農業大学客員教授。

他にも公益財団法人日本花の会理事、公益財団法人都市緑化機構評議員などを務め、数々の委員、審査員としても活躍。

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