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【第6回】失敗の少ないプランター選びと植え付け方法

吉田健一     (株)ハイポネックス ジャパン

よしだ・けんいち

(株)ハイポネックス ジャパンに入社し、植物栽培試験を通して「実践型、土と肥料の基礎知識」を学ぶ。現在はNHK趣味の園芸やグリーンアドバイザー認定講師としても活躍。自宅でも園芸を楽しむサラリーマン園芸家。

【第6回】失敗の少ないプランター選びと植え付け方法

2019/05/21

いよいよ「土と根がカギ! 吉田流 プランター菜園」の最終回です。乾きやすい土づくり、腹八分目の元肥、プランター内の肥料成分の流亡や変動を少なくする追肥の方法などプランター菜園で知っておきたい基本をお話ししてきました。今回は実際の植え付けです。植え付けの基本は、「野菜の種類に合ったプランターの選択」「土の乾き方を左右するウオータースペースの確保」の2点です。さあ、失敗を少なくする植え付けにチャレンジしましょう。

野菜の種類に合ったプランターを選ぼう

よくある質問:プランター菜園の長所ってなに?

プランター菜園の長所は、日当たりのよい場所にプランターを移動できることです。野菜作りは株全体に日光が当たることが基本です。特に生育初期は株元に日光が当たることが重要です。プランター植えの場合は、時々回して全体に日光が当たるようにするとある程度徒長(節間が延び、弱々しく伸びること)を防ぐことができます。プランターに何株か植えて栽培すると、成長が進むにつれて株同士が触れ合い通気性が悪くなり徒長しやすくなります。1株植え場合は、株の成長に合わせてプランターを移動して株間を広げることができるので、通気性が保たれ徒長を防ぎ、病害虫にかかりにくくなるのでおすすめです。

プランター栽培で大切なことは、鉢の底部に肥料や水が停滞することを防ぐことです。もちろん通気性、排水性のよい培養土の使用は必須ですが、レンガなどをプランターの下の敷き、コンクリートや土の上に直接置かないようにします。プランターの下の通気性をよくすると、底部の土も乾きやすくなり生育がよくなります。

よくある質問:プランターは大きければ大きいほど野菜がよく育つの?

野菜に限らず植物全般にいえることですが、鉢やプランターなどに植え付けるとき、大きな容器に植えると、土がなかなか乾かず、根の張りも悪く、生育が遅延して健全に育ちにくくなります。また、草丈の低い植物は、深い鉢に植えると根が十分に底部まで張り切らずに、停滞水がたまりやすく根腐れの原因になります。株が大きくなる果菜類を除いて、あまり大きな鉢は選ばないようにします。

あまりおすすめはできませんが、ベランダなどの狭い場所で栽培する場合は、株をやや小さく育てる方法として、ややプランターを小さくし株を小さく育てる方法があります。この場合、土が乾きやすく肥料成分の流亡が起きやすいためこまめな管理は必要ですが、一度試していただいてもよいと思います。下葉が黄化していないかを確認するようにしてください。

よくある質問:プランターの素材によって生育も違うの?

プランターの素材と特性

  プランターの素材ごとの特性
プラスチック製 比較的軽量で移動に適しているが、厚みが薄いと夏場は直射日光で地温が上がりやすいです。冬は凍結に注意が必要。
素焼き・テラコッタ製 多孔質で側面からの通気性に優れます。土が乾きやすく直射日光を遮断し土の温度変化が少ないですが、重たくて移動に適していません。
木製 適度に水分を含むため、プランター内の急激な水分変化、肥料の変動が比較的緩やかですが、腐りやすいという欠点があります。

プランターの素材によって、生育が違ってくるので特性を十分理解して使用してください。

よくある質問:プランターの底穴にはいろんな種類があるけれど、どれがいいの?

最近の野菜専用のプランターは、底部の土の過湿を防止するように作られています。底穴が地面やコンクリートに直接触れて、水はけが悪くならないように鉢底を上げたタイプが多く出回っています。また、鉢の側面に線状の穴のあいたスリット鉢も根腐れ防止にはおすすめです。野菜作りにはどちらも適していると思います。

よくある質問:野菜の種類によってプランターの形や深さ、大きさが違うの?

プランターのサイズと野菜の種類

トマトやナスのように、生育スピードも速く、草丈も伸び、株のボリュームがある野菜は、土の量が15~20Lは必要ですが、草丈の低いコマツナ、ミズナ、ホウレンソウなどの葉菜類やイチゴなどは、草丈も低く根の伸長も深くないため、鉢の深さは浅く、やや土の容量が少ないプランターを用意します。

よくある質問:底面給水のプランターは普通のプランターと栽培方法が違うの?

