近代文明を支える天然ゴムは、ゴムノキと総称される樹木から得た樹液を原料として作られますが、現在では採算性から、トウダイグサ科のパラゴムノキ(Heveabrasiliensis)がその生産に使われています。トウダイクサの仲間の枝を折ると出てくるあの白い汁が、ゴム原料なのです。
パラゴムノキは、種小名にbrasiliensisとあるとおりブラジル原生で、雨季に水没するため浸水林と呼ばれる、アマゾン川周辺環境をその故郷とします。そして、ブラジルでは国の戦略物資として、国益に従ってパラゴムノ木を他国に渡ることがないように管理してきたのです。
しかし、現在では、この植物の栽培はほとんどが東南アジアで行われ、原生国での栽培は衰退してしまいました。それは、この植物の風土病ともいうべき南アメリカ葉枯病の蔓延で、原生地での営利栽培が困難になってしまったからです。パラゴムノキは現在、原生国ではなく、他国において産業化されているのです。原生国が必ずしも原産国になっていないという顕著な例だと思います。
天然ゴムはこの樹液から不純物を取り除き、酢酸で凝固させてからローラーにかけ、水洗いしたのち天日乾燥させて作る。この天然ゴム生産には、酢酸に起因するのであろう不快な臭いが伴い、天然ゴムを作る村は衛生的環境とは言い難い環境でした。
パラゴムノキのプランテーション。熱帯雨林は次々とゴムの生産の為に開発されています。
生皮を剥がすように樹皮に斜めに切り込みを入れ、樹液が染み出て流れ落ちる仕組みを作る。
乳液量はパラゴムノキ1本当たり1日約30cc、ゴム含有量は30~40%。天然ゴムの生産量は、1本当たり年間3kg程度といわれている。