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猿桃[後編] マタタビ属

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後も嘱託として勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

猿桃[後編] マタタビ属

2017/10/03

マタタビは雨を避けるように、花が葉に隠れて咲きます。それは夏にも降雨の多い、東アジアの気候に対する適応の一つだと思います。でもそうすると受粉を助けてくれる昆虫たちも気が付かなくなるので、葉を白化させ、花が咲いていることを周りに伝えます。では、どのようにして葉を白化させるのでしょうか。

この顕微鏡写真は染色された葉の断面です。典型的な葉の構造が見て取れます。紫色や濃い色に染まったところは葉緑体です。葉緑体は緑色をしていて、ここで光合成をするのですが柵状組織細胞に多く、海綿状組織細胞にもありますが表皮細胞にはありません。

マタマビの葉の白化は表皮細胞と柵状組織細胞との間で剥離が生じ、表皮細胞内の気泡が白く見えるのです。花期が過ぎると剥離が修復され、元の緑に戻ります。

マタタビはつる性の落葉樹です。秋になると雌株には黄色く熟した実を付けます。

マタタビActinidia polygama(アクチニディア ポリガマ)マタタビ科マタタビ属の実は先がとがっていて、外見も中身も黄色く熟します。食べてみると少しやぼったい味ながら、滋味があり、普通においしい果実です。野生動物にはごちそうに違いありません。

動物といえば「ネコにマタタビ」です。ネコがこの植物の匂いを嗅いでうっとりとする姿は笑えてしまいます。興奮の度合いはネコそれぞれで、個体差があるように思います。

こちらはマタタビより高地に、そして北に生えるミヤママタタビです。一つの山でも標高によってすみ分けています。マタタビより全体的にスリムな印象があり、マタタビの果実に比べて先端が少し丸くなります。よく似ている植物なので区別が難しいのですが、葉の色づき方が違うのです。

ミヤママタタビActinidia kolomikta(アクチニディア コロミクタ)マタタビ科マタタビ属。種形容語のkolomiktaはシベリアの地名にちなむそうです。日本の中部から北、東アジア北部に自生します。ミヤママタタビは白化の後、葉が桃色に色づくのです。

ミヤママタタビの葉が桃色に染まることを利用して、シェードガーデンをつくっている方がいました。そこは北海道恵庭市恵み野でした。オープンガーデンを見て回ったときに拝見しましたが、オーナーの奥さまの美しさと見事なミヤママタタビに見ほれたものです。

次回は「逢魔が時[前編] カラスウリ」です。お楽しみに。

JADMA

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