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連載

【第24回・最終回】花が咲いてからの管理もしっかりしましょう

文・写真

三橋理恵子

みつはし・りえこ

園芸研究家。一年草・多年草をタネから育てる研究をしている。著書に『三橋理恵子の基本からよーくわかるコンテナガーデン』(農文協)、『イラストで学ぶ、はじめてのガーデニング』(角川マガジンズ)などがある。


※タネのまきどきなどは神奈川県横浜市における栽培に基づいて記載しています。

【第24回・最終回】花が咲いてからの管理もしっかりしましょう

2018/12/04

イラスト:阿部真由美

花壇やコンテナでにぎやかに花咲かせましょう

定植した苗がすくすく育ち花が咲いてくれば、花壇の全体像も見えてきます。草花の組み合わせはどうだったか? 株間はちょうどいいか? 全体の花色のハーモニーはどうか? などなど。もちろんここには別の種類を植えた方がよかったとか、草丈のバランスがいまいちだとか、いろいろ反省点も思い浮かびます。でもそれは来年からの糧として、今年の草花たちを開花期の最後まで世話しながら楽しみましょう。

タネをまいて苗を育て植えた草花たちが、どんなふうに育って咲いていくか。ここからがもう一つの草花育ての醍醐味(だいごみ)です。咲いてからもどんどん茎葉が広がり、姿はどんどん変わっていきます。最初、土の空間が多かった花壇も、みるみるうちに茎葉で緑に覆われていきます。株が育つにつれて、花もたくさん咲きます。草花たちの成長は早く、変化はダイナミックです。

それだけに花壇やコンテナの草花は、野草とは違っていろいろな世話も必要です。手入れの時間は、草花との触れ合いを楽しむ大切なとき。手を掛ければそれだけ草花たちもそれに応えて、きれいな花をたくさん咲かせてくれます。日常の世話は水やり、肥料やり、花がら摘み、病害虫防除など。併せて庭をほうきで掃いたり、掃除も欠かせません。

水やりは基本ではありますが、「水やり三年」という言葉もある通り、案外難しいものです。コンテナであっても毎日定期的に与え続けるのではなく、表土が白っぽく乾いてから与えます。花を咲かせるステージになれば株は成熟しているので、より乾き気味に管理する方が、株のしまりもよくよい花が咲きます。また草花はより乾き気味に育てているとそれに慣れます。いつもどしどし水を与えていると、ちょっとした乾きにも耐えられなくなって、いざというときに枯れやすくなります。

水を与え過ぎる弊害は草姿に現れます、茎葉は軟弱に育って徒長し、草姿が乱れます。特に乾き気味を好む草花では、根腐れを起こすことも。たっぷりと与えたら、その後は乾き気味にして、次の水やりのタイミングを待ちます。もちろん草花によって、水の要求度も違います。アリッサムのように、乾いてもしおれにくい乾燥に強い草花もあれば、ネモフィラのように水がなくなるとぐったりしおれるものもあります。

また、土の容量の限られたコンテナと、地下からの水分の供給も期待できる花壇では、水やりの間隔もまったく違います。個々によく見極めて、与えるタイミングを計ることが大切ですが、ここは経験値がものをいう部分です。よく観察して、水やりが必要なタイミングを見極めます。

季節ごとの水やりですが、春から秋の成長期は、草花はたくさんの水を根から吸い上げます。それぞれの水の要求度に合わせて水を与えます。夏は乾きが早いので、しおれ具合などを見て水やりのタイミングを計ります。ただし、夏の熱帯草花はよく伸びるので、与え過ぎると伸び過ぎを招きます。冬に乾きにくいのは、生育がごく緩やかか停止しているため。夜間冷え込む時間帯に土が湿っていると、根を傷めやすいので、午前中の水やりが基本です。

