パクチー (コリアンダー)の育て方・栽培方法








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生育条件
- 日当たり
- 日なた~半日陰
- 土壌酸度
- 弱酸性 pH5.5~6.5
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栽培管理
- 地植え適所・土質
- 土質はあまり選びませんが、日当たりがよく有機質を多く含み、水はけ、水持ちのよい、肥沃(ひよく)な土
- 鉢植え用土
- 市販の野菜用培養土、または、赤玉土6:腐葉土2:完熟たい肥2を混合し、苦土石灰と化成肥料を、用土10L当たり各10~20gを入れてよく混ぜ合わせ、1週間ほどなじませる。
- 鉢サイズ・種類
- [丸鉢]直径15cm(5号鉢)に1株、大株に育てる場合は、直径24cm(8号鉢)に5~6株植え。[65cm幅の長型プランター]2条植えで株間約10cm。[鉢の深さ]丸鉢・長型プランター共に20cm以上あればよい。
- 植え付け
- [畝]60cm幅で2条、80cm幅で3条まき(通路50~60cm)。[株間]葉を収穫する場合は15~20cm、種まで収穫する場合は30cm。[条間]20cm。
栽培暦
パクチー(コリアンダー)とは
「パクチー」はタイ語での呼び名で、日本でも和名の「コエンドロ」より「パクチー」の呼び名が普及しています。葉や茎の生食だけでなく、世界的には乾燥した種子(果実)も多く利用されます。葉と種子では風味が異なり、種子はかんきつが混じったような優しい香りがあり、そのまま、またはすりつぶしてスパイスとして肉、卵、豆料理などに広く使われています。
中国語の「香菜(シャンツァイ)」、タイ語の「パクチー」の呼び名は、生の茎や葉を利用する時に使われるのに対し、「コリアンダー」の呼び名は、ヨーロッパ・南北アメリカやインドなどで乾燥した種子(果実)を香辛料として利用する時に使われることが多く、大まかに区別されています。栄養的にはビタミン類やミネラルを豊富に含み、昔から食欲増進、整腸、解毒などにも使われてきました。
世界各地で長年にわたって栽培され、それぞれその地に合った変異があるようですが、品種としてはっきり分化しているものは少なく、葉の形や大小、種子粒の大粒系と小粒系、とう立ちの早晩などで違いがあるようです。一般に出回っているのは東南アジアに多く見られる、種子が大粒系で抽苔が比較的早い系統の品種です。
ポイント
パクチーの生育に適した温度は15~25℃で、寒さには比較的強く、弱い霜にあたる程度で枯れることはありませんが、5℃以下では生育せず、葉が紫色になって縮んでしまいます。暑さも嫌いで30℃を超えると生育が悪くなり、特に夏の直射日光に当たると、葉が日焼けしたり硬くなってしまったりします。収穫を続けるには寒い時期はビニールシートで保温し、暑さに対しては遮光ネットなどで保護します。
種まきは寒さと暑さを避け、春は4月中旬~8月中旬、秋は9月中旬~10月中旬に行います。春まきは、種まき後50~60日ほどでとう立ちして花が咲き、葉の収穫は終了となります。長く収穫するには、時期をずらして数回に分けて種まきします。連作を嫌うため、セリ科作物の連作は避けましょう。
土づくりの準備
畑
定植の2週間以上前に、酸度調整のため苦土石灰を1平方メートル当たり100g全面散布して耕します。さらに、1週間前に完熟堆肥2kgと化成肥料(窒素:リン酸:カリ=8:8:8)を100g施して、再度耕しておきます。
2週間以上前
1週間前
鉢植え
鉢の深さは、丸鉢・長型プランター共に20cm以上あれば問題ありません。鉢底が見えなくなる程度に鉢底石を敷き詰め、用土を鉢の縁から5~6cm下まで入れます。市販の野菜用培養土を利用すればそのまま植え付けできるので便利です。自分で用土を調合する場合は、赤玉土6:腐葉土6:完熟たい肥2を混合して、そこに苦土石灰と化成肥料を、用土10L当たり各10~20gを入れてよく混ぜ合わせておき、1週間ほど土となじませてから直まきします。
この作業のポイント
パクチーは、適温で日当たりがよいとぐんぐん育つものの、強すぎる日差しは苦手です。そのため、暑い時期はプランターを風通しのよい半日陰の場所に置くのがおすすめです。
種まき・発芽までの管理
パクチーの種に見える直径4~5mmの丸い粒は果実で、本当のパクチーの種は殻の中に2個ずつ入っています。
殻付きのままだと吸水に時間がかかり発芽まで2週間から3週間かかるので、種まき前に種を板などで挟んで擦り合わせ、つぶして割ります。
殻を取り除き、種を湿らせたティッシュの上に置いて、4~5時間または一晩吸水させてからまくと発芽率がよくなり、発芽までの時間短縮もできます。
種まきは、直まきでもポットやトレーにまいて育苗してもよいですが、パクチーの根は直根性のため、太い根が真っすぐ伸びてひげ根が少ないので、移植には弱く、できれば直まきの方が順調に生育します。
畑
乾燥に弱く水は欲しがりますが、水はけが悪いと根が腐りやすいため、そのような土壌の場合は10~15cmの高畝にして、株元の通風を図るようにします。
株間は、葉を収穫する場合は約10cm、種まで収穫する場合は30cmにします。パクチーの種は光を感じて発芽する性質(好光性種子)を持つので、3~4粒ずつまき、覆土は5mm程度で、あまり深くまくと発芽率が悪くなるので注意します。種まき後は十分に水やりして、発芽まで乾燥させないようにします。
