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パンジー・ビオラの真夏のタネまき 文・写真 サカタのタネ パンジー・ビオラの真夏のタネまき 文・写真 サカタのタネ

2016/08/18

最も親しまれている花のひとつ、パンジー・ビオラ。
毎年新品種が登場することも、花色や花模様が多様なことも、長く育てても飽きのこない花である理由ではないでしょうか。

一方、多くの方が育てているだけあって、その栽培方法もひとつではありません。
タネまきの時期をとってもいろいろありますが、今月は秋から春まで長く楽しむためのタネまき術をお伝えします。

  • タネまき時期
  • 真夏のタネまき
  • タネまき方法は2つ
  • ポット上げの極意
  • ポット上げ後のポイント

タネまき時期

3シーズンも花を咲かせるパンジー・ビオラ

パンジー・ビオラの開花期とはいつでしょうか。「昔は春だったけど、今は冬の花かしら?」と思う方もいらっしゃるでしょう。私たちが現在育てているパンジー・ビオラは育種が進み、その多くが秋から冬、冬から春と約半年間、3シーズンも開花する性質をもっています。さらに、その期間中は寒い季節ですが、花が休むことなく咲き続ける性質も備わりました。まさに花壇を半年間、花で彩ってくれる頼もしい花なのです。

パンジー・ビオラの発芽に最適な地温は20℃前後

パンジー・ビオラが長く楽しめることがわかったら、いつから育て始めるかが気になりますね。一般にパンジー・ビオラの発芽地温は20℃前後です。よって、タネまきが可能な時期は東京・神奈川を標準とすると8月下旬~10月です。8月中旬までは夜間の最低気温が25℃を超す熱帯夜が続き、高温になるため正常に生育できません。また、11月以降は気温が下がり、日照時間が短くなるため、生育が緩やかになります。

秋から開花させるためには真夏にタネまきを

パンジー・ビオラを早くから楽しむなら、8月下旬~9月上旬にタネをまいてみましょう。この時期にまくと、開花は秋から始まり、秋冬にピークを迎え、いち早く花を楽しむことができます。しかし、真夏の暑い時期の育苗のため発芽にばらつきが出やすく、立枯病などの病気が発生しやすかったり、徒長しやすかったりと問題もあり、いかに涼しく管理できるかがポイントとなります。遮光と風通しに気をつけます。冷房の効いた屋内で発芽させてもよいでしょう。

パンジー
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真夏のタネまき

遮光と風通しに気をつけて、まき床を作る

暑い季節にタネをまくには、気をつけることがいっぱい。涼しい屋内でまくことも一法です。ここではまく量やポット数が多いことを考慮して、屋外でタネをまく例を取り上げます。
例えば、西側の塀に沿って作った片屋根式のフレームを使った場合、フレーム下の部分は風通しをよくするために60cmほど開けておきます。屋根には日よけとともに太陽熱が反射される、遮熱型の銀色の寒冷紗(遮光率50%程度)をビニールの外側にかけ、できるだけ温度を上げないように工夫します。

遮光率は80%にして太陽熱から苗を守る

タネまきから1回目の移植までは、フレームの中にさらにその場所だけ二重に寒冷紗(遮光率50%程度)を張り、75~80%くらい遮光できるように日よけを強くします。まき床には黒ピートを含んだ「スーパーミックスA」に60~70%のパーライトを混合した用土がおすすめです。タネまきには必ず新しい無菌に近い用土を使い、庭や畑の土は雑菌や雑草のタネが入っているため、苗の立枯れなど病気が発生しやすいので使用を避けます。
タネまき2週間後になって発芽がそろっていれば、そろそろ1回目の移植ができます。

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タネまき方法は2つ

まくタネが少ない場合 「バーゲンガーデン」を使えば1回目の移植が省けるまくタネが少ない場合 「バーゲンガーデン」を使えば1回目の移植が省ける

「バーゲンガーデン」に直接タネをまく方法があります。この場合、タネを1粒ずつセルに落とすのが面倒になることと、一つひとつのセルが小さいため乾燥が早く、発芽までは水やりに気を配ることが必要になります。「バーゲンガーデン」で育った苗はその後すぐポットへ移植できる利点もあります。まくタネの粒数が少ない場合は、こちらの方法がおすすめです。

