タネから広がる園芸ライフ / 園芸のプロが選んだ情報満載

連載

【第9回】渡る世間も土次第[その2] ~健康診断の数値をどう読むか~

【第9回】渡る世間も土次第[その2] ~健康診断の数値をどう読むか~

2019/08/27

前回は植物の栄養である要素の話と、それらを効率よく使うための土の状態であるpHと、特に成長に必要な窒素がきちんと含まれているかを知るためのEC(Electrical Conductivity)について、測定方法なども含め触れました。さらに酸性土壌がなぜいけないのかその生い立ちから迫りました。今回は測定したpHとECから、作物の栽培に適した土をつくるための方法に迫り、後半では肥料の種類について説明します。

測定したpHやECの数値で土の状態を知り、対策を考えよう

pHやECの数値は、専門家が調べる際は土を乾かしてから測定しますが、今回は生の土で測定します。大まかに状態を知るにはそれで十分ですし、何よりも測定に大掛かりな機材を必要とせず、短時間で数値が出ます。次の回で肥料の量を導き出しますが、その計算も楽です。

表1 pH、ECから考えられる土壌の状態と問題の原因と対策

分析値推測値原因と対策
pHEC(mS/cm)窒素塩基
低(5.5以下) 低(0.3以下) 雨水などでカルシウムやマグネシウムなどが流れ出ているので、石灰質資材を投入し、肥料は基準量を施す。
低(5.5以下) 高(1.3以上) 窒素肥料が過剰なので窒素肥料の施用を控え、水やりを多くして肥料成分を流すようにする。
高(7.0以上) 低(0.3以下) 石灰質資材過剰なので、硫安など硫酸系肥料を基準量施す。
高(7.0以上) 高(1.3以上) 肥料過多なので、無肥料や施肥量を大幅に削減する。
適正
(5.5~7.0)
適正
(0.5~1.0)
適正 適正

測定したpHやECの数値の組み合わせで土の状態を知ることができます(表1)。表に従って測定した数値に問題のあるときはその対策を検討します。特に日本ではpHが低い(酸性土)ことが問題になるので、それについて考えてみましょう。pHもECも低くなる場合は、その原因が雨水によるもので(前回の図8 雨水による土の酸性化)、カルシウムとマグネシウムなどのアルカリ性の養分のほか、窒素分も足りなくなっています。そこで、苦土石灰や貝化石などのアルカリ性の石灰質資材を土に入れ酸度を矯正し、肥料を施します。pHが高いあるいは適正でECが低い場合は、肥料のみを施します。

一方で、pHが低く、ECが高い場合は、窒素肥料の施し過ぎで窒素分の硝酸イオンなどが蓄積して酸性になっていることが考えられます。この場合は、窒素肥料を使うのをやめることが対策になります。ビニルハウスなどの施設栽培で雨水に長い間さらされないことによることが多いので、家庭菜園など雨水にさらされる栽培ではあまり気にしなくてよいでしょう。

低いpHを適正にするための方法

図1 石灰質資材(左:苦土石灰、右:貝化石)

pHを高めるための石灰質資材には、生石灰、消石灰、苦土石灰、炭酸カルシウム、貝化石などがあります。この中で生石灰が一番アルカリ性にする力が大きく、貝化石が一番小さくなります。

土の酸性化は前述した通り雨水によってカルシウムとマグネシウムなどが流されることによります。従って、その矯正にはカルシウムとマグネシウムを補うのが一番です。カルシウムは「石灰」とか、「カル」と称され、マグネシウムは「苦土」と呼んだりします。この中でカルシウムとマグネシウムの両方を含むのは苦土石灰と貝化石になります(図1)。これらなら2つの要素を同時に補給できるので便利です。苦土石灰ならば大体どこでも入手できるのでこれだけ持っていれば十分です。

図2 pHを1上げる場合の1m2当たりの苦土石灰の施用量

施す量は土の種類によっても異なりますが、一般的にはpHを1上げるには10cmの深さで10a当たり、苦土石灰ならば200kgを施します。10aといってもピンと来ないですよね。1㎡は10aの1000の1ですから、苦土石灰は200gを施すことになります(図2)。これは牛乳瓶1本程度の量です。ちなみに貝化石はアルカリ分が苦土石灰よりも少ないので、苦土石灰の1.2倍量を、逆に消石灰は0.75倍、生石灰は0.6倍量を施します(表2)。

表2 苦土石灰・炭酸カルシウムを200g施用する場合の主な石灰質資材の1m2当たりの施用量の目安

種類施用量の目安倍率
生石灰 120g 0.6倍
消石灰 150g 0.75倍
苦土石灰・炭酸カルシウム 200g 1倍
貝化石 240g 1.2倍

表3 土壌の種類ごとのpHを1上昇させるために必要な石灰質資材(苦土石灰)の施用量の目安(kg/10a)

(加藤ら、1996)
土壌の種類苦土石灰
黒ボク土 280~380
沖積土・洪積土 170~210
砂質土 90~140

苦土石灰の施用量は表3の通り正確には土壌の種類によって施用量が異なります。特に北海道南部、東北北部、関東、九州に多い黒ボク土は、比較的全国に分布し洪積土などを構成する褐色森林土よりも多くの石灰質資材を必要とするので、自分の住んでいるところの土壌の種類が何か知りたい場合は国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)のホームページの「日本土壌インベントリー」などで調べるとよいでしょう。土の種類がよく分からないとか、購入してきた培養土などでは平均的な表3の「沖積土・洪積土」の数値を使うとよいですが、ここでも前述した1㎡当たり苦土石灰約200gで問題ありません。

