原種ユリの育て方・栽培方法
難易度:マークが多いほど難易度が上がります。
- 用途地植え・鉢植え・切り花
- 日当たりオニユリ・テッポウユリ…日なた、鹿の子ユリ・ヤマユリ・乙女ユリ・ササユリ…半日陰
- 耐寒性強
- 耐暑性鹿の子ユリ…強、乙女ユリ…弱、オニユリ・ササユリ・テッポウユリ・ヤマユリ…中
- 土壌酸度弱酸性(テッポウユリのみ中性)
- 地植え適所・土質種類に適した日照条件で、風通しのよい場所。腐植質に富んだ水はけのよい土
- 植えつけ[地植え]間隔10×10~30×30cm、深さ約7~20cm
原種ユリとは
江戸時代の川柳に「ゆりの花あやまるように 咲いている」という一句があります。これは庭に植えたヤマユリが、花の重みで茎が曲がって咲いている様をよく見て詠んだものです。他に「鬼もあり 姫もありけり ゆりの花」という一句もあり、昔からいろいろなユリが作られていたことがわかります。また、元禄時代には武士、町人を問わずに日本中がユリ栽培に夢中になっていた記録も残っており、日本人は古くから山野に咲くユリを庭に植えて楽しんでいたことがわかります。
自生種のユリは世界の北半球にのみ、約130種類の分布があります。そのうち、日本には15種類が分布しています。その中でも日本固有の乙女ユリ、ササユリ、ヤマユリなどは香りがあり、白色や桃色系の花色です。さらに、強い風に対応する葉柄も備え、世界で最も進化したユリといわれています。そのため、江戸末期に日本を訪れた欧米のプラントハンターたちは、日本の山野に乱れ咲くユリの花を見て、「日本はユリの国」と称賛するようになりました。
地植えがおすすめです。
種類に適した光の環境で栽培することが大切。栽培中、地温が高くならないようにし、常に土が湿り気を保つように注意する。
植えつけ
原種ユリの植えつけ期は、9月下旬~12月が適期となります。
テッポウユリは沖縄などの亜熱帯気候に自生するユリで、やや耐寒性が弱い面があります。そのため他のユリと同時期に植えると10月に地上に芽を出す性質があります。秋に芽を出して伸び始めると、厳寒期には10cm以上に伸び、耐寒性が弱い状態で冬越しするので寒害を受けて枯死してしまいます。そのため、テッポウユリは11月下旬頃に植えて、発芽期を遅くし、厳寒期に寒害を受けずに越冬させるようにします。
植える場所は必ず水はけと風通しのよい場所を選びます。日照条件は種類により異なり、乙女ユリ、鹿の子ユリ、ササユリ、ヤマユリは生育期、直射日光を避けた明るい木漏れ日の木陰が適しています。オニユリ、テッポウユリなど、草原の日当たりのよい場所に自生するものは、西日を避けた、よく日の当たる場所が適しています。
球根を植える深さと間隔は、球根の大小にかかわらず、球根の高さの2倍の土がかかる深さに、球根の直径の3倍の間隔で植えます。
発芽後の管理
テッポウユリは12月になると発芽を始めるので、芽が出たら日によく当てるようにします。霜が降りるようになったら、霜除けになるものがない場所では、ユリの芽の上に落ち葉や枯葉をほんの少しかけておきます。こうしておくと、落ち葉や枯草に霜がついて、ユリの芽には霜がつかないので、霜害を受けずにすみます。霜が降りなくなったら、日当たりをよくするため、落ち葉などはすぐに取り除きます。
他のユリは3月中旬頃になると発芽を始めるので、この時期は芽に十分日が当たるようにします。晩霜の被害を受けそうな夜は、芽の上に新聞紙などをかけておくと霜害を防ぐことができます。花の大きなヤマユリ、茎の細いササユリは開花時に強い風雨を受けると茎が折れるおそれがあるので、蕾がついた時点で支柱を立てて誘引しておきます。5月に晴天が続くことがありますが、1週間以上雨が降らない時は、株元にたっぷり水やりしましょう。
肥料
原種ユリの根は多くなく、吸肥力もあまり強くはありません。元肥は化成肥料に頼らず、肥効が穏やかで長続きする有機質肥料主体の施肥の方が細根も発達して根張りがよくなります。化成肥料を主体にすると、根はあまり働かなくても楽に肥料分を吸収でき、一時的に生育はよくなりますが、化成肥料を吸収して肥大した球根は根の発達が劣ります。そのため、翌年地上部は大きくなりますが、根が少ないので生育のバランスがくずれ、病害虫が発生しやすくなります。
施肥法は、定植の約1カ月前に土の量に対して約3割の完熟腐葉土、ピートモスを40~50cmほど深耕して、土とよく混ぜ合わせておきます。追肥は、春の発芽時には、化成肥料を芽出し肥として株元に置き肥として施します。液肥を開花前と開花後の2回施します。根が吸肥するため自分で深く根を張るように追肥の回数を少なめにします。
開花後の管理
原種のユリはほんの少しでも柱頭に花粉がつくと結実し、球根を肥大させるための養分を奪うので、早めに花がらを摘んで結実を防ぎます。
ヤマユリなどの半日陰の涼しい場所を好むものは、梅雨明け後の高温と強い西日は地温を上げて土を乾かし、株を弱らせるので、強光期は日陰を作る工夫をしてやります。また、1週間くらい雨が降らない時は、土が乾き株が脱水状態になるので、夕方、株元に水をやり、常に土に湿り気を保つようにします。
秋になり葉が黄ばんできたら、葉について越冬する葉枯病菌を残さないため、古茎は地際で切って片付けます。
病害虫
原種ユリは、アブラムシが1度でも付着し蔓延すると、次の年には花が正常に咲かなくなります。アブラムシは予防第一で、定植時には球根の下に、発芽時には土の上に浸透移行性殺虫剤をそれぞれ施しておきます。また、暖かな南風が吹いた後はユリの芽にアブラムシがつくので、早めに見つけて園芸用のエアゾール式殺虫剤で防除します。
病気は梅雨時に風通しの悪い場所では葉枯病が多発するので、風通しをよくして予防します。5月下旬頃から殺菌剤をかけて葉に薬の皮膜を作っておくと、葉枯病にかかりにくくなります。