まくタネが多い場合 まき床は箱まきか「ゴールデンピートバン」がおすすめまくタネが多い場合 まき床は箱まきか「ゴールデンピートバン」がおすすめ

まき床に箱を使う箱まきでは、発芽までの水管理は比較的やりやすく、タネもばらまくことができます。発芽した苗も大きさをそろえて移植できるため、その後の管理もやりやすくなります。箱まきは最もおすすめできる方法で、まき床には混合用土を使うほか「ゴールデンピートバン」を使っても簡単にできるのでよいでしょう。

タネを均一にまく

タネを均一にまく

できるだけ根を切らないように移植

まき床の上に芽が出そろったら、「バーゲンガーデン」に移植します。小さな苗を移植するには腰のやわらかいピンセットや箸などを使います。まき床を少し深めに掘り取り、できるだけ根を切らないように注意し、「バーゲンガーデン」のひとつのセルに1本ずつ移植します。移植に使う用土はタネまきの時と同様に、清潔な用土を利用します。また、残暑が厳しく暑い年は、この1、2週間後まで、内側の寒冷紗を張っておく方が初心者の方にはよいでしょう。

バーゲンガーデン

この段階での追肥は、移植後2週間くらい経過してから1週間に1回の割合で、液肥を規定の2倍程度に薄めて水やり代わりに与えます。

1回目の移植から約4週間でポット上げ

1回目の移植から約4週間たったら、2回目の移植、ポット上げ(鉢上げ)適期を迎えます。ここまでくればもうひと息です。この時期の苗の場合、生育のよいものは移植の適期ですが、生育の遅い苗は移植にはやや早すぎることがあります。一部の苗は大きくなりすぎますが、もう少し待ってトレー全体の苗の大きさがそろってから、ポット上げを行った方が無難でしょう。
よって、残暑が厳しい年の場合や初心者の方は、ほんの少し開花が遅れますがこれより1、2週間後の移植が安全です。

いつものポリポットにこだわりを!「Yポット」を使ってみよう!いつものポリポットにこだわりを!「Yポット」を使ってみよう!

比較的大きなタネのタネまきや育苗時に使うビニールポット。タネから育てたことのない方も購入した苗が入っていたポットといえば思い浮かぶでしょう。さて、そのポットは底に穴が何個開いていますか。

ここでご紹介するサカタのタネオリジナル「Yポット」は、なんと3つの穴が開いています。この鉢底の穴と溝が根の成長を助けるのです。鉢底の穴と溝が、今までのビニールポットにはなかった抜群の通気性と保水性を実現しました。

サカタのタネオリジナル「Yポット」

「Yポット」で育てられた苗は、ポット全体に根を張りめぐらせ、巻いていくので、根の損傷が防げます。さらに根の穴漏れが少ないため、がっちりとした苗に仕上がる、まさに優れもののポットです。

優れた通気性で根の生長が早い Yポット使用と一般ポリ鉢使用の比較
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ポット上げの極意

いつポット上げするのか

移植の時期は品種、タネまき時期、方法、地域などによって異なります。発芽までの日数や月日によって一律に植え替えることは難しく、その株の生育状況で判断します。基本は、本葉5~6枚くらいになった頃がポット上げの適期です。

セルの形は崩さず移植

移植する時、箱まきの場合は割り箸などを利用して、できるだけ根を切らないように掘ります。
「バーゲンガーデン」を使った場合は、ピンセットや竹串を利用して、セルの形が崩れないように穴から抜き取り、そのままセルの形を崩さないように移植します。

双葉が展開したら移植する

双葉が展開したら移植する

やわらかい水流でたっぷり水やり

移植時の用土は手で軽く握って手を離した時に崩れる程度に軽く湿らせておきます。乾燥しすぎたものは根を傷めるだけでなく、水をやった時にうまく水がしみ込まないので不適切です。移植後の苗は直接太陽光線の当たらない日陰に置き、早めにジョロやハス口を使いやわらかい水流でたっぷりと水やりします。