この作業のポイント
発芽後は、雨による泥はねで株元が汚れるのを避けるのと乾燥防止のため、湿度を保つために株元に敷きわらを敷くか、穴あきポリマルチを使って種まきをすると管理が楽でおすすめです。
鉢植え
先にたっぷり水やりをして、水分が落ち着いてから種まきをします。種まきは、すじまきでもばらまきでもよく、すじまきなら10~15cm幅で1~2cm間隔にすじまきにします。覆土は5mm程度の浅まきにして、発芽まで2週間程度時間がかかるので、種まき後は十分な水やりして、発芽まで乾燥させないように気を付けます。
間引きなどの育苗管理
間引きした苗も薬味やサラダにして利用すれば、早い時期から楽しめます。
畑
苗のうちは葉が柔らかく、株が込み合っていると葉が絡み合って徒長しやすくなります。隣り同士の葉が付くようになったら、早めに間引きます。本葉2~3枚で3本立ち、4~5枚になったら1本立ちにします。
1回目の間引き
2回目の間引き
鉢植え
畑と同様に順次収穫しながら、間引きをしていきます。発芽後は、本葉2~3枚で5~6cm間隔、本葉4~5枚で約10cm間隔に間引きをします。
1回目の間引き
2回目の間引き
定植
畑
トレーで育苗した場合は、本葉2~3枚で畑に定植するか、1~2枚のうちに直径9cm程度のポットに鉢上げ後、本葉4~5枚になったら畑に定植します。パクチーは、細根が少なく移植には弱いので、定植時は根を傷めないように気を付けます。植え付け後は十分に水やりして、気温が低いときは寒冷紗や不織布を被覆して活着を助けます。
鉢植え
種を直まきできなかった時は、苗を購入して植え付けるのもおすすめです。苗を選ぶにあたっては、大きな苗より小さめの苗がよく、徒長していないしっかりした苗を選びます。ポットの中の苗の本数が多い場合は、3本程度に間引きしてから根鉢を崩さないように植え付けます。
鉢のサイズと株数の目安は、直径15cm(5号鉢)の丸鉢に1株、大株に育てる場合は、直径24cm(8号鉢)に5~6株です。65cm幅の長型プランターは、2条で株間は約10cmです。
植え付け後は、鉢底から水が流れ出るまでたっぷり水やりをして、日差しが強い場合、植え付け直後は半日陰で管理します。
水やり
畑
地植えにしているパクチーは、基本的に水やりは必要なく、雨任せにします。2週間以上晴天が続き、乾燥がひどい時はたっぷり水やりをします。
鉢植え
パクチーは多湿が苦手なので、水やりは土の表面がしっかり乾いてから、鉢の底から水が流れ出るくらいたっぷり行います。水やりは基本的に朝10時くらいまでに行い、夕方には乾くくらいが理想的です。春と秋の長雨の時は控えめにします。真夏の暑さが厳しいときや株が大きくなって翌朝には土が乾ききってしまう場合は、状況を見て朝晩2回水やりするなど、乾燥しないように注意します。
追肥・土寄せなどの栽培管理
畑
葉のみを収穫する場合は、種まきから収穫までの期間が比較的短いので、元肥のみで追肥はやらなくてもよいですが、葉が黄色くなるなどの状況では、1週間おきに液肥を施して様子を見ます。
種子まで収穫する場合は、間引きが終了してから20~30日おきに化成肥料を株当たり5~6g追肥して、軽く中耕し、肥料を混ぜ込みます。
鉢植え
種まき後、1カ月したら追肥をします。化成肥料を株当たり5~6g程度、株周りに施し、軽く土と混ぜ合わせます。その後は、状況を見て液肥で調整します。追肥の時、土が減っているようであれば、培養土を追加して土寄せをします。
病害虫
病害は、立ち枯れ病やうどん粉病に気を付けます。いずれも風通しをよくして、過湿に注意します。
虫害は、アブラムシ、ヨトウムシ、ハダニが付くことがあります。この場合も混み合わないように適正な間引きで風通しをよくして、虫を見つけたら早めに対処します。アブラムシやハダニは、虫の付き始めは葉ごと摘み取って持ち出しますが、発生が多い場合は、適正な農薬を適切に使用して防除します。発生が見込まれる場合は、防虫ネットなどを被覆して防虫対策をしておくとよいです。
収穫
パクチーは、葉や茎だけでなく根や種子まで利用できます。葉の収穫は、種まき後50~60日くらいで草丈が20cm以上になったら、外葉から順に株元から切り取るか、株ごと抜き取って収穫します。大株にした根の部分は香りも強く、刻んで炒め物にしたり、カレーに入れたり、鍋物に入れてもおいしいです。
種を収穫する場合は、秋まきで越冬させるか、3~4月まきで開花させます。葉の収穫はしない、または抽苔前に早めに切り上げるようにして、そのまま開花させます。さらに50日ほどすると種が実り、種の粒が茶色になったら株ごと刈り取ります。雨のあたらない場所で乾燥させ、種の殻をつぶさないように枝から落として保管します。
春まき・春植えの場合は、収穫できる程度に株ができると、間もなく花芽が付いてとう立ちするので、葉を摘み取るよりは株ごと順に抜き取って利用する方が効率よくおすすめです。もちろん、とう立ち後も蕾や花のついた柔らかい枝先を摘み取って、サラダや料理の付け合わせに利用するのもおすすめです。
葉や茎は刻んで冷凍すると1カ月程度保存ができます。種は、乾燥させれば1年程度は貯蔵可能で、葉も乾燥させて種と一緒にミルすればスパイスとして長く利用できます。
監修:福島剛