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連載

【第1回】タネまきから始めましょう

文・写真

三橋理恵子

みつはし・りえこ

園芸研究家。一年草・多年草をタネから育てる研究をしている。著書に『三橋理恵子の基本からよーくわかるコンテナガーデン』(農文協)、『イラストで学ぶ、はじめてのガーデニング』(角川マガジンズ)などがある。


※タネのまきどきなどは神奈川県横浜市における栽培に基づいて記載しています。

【第1回】タネまきから始めましょう

2017/01/31

タネからなら、いろいろな草花を育てられます

タネをまくって、なんてすてきでしょう。長年タネから草花を育てていますが、今も変わらずそう思います。小さなタネが芽を出し、葉を広げ、花を咲かせる過程は驚きと喜びの連続。そしてどれ一つ同じドラマはありません。次の季節に向けて思いを巡らせるのも楽しいひとときです。

一年草主体のタネまきの一番の魅力は、毎年違う草花を育てられること。種類や色を変えれば、去年とは全く趣の違う花壇を作れます。それに草花を一から育てる楽しみもあります。若い苗はエネルギーに満ちていて、緑は美しく、完璧な姿をしています。その魅力に気付くと、苗育てはいっそう楽しくなります。

私が玄関先で草花の手入れをしていると、通り掛かりの人に時々花の名前を尋ねられます。私がタネから育てる草花は、園芸店で苗で販売されている草花と違って、あまりなじみのないものが多いからかもしれません。季節ごとに違う草花が植えられているのにも興味を引かれるようです。

タネまきがちっとも飽きないのは、そのバラエティーの豊富さ故でしょう。ほとんどの草花は、園芸的に品種改良が重ねられ、たくさんの品種が存在します。それぞれにすてきな品種名が付いていて、草丈も花色も大きさも、時に花形さえ変わります。

タネから育つ苗たち

タネまきは主に春と秋がメインです

園芸カタログが届くと、次はどんな草花を育てようかと、まずタネのページをめくります。ショッピングの充実感は、タネも同じ。タネを買うのは主に、夏まき用と秋まき用を買う6月と、冬まき用と春まき用を買う12月の年2回。カタログを見ながら、どんな草花をどこに植えるかを想像しながら、計画を立てます。

春まきの草花たち(1)ニコチアナ(2)羽毛ケイトウ(3)ルドベキア(4)ツンベルギア(5)ルコウソウ(6)クレオメ

よくやりがちなのが、思いにまかせて好きなだけタネを買い、育ててからどう植えようかと悩んでしまうこと。主役に合わせる草花がなくて困ることもあります。なので、ラフでいいので、タネを買うより先に、どんな草花をどこに植えて、どう合わせたいのか、イメージだけでも描いておくことをおすすめします。主役と脇役を決めたり、色を選んでおくだけでも庭づくりがやりやすくなります。特に脇役を充実させることで、花壇は数段まとまりがよくなります。

秋まきの草花たち(1)フロックス(2)シノグロッサム(3)ネモフィラ(4)カレンジュラ(5)紫キャベツ(6)クリムソンクローバー(7)シレネ(8)セファラフォラ

計画の立て方は、人それぞれ。何かを新しく始めようというときの、いつものやり方でいいのです。慣れるまでは念入りにやるといいと思います。専用のノートやカレンダーを利用すると便利です。計画しているうちに夢も膨らむので、タネまきが待ち遠しくなります。

ただし、初めてタネまきをしてみようという方は、インスピレーションで育ててみたい草花にチャレンジするといいと思います。私も初心者のころは次々にいろいろな草花を育て、栽培の知識を吸収しました。タネから草花を育てることは、草花の性質を知り、栽培上手になる近道です。
もちろんそれには、園芸書などを読み、前提となる知識を学ぶことも大切です。水や肥料だけでなく土の条件、気温、日長など、草花によっても好みが違います。学んだ知識を生かしながら、日々草花を見守り育てます。園芸店に並ぶ苗のようにうまく育ったときは、とても充実感があります。

日当たりの良い育苗場所を確保しましょう

最後に大切なことを一つ。タネから育てるには、苗を育てる場所が必要です。私がタネまきを始めたのは、実家にいたころのこと。実家には広くて日当たりのよいベランダがあり、そこでいくらでも苗を育てられました。今のベランダは猫の額ほどの小ささですが、なんとか場所をやりくりして苗育てをしています。
ということは、育苗の環境によって、また植える場所の広さによっても、タネをまく量、育てる本数の調整が必要です。それでも育てたい草花がたくさんあれば、年に1回のチャンスなのでまいてみたくなります。そんなときは、まくタネの数を少量にすれば、よりたくさんの種類をまけます。
万が一、たくさん芽が出たときは、潔く間引くことも大切。そうしないと後になって、植える場所のない苗を前にどうしようかと困ったり、老化して駄目になった苗と向き合わなくてはいけなくなります。ただし、苗をガーデニング友達などにお嫁に出せるなら話は別。タネまきの喜びを他の人にもお裾分けできます。

イラスト:阿部真由美

次回は「いろいろなタネ」を取り上げる予定です。お楽しみに。

JADMA

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