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【第2回】苗が枯れる、生育が悪い、成長点が食べられる

望田明利

もちだあきとし

千葉大学園芸学部卒。住友化学園芸研究開発部長として、家庭園芸薬品や肥料の開発普及に従事。現在は園芸文化協会理事、家庭園芸グリーンアドバイザー認定講習会講師などとして活躍中。各種園芸雑誌等に病害虫関係の執筆多数。自らも家庭菜園で多品目の野菜を栽培している。

【第2回】苗が枯れる、生育が悪い、成長点が食べられる

2020/01/21

「お!芽が出てきた」と喜んでいたら、いつのまにかなくなったり、枯れてしまったことはありませんか? 植えたばかりの苗が倒れたり食べられたりして、がっかりしたことはありませんか? 前回に続いて、初期段階に多いトラブルをご紹介します。

【目次】
被害1. 苗が倒れて枯れる、株元の茎が茶色に変色している
 ●犯人:苗立枯病
   苗立枯病の特徴
   苗立枯病の防除方法
   [ちょっと雑学]苗立枯病と立枯病

被害2. 順調に生育していた苗の生育が悪くなり枯れてしまう
 ●犯人:タネバエ
   タネバエの生態
   タネバエの防除方法
   [ちょっと雑学]ネギ、タマネギの種をまく人は注意!

被害3. 苗の芽の部分(成長点)が食べられている
 ●犯人:ハイマダラノメイガ(通称 ダイコンシンクイムシ)
   ハイマダラノメイガの生態
   ハイマダラノメイガの防除方法
   [ちょっと雑学]上手なトンネルの作り方

被害1. 苗が倒れて枯れる、株元の茎が茶色に変色している

犯人:苗立枯病

苗立枯病という病気の被害です。ナス、トマト、キュウリ、キャベツなどほとんどの野菜の苗が被害を受けます。

苗立枯病によって変色してしまった茎

苗立枯病の特徴

幼苗期に発生し、順調に生育していた苗が急にしおれて枯れてしまいます。枯れた苗をよく観察すると地面に接した部分の茎がくびれて褐色に変色しています。糸状菌(カビ)によって起きるものです。糸状菌は、被害植物とともに土の中で生存して土壌伝染します。未熟な堆肥を使用したり、多湿で苗が軟弱だとこの病気の被害を受けやすくなります。

苗立枯病の防除方法

ナス、トマトといった実のなる野菜の苗を植えたり、種をまいて自分で育てるときは、畑の土を使用しないで、購入した新しい土を使用してポットなどで育てましょう。土の中に病原菌が生存して苗を枯らす病気ですので、土を消毒する薬剤を使用しますが、家庭で手軽に使用できる薬剤はありません。感染して発病すると助かりませんので、前作で被害を受けた場所に苗を植える場合は、葉が2~3枚出てきたころに、苗だけでなく周辺の土にも「オーソサイド(R) 水和剤」を散布して予防してください。

[ちょっと雑学]苗立枯病と立枯病

幼苗時に発病すると「苗立枯病」、生育期に発病すると「立枯病」と呼んでいます。単独の病原菌によって起きるのではなく、リゾクトニア菌、ピシウム菌、フザリウム菌などによって同じような症状が起きる病気です。

被害2. 順調に生育していた苗の生育が悪くなり枯れてしまう

犯人:タネバエ

タネバエによる被害です。ウリ科、マメ科、ネギ科の野菜の他に、トウモロコシ、ダイコン、カブなどが被害を受けます。

タネバエの生態

順調に生育していた苗がなんとなく生育が悪くなり、おかしいと思って引き抜いてみると、根がなかったり根茎部分が腐っていることがあります。腐った部分をよく観察すると、全体が白~黄白色状の、5mm前後の大きさのウジムシがいます。これがタネバエの幼虫です。タネバエは水分を含んで膨れた種子の中に入り、食害したり子葉をかじったりします。そのため、発芽しなかったり、発芽しても子葉が奇形になったりします。
一年で5~6世代発生を繰り返しますが、夏の暑さには弱く、春と秋の涼しいときの被害が目立ちます。成虫は5mm前後の大きさの小さいハエ。未熟堆肥、鶏ふん、油かすなど有機物が腐敗したにおいのする畑や、湿った畑に集まって産卵する傾向があります。

タネバエの防除方法

未熟堆肥、鶏ふんは成虫を誘引するので、種まきや苗を植える直前の使用は避け、前もって施してしっかり腐らせてください。薬剤では、種をまくときや苗を植えるときに「家庭園芸用サンケイダイアジノン(R) 粒剤3」を土に混ぜ込んで退治し被害を防ぎます。

[ちょっと雑学]ネギ、タマネギの種をまく人は注意!

タネバエの仲間にネギ科植物を加害するタマネギバエ、アブラナ科植物を加害するダイコンバエなどもいます。タマネギバエはネギ科植物の根茎部分に寄生して腐らせ、ダイコンバエはダイコンやカブを食害します。 種をまいてできた苗を定植しようと掘り起こしたときに、苗の根茎の部分に注目してください。土がきれいに取れて付着してない苗は正常です。中には土がこびりついたように付いている苗があります。これはタネバエかタマネギバエが寄生している可能性がありますので注意してください。

被害3. 苗の芽の部分(成長点)が食べられている

犯人:ハイマダラノメイガ(通称 ダイコンシンクイムシ)

ハイマダラノメイガによる被害です。ダイコン、キャベツ、ハクサイ、ブロッコリーなどのアブラナ科の野菜が被害にあいます。

中心部の葉が被害を受けた(キャベツ)

ハイマダラノメイガの生態

春から発生しますが、9~10月植えの秋植え野菜の被害が甚大です。自ら葉をつづり合わせて、その中に潜んで葉を食害したり、苗の成長点を好んで食べます。被害にあった部分を取り除いて中を見てみると、頭は黒く、胴体は乳白色で褐色の縦線のある1cm前後の虫がいます。葉も折られたり食べられたりします。コマツナなどは枯れ、ハクサイなどは被害を受けなかった外葉だけ成長し、中は空っぽという状態になることもあります。ブロッコリーやキャベツなどはわき芽が出て生育することもありますが当然のことながら大きくはなりません。

ハイマダラノメイガの防除方法

支柱でトンネルを作り防虫ネットを張って侵入を防ぐことが基本です。後はこまめに観察して、おかしいと思ったら「ベニカベジフル(R) 乳剤」などを散布します。また、ケムシやイモムシなど親になるとチョウやガになる種類にしか効果がないBT剤と呼ばれる「ゼンターリ(R)顆粒水和剤」などは、使用回数に制限がありませんので1~2週間間隔でまいて予防するのもいいでしょう。

[ちょっと雑学]上手なトンネルの作り方

まずは支柱でトンネルの枠組みを作ります。間隔は50cm程度にし、支柱を土に差し込む幅と高さを均一するのがポイントです。枠組みが均一にできれば防虫ネットやビニールを張ったときにきれいに出来上がります。
害虫の侵入を防ぐために防虫ネットを張りますが、害虫は土とネットのわずかな隙間から侵入してきますので周りは土で覆ってください

次回は「葉のトラブル① 虫に葉を食べられた」をお送りします。お楽しみに。

注釈

防除薬剤は病害虫の効果だけで記載しております。使用の際は適用作物をご確認の上、ご使用ください。
写真提供:住友化学園芸株式会社

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