ポット上げ後は本格的な生育が始まる

ポット上げが済むと、これから本格的な生育期間となります。この頃になれば真夏ほどの暑さはないものの、引き続きパンジー・ビオラにとって適温とはいえない季節のため、まだ十分注意が必要です。
週末にしか園芸ができない方やポット数が多い方は、早い時期より3回目の移植をせざるをえないですが、本来はこれから1、2週間後くらいのもう少し苗が大きくなってから移植します。
目安としては、順調に生育が進み、2回目の移植(ポット上げ)から約1カ月がたった頃、ポット全体に葉が展開していれば適期といえます。

ポット上げ後のパンジー
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ポット上げ後のポイント

ドロ跳ねを防いで病気予防を

ポット上げ後、最低でも7~10日間くらいはポットを直接雨に当てないようにします。強い雨が降った場合は病気が発生しやすくなるので、なるべく雨が当たらないできるだけ明るい場所に置きます。その後は伸びすぎない丈夫な苗を作るために露地栽培をします。ただし、直接土の上にポットを置くのではなく、プラントベッドや棒きれ、レンガなどを利用して、土の表面より少し離して置きます。
土の表面に雑草防止シート「透水性防草シート」などを敷き、ドロ跳ねを防ぐ工夫をすれば完璧です。

プラントベッドや棒きれ、レンガなどを利用して、土の表面より少し離して置きます。

活着してから肥料やりをスタート

肥料は、ポット上げ2、3週間後、苗が完全に活着してからやり始めます。液肥の場合は1週間に1回程度水やり代わりに規定の希釈倍率でやります。初めの1、2回はチッ素分の多い液肥を、その後はリン酸分の多めの液肥を与えます。 置き肥を与える場合も同じ時期から施します。1回目はチッ素分主体の固形肥料をやり、その3週間後にリン酸分の多い固形肥料をやります。施す量は9cmポット当たり1g程度です。

ナメクジ、コオロギの食害から幼苗を守る

育苗中の病害虫の予防法として、1回目の移植後、「ベンレート水和剤」などの殺菌剤を3週間に1回程度散布します。殺虫剤としては「マラソン乳剤」などを同様に散布します。

マラソン乳剤とナメクジ退治

しかし、パンジー・ビオラの育苗中に最も注意することはナメクジと秋に発生するコオロギなどのバッタの仲間による食害です。ともにやわらかい葉を好んで食べるため、一晩で丸坊主にされることがあります。タネまき後定期的に、ナメクジには「ナメクジ退治」を株元にまき、バッタの仲間には適用のある殺虫剤を使用すると安心です。

水やりは過湿しすぎに注意

水やりは、土の表面が乾いて白くなったら与えるのが基本です。夕方に見て土の表面が少しくらい白くなっていても、しおれていなければ我慢して、翌朝、苗に直接太陽の当たる前までに与えれば枯れることはありません。過湿にならないように管理します。

どうしてパンジーは秋から咲くようになったの?どうしてパンジーは秋から咲くようになったの?

パンジー・ビオラは本来、春に咲く植物でした。充実した株が冬の低温で花芽分化し、それが春の温度上昇と長日によって花を咲かせるのです。では、今の栽培暦を見ると8月にまいて11月に咲くとなっています。なぜでしょう?

まず、冬の低温にあわなくても開花する秋咲きのパンジー・ビオラが育成されました。しかし、短日の冬には花が休んでしまう問題が残りました。つまり、この段階では2シーズンしか咲かないパンジー・ビオラだったのです。

長年の研究により、日長に左右されることがほとんどない秋も冬も咲くパンジー・ビオラ(日長中性パンジー)が育成されました。これにより、秋、冬、春と3シーズン続けて花が咲く連続開花性のあるパンジー・ビオラの誕生です。1998年、今でも人気の「オトノシリーズ」「プロントシリーズ」などが登場しました。

オトノ ピンクシェード

オトノ ピンクシェード

プロント マリーナ

プロント マリーナ

私たちが今、寒い冬の間もパンジー・ビオラを楽しめるようになったことは長年の育種開発研究によるものなのですね。それは皆さまに満足いただけるパンジー・ビオラを作りたいと、サカタのタネが安定して花を咲かせるための性質を追求した結果なのです。

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