ECで窒素肥料の施肥量を決める

表4 施肥前の土壌EC値による大まかな元肥の窒素量

(加藤ら、1996)
土壌の種類土壌EC値(土壌:水=1:5)(mS/cm)
0.3以下0.4~0.70.8~1.21.3~1.51.5以上
黒ボク土 基準値 2/3 1/2 1/3 無施肥
沖積土・洪積土 基準値 2/3 1/3 無施肥 無施肥
砂質土 基準値 1/2 1/4 無施肥 無施肥

ECが低い場合は窒素質肥料を施します。その量は、ECの数値によって加減します。表4の通り土壌の種類によってこの量は微妙に違いますが、一般的には1.3以上のときは肥料分が十分あるので無施肥、0.8~1.2のときは通常施肥量の1/3程度、0.4~0.7のときは2/3程度、0.3以下では全量を施します。pHのところで触れた「日本土壌インベントリー」などで土質が分かる場合は、表3を頼りに元肥の施肥量を決めるとよいでしょう。分からなければ「沖積土・洪積土」の数値でOKです。

家庭菜園など露地で雨が直接当たるような栽培では、ECが1.3を超えて過剰になることはあまりないのですが、ビニルハウスなど、雨が当たらないような施設での栽培では、ECが1.3を超えてしまうことがあります。このような場合は、施肥しないのはもちろん、場合によってはソルゴーなどのイネ科作物を栽培し、青刈りして畑から持ち出すか、ビニルフィルムを外して雨にしばらく当てるような対策をします。

肥料の種類

図3 さまざまな肥料(上左から化成肥料、硫酸カリ(硫加)、過リン酸石灰、下左からIB化成、有機配合肥料)

化学肥料には、硫酸アンモニウム(硫安)などの窒素質肥料、過リン酸石灰(過石)などのリン酸質肥料、硫酸カリ(硫加)などのカリ質肥料などの成分ごとに単体のいわゆる単肥と呼ばれる肥料、それにこれらを混ぜ合わせた2つ以上の成分からなる複合肥料があります。化学肥料の多くは、窒素成分がすぐに溶け出し植物に吸収され、効果がすぐに表れる速効性のものが多いです。

複合肥料のうち粒状にするなど形を変えたり科学的操作を加えたものが化成肥料です。化成肥料は速効性のもののほか、IBやCDUなどの化学肥料は窒素成分の効き目がゆっくりとした緩効性と呼ばれる性質の肥料があります。

有機質肥料は植物や動物由来の資源を原料とした肥料で、動物質の魚かす、骨粉などと、植物質の油かす、米ぬかなどがあります。いずれも土の中で微生物の働きによって分解されてから植物に利用されるので、効き目がゆっくりで、緩効性よりもさらに効き目の遅い遅効性肥料とも呼ばれます。元肥として使うのが一般的です。有機質肥料は、生のまま土に入れると腐敗して根を傷めたり、植物が肥料成分を使えるようになるまでに時間がかかったりするので、種まきや苗の植え付けの2週間ぐらい前までに施しておくと安心です。

他に化学肥料と有機質肥料のいいとこどりしたものとして有機配合肥料などもあります。

図4 肥料袋に表示されている3つの数字

このように肥料にはいろいろな種類がありますが、窒素成分を施すためには、肥料の袋に書かれているこの3つの数字(図4)の一番左に0以外の数字のある肥料を使います。肥料袋の数字は、肥料に含まれている窒素‐リン酸‐カリの成分量を%で表しています。図4の袋の場合、肥料100g中に窒素‐リン酸‐カリがそれぞれ8gずつ含まれていることを意味しています。

堆肥を施すことで土はより健康に

堆肥は、落ち葉や稲わらなどの植物質、あるいは牛ふん、豚ぷん、鶏ふんなどの動物質の有機物が微生物によって分解したものをいいます。かつてはこの堆肥や未分解の有機質(例えば菜種や大豆の油かす)が肥料の中心でした。

しかし、化学肥料の登場でそれは一変します。肥料成分を管理しやすくなったことや、少量で効果が大きく、持ち運びや保管の面でもメリットが大きかったからです。成分がはっきりしているということも使う側の安心感につながりました。

しかし、近年はそれに頼り過ぎた問題も出てきました。化学肥料の場合、その成分の大部分は輸入に頼っています。特にリンやカリは鉱物資源なので価格は国際情勢に左右されますし、地球全体で見ると、成分が海外から一方的に持ち込まれるので国内の土壌が成分過剰になり環境への影響も出てきています。また、近年問題になっている食品残さや廃棄に窮している家畜のふん尿などを積極的に堆肥として活用し、肥料成分を国内で賄う循環型社会にしていこうという動きも活発です。

他にも堆肥は、土の中の微生物の活動を活発にし、多様な微生物の存在によって土壌病害を軽減する生物性、土の通気性や保水性などの強化といった物理性、有機物が微生物によってゆっくり分解されることによる微量要素の補給など化学性など多くのメリットが期待できます。このあたりの説明は第3回「まかぬ種(タネ)は生えず ~まずはまいてみよう~」の「植物にとって居心地のいい家とは」の項で詳しく説明しましたので読んでみてください。よく分解が進んだ堆肥ならば施してすぐに作物の種(タネ)をまいたり、苗を植えたりできるので重宝します。

次回は堆肥の施用量と窒素質肥料の節約術、それに実際の施肥量を求める計算方法についてです。お楽しみに。

参考文献

藤原俊六郎・安西徹郎・加藤哲郎:『土壌診断の方法と活用』農文協(1996)

JADMA

Copyright (C) SAKATA SEED CORPORATION All Rights Reserved.