咲いてからもしっかりお手入れして、最後まできれいに咲かせましょう

肥料をしっかり与えれば、草花の花付きにもぐんと差が出ます

肥料やりは草花の花付きを左右する重要項目です。特に開花後肥料やりの効果が高いのは、ペチュニアなど花が大きく開花期の長い草花を、次々たくさん咲かせたいときです。小粒の固形タイプの肥料は、元肥として使えるものが多いですが、追肥兼用のタイプもあります。大粒の固形のタイプは、置き肥として追肥に使います。液肥(液体肥料)はそのまま与えられるものもありますが、通常水で希釈して使います。

肥料は商品によって成分がまちまちで、効能も違います。特に商品によって効く期間に差があります。商品の説明に合わせて肥料を与える間隔を決めます。園芸カレンダーなどを利用して与えた日などを記入しておくと、より確実に管理できます。液肥や化成肥料などは速効性がありますが、特にコンテナ栽培では水やりで流されてしまいやすい肥料です。液肥の場合は、週1回くらいを目安にして、週末や週の初めなどと決めておくと、間違いがありません。とはいえ、肥料の成分は窒素、リン酸、カリの基本の三要素をはじめ、各種微量要素です。肥効を期待するなら、いつも肥料が薄く効いている状態を保つことを意識しましょう。

とはいえ、肥料分のうち窒素肥料は、茎葉を大きく育てます。与えるとその分伸びるので、伸び過ぎを招くこともあります。特に高性種は草丈が伸び過ぎると乱れてしまいます。与え過ぎも害が出ることをお忘れなく。

もちろん肥料を与えるのは、株が健全に生育しているときです。根腐れなどで株が弱っているときや、生育不良になっているときは、与えると逆効果になります。乾燥し過ぎて葉がしおれているときも、与えない方がいいでしょう。植物は人間のように「いらない」と肥料を拒否できません。私たちが状態をよく見て判断します。

このほか、花が咲いた後の日々の手入れで一番大切なのが、花がら摘み。きれいに花がらを摘むと美しさに差が出るだけでなく、株も長く維持できます。併せて株元の黄色くなった葉なども取り除きましょう。花がら摘みは、草花と直接触れ合う大切な時間です。株をいつまでも美しく維持するためにも、次々長く咲かせるためにも、大切な日々の作業です。しばらく放置して花がらだらけになった株を手入れするのは時間がかかって大変です。日々少しずつでもやる方が断然楽です。

(1) パンジーやビオラの花がらは手で折り取ります(2)茎の硬いものはハサミで花梗の付け根から丁寧に切ります。写真はイングリッシュデージー(3) センニチコウは節の下から芽が出ているところから切って次の花芽を促します(4)穂状に咲くタイプは花がらの部分だけ摘むといつもきれいに保てます(5)小花を咲かせるものも、全体が終わったら花梗ごと切ります

さらに気を付けたいのは、病害虫の被害です。草花の種類によって出やすい被害は違います。よく出るのは、春から初秋。害虫では、新芽の先などにアブラムシが付きやすい種類があるので、日々よく見ていることが大切です。このほか、葉を食べるアオムシや葉に模様を描くエカキムシなどの被害も多いです。葉が傷むと見栄えを損なうので、よく監視します。被害にあってから退治するより、出る前に予防する方がいいでしょう。「花き類」に適用のあるスプレータイプの薬剤を1~2週間に一度散布していると安心です。

病気も種類はいろいろですが、高温多湿の時期にうどんこ病が出やすくなります。これもヒマワリやジニアなど、病気が発生しやすい草花があります。一度出ると被害が広がりやすいので、出たばかりのころに被害部分を取り除いて、広がらないように薬剤散布します。病気も発生してから処置しても手遅れのことが多く、予防する方が簡単です。スプレータイプの薬剤は病害虫全般に広く効くものが多いので予防散布します。栽培面積が広いようなら、希釈タイプの薬剤を1回ごとに混ぜて薬液を作ります。

