タネから広がる園芸ライフ / 園芸のプロが選んだ情報満載

連載

【第3回】野菜作りのための元肥の基本

吉田健一     (株)ハイポネックス ジャパン

よしだ・けんいち

(株)ハイポネックス ジャパンに入社し、植物栽培試験を通して「実践型、土と肥料の基礎知識」を学ぶ。現在はNHK趣味の園芸やグリーンアドバイザー認定講師としても活躍。自宅でも園芸を楽しむサラリーマン園芸家。

【第3回】野菜作りのための元肥の基本

2019/02/19

野菜をプランターで育てるときの施肥のポイントは、スバリ!「肥料の与え過ぎは厳禁」。人に例えると、腹八分目です。2~3月は、野菜作りには欠かせない肥料についてお話しします。

元肥と追肥の違い

植物に与える肥料を大別すると、植え付け前に土に混合する肥料を「元肥(もとごえ)」、生育途中で与える「追肥(ついひ)」があります。元肥は根の初期生育を促進し、追肥は株を健全に育て、おいしい野菜を収穫するために不可欠です。

根の生育を促進しようと思い元肥を与え過ぎると、土の中の肥料成分が多くなり過ぎて根の生育が抑えられたり、遅れたりします。初期から株の生育が旺盛だと、根量が少ない、株だけが大きくなる、暑さ、過湿などに弱い、病害虫に侵されやすくなるなどの症状が起こります。最終的には、収穫量も少なくなってしまいます。このように、初期に大きくなりすぎて株が弱々しくなることを「つるぼけ」といいます。また、反対に元肥が少な過ぎると根の張りが悪くなり、初期生育が劣ります。

菜園と比較すると土の少ないプランター栽培では、土が乾きやすいため水やりの回数が自然と多くなり、土の保肥性を高くしても肥料成分が流されやすいのです。追肥は一度に与えずに、生育の途中に何度かに分けて与えることがポイントです。野菜は元肥だけで育てて収穫することは難しく、うまく追肥と使い分けるようにしましょう。

今月は元肥を、来月は追肥を中心に説明します。

元肥について学ぼう

よくある質問:元肥にはどのような肥料成分が適しているの?

肥料成分には、葉肥(はごえ)と呼ばれる窒素(N)、実肥(みごえ)と呼ばれるリン酸(P)、根肥(ねごえ)と呼ばれるカリ(K)があり、「肥料の三要素」といわれています。肥料の箱や袋などに記載されているN-P-Kの表示は世界共通でこの順に並んでいます。

数値は重量割合(%)を示しています。例えば、8-10-6の粒状の肥料50gを土に施した場合、窒素(N)は4g(50g×0.08)、リン酸(P)が5g(50g×0.1)、カリ(K)が3g(50g×0.06)を与えたことになります。肥料の種類にもよりますが、プランター栽培では土10L当たり窒素3~5gが目安になります。各成分の効果は下の表に示す通りですが、施肥のポイントは肥料の三要素を植物に合わせてバランスよく与えることです。

肥料の三要素のほかに、株を丈夫に育てるカルシウム(Ca)、葉の色をよくするマグネシウム(Mg)、硫黄(S)を肥料の「中量要素」といいます。鉄、マンガン、ホウ素などは「微量要素」といいます。カルシウム不足は「トマトの尻腐れ」や「キャベツの芯腐れ」などの原因になります。

窒素(N) 葉肥

肥料効果
  • ・株の生育を旺盛にする
  • ・葉や茎の生育を促進する
  • ・葉色を濃くする
  • ・葉菜類に適している
不足したときの症状
  • ・株が大きくならない
  • ・葉が小さくなる
  • ・葉色が薄くなる

リン酸(P) 実肥

肥料効果
  • ・開花を促進する
  • ・花、実付きをよくする
  • ・根の伸張を促進する
  • ・果菜類に適している
不足したときの症状
  • ・花が咲きにくくなる
  • ・実付きが悪くなる
  • ・根の張りが悪くなる

カリ(K) 根肥

肥料効果
  • ・茎、根を丈夫にする
  • ・暑さ、寒さに対する抵抗性が増す
  • ・病虫害に対する抵抗性が増す
  • ・根菜類に適している
不足したときの症状
  • ・葉や茎が柔らかく、株が弱くなる
  • ・暑さ、寒さに対して弱くなる
  • ・病虫害の被害を受けやすくなる

 

元肥に限らず生育に合わせた肥料の成分のバランスが大切です。下の表はN-P-Kの成分のバランスを示しています。元肥には根の伸長を促進するリン酸が多い山型や水平型が適しています。また、土の中でリン酸は移動性がほとんどないため、元肥として事前に土の中に混合しておくとリン酸が均一に混ざり効果的です。前回お話ししたカルシウム、マグネシウムも土の中の移動性が悪いため、苦土石灰を植え付ける前に均一に混合しておきます(苦土はマグネシウム、石灰はカルシウムのことです)。

肥料成分の5タイプ

よくある質問:元肥にはどのような効き方をする肥料が適しているの?

