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【第12回】ウイルスと害虫による野菜の生育不良

望田明利

もちだあきとし

千葉大学園芸学部卒。住友化学園芸研究開発部長として、家庭園芸薬品や肥料の開発普及に従事。現在は園芸文化協会理事、家庭園芸グリーンアドバイザー認定講習会講師などとして活躍中。各種園芸雑誌等に病害虫関係の執筆多数。自らも家庭菜園で多品目の野菜を栽培している。

【第12回】ウイルスと害虫による野菜の生育不良

2020/11/17

今回で野菜編は最終回になります。今回はウイルスによるトラブルと、害虫による被害で生育不良になったり、枯死したりする症状についてまとめてみました。

【目次】
被害1. 葉が濃淡緑色のモザイク状になる、新葉が細く小さくなる、株全体が萎縮して枯れる
 ●犯人:ウイルス
  ウイルスの生態と被害
  ウイルスの防除方法
  [ちょっと雑学] ウイルスフリー?

被害2. 根が食べられた、根が腐ったために枯れた
 ●犯人:コガネムシ幼虫、センチュウ類
  コガネムシ幼虫の生態
  コガネムシ幼虫の防除方法
  [ちょっと雑学] 親子で食害する甲虫類
  センチュウ類の生態と防除方法
  [ちょっと雑学] 新たに国内に侵入してきたセンチュウ

病害虫110番連載 野菜編の最後に

被害1. 葉が濃淡緑色のモザイク状になる、新葉が細く小さくなる、株全体が萎縮して枯れる

●犯人:ウイルス

ウイルスの生態と被害

ウイルスは単独で植物に感染して被害を及ぼすことはありません。多くはアブラムシやコナジラミ、アザミウマなどの吸汁性害虫によって伝染する虫媒伝染によるものです。または、感染した植物の汁液が人や刃物などによって伝染する汁液伝染によって広がっていきます。トマト、ナス、キュウリ、スイカ、ダイコン、ハクサイ、ニンジンなど、ほとんどの野菜が単独あるいは複数のウイルスの被害を受けます。

一番多いのは葉が淡緑色と濃緑色のモザイク状になる、モザイク病とも呼ばれる症状です。他にも葉の小型化、葉が縮れる、葉が変形する、葉が凸凹になるなど多様な症状が現れます。変わったところではトマトの新葉が小型化・黄変して内側に巻く黄化葉巻病、タマネギの葉のところどころが扁平に波打つ萎縮病もウイルスが原因によって起きる病気です。

萎縮病のタマネギ

黄化モザイク病のインゲン

黄化葉巻病のミニトマト

ウイルスの防除方法

植物の体内に侵入したウイルスを防除する薬剤は現在のところありません。感染しないように予防中心の対策になります。アブラムシやコナジラミ、アザミウマなどが媒介して伝染するため、それらの害虫退治がウイルス感染予防となります。同様に、感染した野菜は抜き取って焼却処分して病気の拡大を防ぎます。

[ちょっと雑学]ウイルスフリー?

ウイルスに感染すると、葉にモザイクや萎縮などの症状が出ます。これにより光合成が弱まり、収量が減少したり、品質が低下したりします。ウイルスは種子伝染しないため、種子をまいて育てる野菜については問題ありませんが、栄養繁殖で育てる野菜、例えばジャガイモ、サツマイモなどのイモ類、イチゴ、ニンニクやラッキョウなどでは問題になります。そのため、ウイルスが存在していない植物の芽の最先端部を取り出し、培養・再分化させて作ったウイルスフリー苗などが販売されています。

被害2. 根が食べられた、根が腐ったために枯れた

●犯人:コガネムシ幼虫、センチュウ類

コガネムシ幼虫の生態

第8回でコガネムシの生態を簡単に解説していますので、そちらを参照してください。コガネムシの幼虫はイモもかじりますが、畑で育てている野菜の根を食べる被害の方が大きいです。多数発生すると生育阻害を起こし、最悪の場合は根が無くなり、枯死することもあります。

コガネムシ幼虫の防除方法

8月ごろから幼虫が現れるため、秋野菜の種をまいたり苗を植えたりするときには、事前に土に「ダイアジノン(R)粒剤」などを混和して退治します。

[ちょっと雑学]親子で食害する甲虫類

第3回の[ちょっと雑学]で、親子で植物を加害でウリハムシなどハムシ類について記しましたが、コガネムシ成虫も植物の葉を食害します。野菜類ではダイズやラッカセイなどマメ類の被害が目立ちますが、果樹や庭木の被害も大きく、バラでは花まで食害されます。

センチュウ類の生態と防除方法

第8回でセンチュウの生態や防除方法について記していますのでそちらを参照してください。センチュウは、イモ類はもちろんのこと、トマト、キュウリ、ナスなどほとんどの野菜の根に寄生して被害を及ぼします。ネコブセンチュウの場合は生育不良で収まる場合もありますが、ネグサレセンチュウの場合は生育中に根がなくなり枯死することもあります。

ネコブセンチュウの被害にあったキュウリ

ネコブセンチュウの被害にあったキュウリの根

[ちょっと雑学]新たに国内に侵入してきたセンチュウ

根に寄生するシストセンチュウ類、ダイズシストセンチュウとジャガイモシストセンチュウは以前から日本国内にいましたが、2015年8月に北海道網走市の圃場でジャガイモシロシストセンチュウが国内で初めて発見されました。肥料として輸入したバットグアノと一緒に入ってきたといわれています。2017年9月には長野県原村の農地からアブラナ科植物などに寄生するテンサイシストセンチュウが新たに発見されましたが、侵入経路は調査中です。

病害虫110番連載 野菜編の最後に

12回にわたる「病害虫110番 野菜編」を読んでいただき、ありがとうございました。最後に私から家庭菜園をされる皆さまに薬剤についてのアドバイスです。家庭菜園で、登録のない薬剤を使用してしまい、使用後に気が付いて食べても大丈夫かと悩む人が非常に多いです。薬剤のラベルには、野菜ごとに残留量などを調査し、使用時期や使用回数を順守すれば一生涯食べ続けても安全であると確認された野菜名が表示されます。「野菜に使える薬剤」というキャッチコピーに惑わされず、ラベルをよく読んで製品を購入してください。丹精込めて育てた野菜を食するのは家庭菜園の醍醐味(だいごみ)! 安心しておいしく食べてください。

引き続き、花を育てる際に気を付ける病害虫110番(草花・花木編)が始まりますので、興味がある方はそちらもぜひチェックしてみてくださいね。

注釈

防除薬剤は病害虫の効果だけで記載しております。使用の際は適用作物をご確認の上、ご使用ください。
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

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