うどんこ病に侵されたジニア。次々広がるので、処分します

育っていく株の手入れをしっかりして、最後まで花壇を美しく

開花後、茎葉が茂ってきたら、たくさんの草花を植え込んでいる花壇では、手入れの強化段階に入ります。春の草花は株の頂点にたくさんの花を付けるタイプが多く、これらは花の咲いた高さでだいたい落ち着きます。その代わり株張りが大きく、横に茎を伸ばすので、広がって乱れやすいのが特徴です。反対に夏の草花は、花を咲かせたらその数節下に芽を付け、そこから花芽を伸ばすものが多いです。つまり、咲きながら草丈は伸びていきます。春の草花は横方向に、夏の草花は縦方向に伸びやすいです。

株が混み合ってきてから、定植する株間が狭過ぎたと気が付くこともあります。タネから育てると苗がたくさんできるため、どうしてもたくさん植えがち。蒸れは病気などを招くので、1株の茂り具合をコントロールして対処します。切り戻したり茎をすいたりして、いつも花壇が適正になるように管理します。放置して花壇が乱れてしまってから修正するのは難しいので、思い切りよく整理します。夏に伸び過ぎた草花は、一度低い位置でよい芽の伸びそうな節のすぐ上で切り戻しをするのも手です。こうするとまた低い位置から茎が伸びて草丈も低くなり、秋花壇でのバランスがよくなります。

草花の伸びる高性種では、伸びるに従って支柱を立てて誘引します。放っておくと風雨で倒れて見栄えを損ねます。セントーレア(矢車菊)やナデシコのように茎がたくさん立って草丈の伸びるものは、茎1本ごとに支柱を立てられません。主茎を支柱でしっかり垂直に支えてから、麻ひもなどでぐるりと囲っておきます。

根が浅く張る草花では長く咲かせているうちに、表土に根が露出することもあります。乾燥を招くので、堆肥などを盛っておきます。またコンテナ栽培ではだんだん表土が固く締まって、水を与えてもすぐに染み込まなくなることもあります。根を傷めない程度に軽く、株間をフォークや細い棒で中耕します。そのあと堆肥を敷いておきます。

花壇やコンテナでは早春咲きのものなど、早めに終える草花も出てきます。これらを早めに処分すれば、新たに苗を補植しておきます。このひと手間で、長くきれいな花壇を保てます。

また、草花の楽しみ方は、庭だけではありません。切り花用の高性種の草花に限らず、わい性種でも切り花にして部屋に飾れます。たいてい次に咲く蕾がすぐ下から出ていることが多いので、花茎の部分だけ短く切ります。ジャムやヨーグルトの小さな瓶など、小型のものが活躍します。室内ではじっくり見られるので、草花の新しい魅力を発見できます。また、いろいろ草花を組み合わせていると、次の花壇でこれとこれを合わせてみたいなど、アイデアも湧いてきます。

夏の花は花持ちがいいものが多く、切り花にも最適。短く切ったものでも小さなビンに飾れます

草花を最後まできれいに咲かせる一番のコツは、日々様子を見て、どんな手入れが必要か小まめに対応することです。もちろん毎日庭に立てないこともありますし、そう完璧にはできませんが、なるべく意識の隅におくことです。日々の生活のリズムに草花の世話が入れば、うまく回っていきます。

ほぼ花が終われば、片付けどきを見極めます。いろいろな草花があれば、同時に終わることはないので、順に片付けます。タネも採れますが、最近の園芸種はF1種が多く、まいて育てても同じものが咲きません。コンテナなど早いものから片付けると、また次の準備ができます。

片付けが終われば土を耕して堆肥を入れ、次の季節の草花を植える準備をします。土の準備と苗育てのサイクルがうまく合うようにしたいものです。とはいえ、その年の気温などにも左右されるので、草花の生育はなかなか読めません。うまくやるコツは、適期が来たからと急いで全てのタネをまかないこと。ゆったり構えてのんびり作業できるくらいのペースで、タネからの草花育てを楽しめれば一番です。

タネから育てる草花について、24回にわたって書きましたが、これで最終回です。皆さまのタネまきガーデニングライフに、少しでもお役に立てればうれしいです。長くご愛読いただきありがとうございました。

JADMA

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