元肥には粒状の肥料が多く使われます。すぐに溶け出さずにゆっくりと長く効く緩効性または遅効性肥料が適しています。効き方には下の表に示すように3タイプがあります。粒状肥料の場合、粒のサイズにより肥効の持続期間が異なり、一般に粒が大きいほど長く効き続けます。

種類 効き方
緩効性かんこうせい
肥料ひりょう
施肥後からゆっくりと効き始め、1カ月以上効き続ける肥料。なかには半年以上効き続けるものも。粒状、固形、錠剤タイプなどがあります
遅効性ちこうせい
肥料ひりょう
施肥後、土中の微生物の働きにより根から吸収されやすい成分に分解された後に効果が表れる肥料。効き始めが遅く、1~2カ月間効きます。有機質肥料などがあります
速効性そっこうせい
肥料ひりょう
施肥後すぐに根から吸収される水溶性の肥料で、肥効期間は短く1~2週間です。水に溶かして与える液体肥料が代表的です。そのほかにも、尿素、硫安、過リン酸石灰などがあります

よくある質問:化学(化成)肥料と有機質肥料はどのように違うの?

化学(化成)肥料は空気(窒素ガス)や鉱物などの自然界のものを原料に化学処理をしたものです。肥料成分の量が多く一般には速効性ですが、原料が土の中でゆっくり溶けるタイプや、水溶性成分を樹脂などでコーティングした緩効性肥料もあります。効きむらのないことが特長ですが、与え過ぎは濃度障害を起こすことがあります。

有機質肥料は原料が魚かすや油かすなどの動植物に由来し、与えると土の中の微生物などによって分解され、化学(化成)肥料と同様に窒素、リン酸、カリなどの無機成分として根から吸収されます。そのため、効果が表れるのはゆっくりです。そのほかの効果としては、アミノ酸などの成分が含まれているので、野菜の食味や色がよくなるといわれています。一部は腐植質となり、土の団粒化を促進します。ただ、未熟な有機質肥料は発酵による熱やガスを発生し、生育に害を与えることもあるので注意します。

実際の施用には、それぞれのよい特長を生かします。一例として、元肥には有機質肥料や有機質肥料と化学(化成)肥料を混合した配合肥料などを、追肥にはすぐに効く化学(化成)肥料を使うようにします。

よくある質問:土によって元肥の効き方は変わるの?

元肥として同じ肥料を同じ量与えても効き方は異なります。通気性、排水性が悪いと土の中の空気(酸素)が不足し、溶け出した肥料成分が根から吸いにくくなり、乾きやすい土より肥料の効果が悪くなります。また、育て方によっても効き方は変わります。土の表面が乾いてくるのを待たずに水を与え続けていると、通気性、排水性のよい土でも肥料の効きが悪くなります。

よくある質問:どうして元肥は土全体に混ぜ込むの?

土に元肥を混ぜる方法には、一般に菜園では土全体に混ぜ込む「全層施肥」と畝の中央部分に穴を掘り、根の下の土に元肥を混ぜ込んだ後、根が直接肥料に触れないように土を入れ、その上に苗を植える「植え穴施肥(溝施肥)」などがあります。

プランター栽培の場合は、全層施肥が土に均一になじみ、効果が早く表れ、生育ムラも少なく育ちます。植え穴施肥と同様に、プランターでも土と土の間に元肥をサンドイッチしてその上に苗を植える方法もあります。効率のいいように思いますが、プランターの深さは菜園に比べると浅く、根の伸張とともに早くから直接肥料に触れやすいため、根の弱い植物には向きません。プランター栽培には全層施肥が適していると私は考えています。

よくある質問:土に元肥を多く入れ過ぎたときは、どうすればいいの?

土に元肥を多く入れすぎた場合、保肥性の高い赤玉土(小粒)と水はけのよい腐葉土を同量混合したものを全体の2割程度混ぜます(入れた元肥の量にもよる)。植え付け2~3日後に気付いた場合は、根鉢を崩さないように苗を掘り起こし、先ほどの混合土を足して再度植え付け直します。

よくある質問:肥料を土に混ぜた後、すぐに野菜苗を植え付けることができるの?

1~2週間前に腐葉土などの有機物や石灰類を混ぜ込んである土に、リン酸の多い緩効性の粒状肥料を混ぜて、すぐに植え付けてもほとんど問題はありません。注意したいことは、1~2週間ほど前に元肥を混ぜ込み、雨などでジメジメした状態では植え付けないようにしてください。植え付ける前に肥料成分が溶け出て、植え付け直後に根を傷めることがあります。この場合は、一度土を乾かし、先ほどの赤玉土(小粒)と腐葉土の混合土を全体の1割程度混ぜた後、植え付けます。
※土は植え付け前に雨に当たらないようにします。

よくある質問:元肥を入れ忘れたらどうすればいいの?

植え付けた後に元肥を入れ忘れたことに気が付いたときは、土の表面に肥料を混ぜ込むことをおすすめします。プランターや鉢の縁に幅5㎝程度、深さ5~7cmくらいまで元肥を均一に混ぜ込みます。このときの与える量は、窒素の成分量により異なりますが、窒素が10%以下であれば、1株当たり8~10g程度が目安になります。その後たっぷり水を与えます。苗を掘り起こして、もう一度植え替える方法もありますが、掘り起こすときに根を傷つけることがあるのでやめた方がいいでしょう。

今月のまとめ

プランター栽培では、植え付けから1カ月間は根の生育を大切にしましょう。リン酸が多くゆっくり効く緩効性肥料を元肥として土に混ぜ込むのがおすすめです。

次回は「野菜作りのための追肥の基本」です。お楽しみに。

JADMA

Copyright (C) SAKATA SEED CORPORATION All Rights Reserved.