シクラメンの鉢にあるような底部に水槽のついた野菜専用の鉢やプランターが販売されています。底面の水槽に水をため、毛細管現象で水を吸い上げ、根から吸水するシステムです。通常のプランターと比較すると、水持ちがよく水やりの回数も減らすことができ、真夏の土の乾燥が激しいときに効果的です。また、肥料分の流亡も少ない特徴があります。

使用する培養土は、あまり土の粒子が粗いと底部の水槽から毛細管現象で水を吸い上げにくいため、通常の培養土と異なり均一な粒度の細かさが必要なため、通常の培養土に2割程度石灰で酸度を調整したピートモスを混合して使用します。このときピートモスの増量で土の量は増えますが、元肥の追加はしません。追肥は一般のプランター同様の間隔で与えますが、1回の施用量を2割程度少なく与えます。そして3~4週間に1回、上部から水を与えプランター内に集積した古い水分や肥料分などを流し、新鮮な水を水槽に入れるようにします。

非常に便利な底面給水のプランターですが、注意することがあります。苗を植え付けてプランター内に十分に根が張り、土がよく乾くようになり始めてから底面の水槽に水をためるようにします。植え付け直後から底面給水にすると、根が十分に張らずに、絶えず土に停滞水がたまり、酸素欠乏になりやすくなります。株が徒長し、ひどいときは根腐れを起こすことも。下からの給水を開始する目安は、土がよく乾き始める植え付け1カ月~1カ月半後です。

よくある質問:最近はやっている袋を使った栽培方法を教えてください

最近では土の袋をプランターの代用品として栽培されるケースが増えてきました。使用する袋は、大きさは15~20Lほどで、丈夫で破れにくい培養土や単用土の袋が適しています。できれば、透明な袋は避け、光が透過しにくい着色された袋がおすすめです。

栽培方法は、袋を空にして底面に直径1cm程度の穴を6~8カ所開け、さらに過湿になることを防ぐために、底部から10cm上の側面にも同様のサイズの穴を6カ所開けます。植え付けるときは、側面の穴の位置まで鉢底石を必ず敷きます。そして、底部にレンガなどを敷いて、コンクリートや土の上に直接置かないようにします。

袋の厚みが薄く土の温度が上がりやすいため、過湿にならないように水はけをよくする軽石などを1割程度培養土に混合します。また、袋に直射日光が当たるようだったら板などを前に置いて日よけにします。

植え付けるときに注意すること

よくある質問:よい苗と悪い苗の見分け方はどうすればいいの?

苗半作といわれるように、よい苗を植えると手間も少なく、豊かな収穫が期待できます。以下のポイントに気を付けて苗を選びましょう。
①1cm程度のウオータースペースがある苗
②ポリ鉢の底から根は見えているが出てはいない(ポリ鉢内は十分に根が張っている)
③下葉が黄化していない
④双葉が残っている
⑤徒長していない
⑥全体の葉色が濃い
⑦病害虫にかかっていない
⑧トマト、ナス、ピーマンなどのナス科の果菜類は1番花が咲いている、あるいは蕾がある

よくある質問:鉢底に敷く鉢底石は入れた方がいいの?

大きな鉢に植え付けると根がプランターの底に達して十分に張るまでは、ある程度日数がかかります。停滞水を少なくし、通気性、排水性を良好にするためには鉢底石は不可欠です。深さ30cm程度のプランターの場合では5cm程度必要です。鉢底石の粒子サイズは、あまり大きいと隙間が大きくなり、鉢底にみじんがたまりやすくなるため、軽石の中粒または小粒を使用します。

よくある質問:根をほぐして植え付けた方がいいの?

根を切り、土を落として植え付ける必要はありません。むしろ根を切ったりすると根を傷めて腐る原因になるので、そっと植えるようにしましょう。

よくある質問:土の乾きをよくするウオータースペースはどの程度が目安?

一般にウオータースペースが大きいと表面部分が風に当たりにくく、土が乾きにくくなり、根張りが悪くなるため、深さ30cmのプランターでは3~5cmが目安です。それ以上は大きくならないようにします。プランターの場合でも、土を乾きやすくするために、菜園と同じように畝を立てるように中央部分を盛り上げてかまぼこの形状にして植え付けます。

まとめ

土と根に注目した野菜作りを全6回連載してきましたが、全編を通じて私が伝えたいのはただ一つです。それはズバリ!「乾きやすい土づくりが失敗を少なくする」です。プランター菜園をするときは、このキーワードを忘れずにチャレンジしてみてください。きっと前回よりもうまく育てられるはずです。サラリーマン園芸家の私の経験から得た知識が少しでも皆さんの野菜作りに役立てば幸いです。

JADMA

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