草花を種から育て、芽が出て、やがて花が咲く。この上なく楽しいことです!
コツをつかんで愛情をかければ、決して難しくありません。
今回は新品種も登場するケイトウをご紹介します。夏から秋の開花を楽しみに、種まきから始めましょう。
楽しむ
燃えるように咲く花、ケイトウ
夏から秋にかけて真っ赤に燃えるような花を咲かせるケイトウは、熱帯アジア、アフリカなどの熱帯、亜熱帯に数多く自生しています。そのため日本のような高温多湿の気候にもよく適し、古くから夏の切り花として利用されてきた春まき一年草です。すでに奈良朝時代に中国から渡来したといわれています。

トサカケイトウ、羽毛ケイトウはいずれも、基本的には同じ性質を持っていますが、日長に関しては少し異なっています。トサカケイトウは長日でトサカの部分が大きくなり、花穂も大きく見応えのある花になります。トサカケイトウは春にタネをまき、夏に開花させると、最も魅力を発揮してくれます。

秋に開花させた株は日当たりの悪い窓辺でも退色せず、2カ月程度も楽しめます。また一度開花した株は低温下でもよく開花するので、玄関などに飾ってぜひ楽しんでください。
品種を知る
熱帯原産の春まき一年草で、夏から秋の強い日差しの下で色鮮やかな花を付ける多様な品種があります。色づく部分は茎が変形した花序で、形によりトサカケイトウ、羽毛ケイトウ、ヤリケイトウに分けられています。
育てる
種まき
発芽には比較的温度が必要で、25℃前後が適温です。温暖地では5月上旬以降、寒冷地では5月下旬以降にまきます。タネが小さいのでジフィーセブンか、種まき用土を入れた6~9cmポットに5~10粒ずつまき、覆土はタネが隠れる程度の薄めにします。羽毛ケイトウは、まき時期が遅くなるほど、順次草丈が低くなり、いろいろと楽しみ方が多くなるので、一度にまかず数回に分けてタネをまいてみましょう。株が大きくなってから根を切る移植は嫌いますが、小苗のうちなら可能です。
プロのアドバイス
数回に分けてタネをまく場合、トサカケイトウは7月ごろまで、羽毛ケイトウは8月ごろまでにまきます。
育苗
種まき後5~10 日で発芽するので、芽が出たらよく日に当て、やや水やりを控え、乾かしぎみにして徒長するのを防ぎます。小苗の移植は双葉が展開したころ、根を切らないように丁寧に1本ずつ6~7.5cmポットに植えます。鉢やプランターに直(じか)まきした場合は、双葉が展開したころに、密に生えたところを間引きますが、2~3回に分けて順次間引くようにした方が安全です。本葉が出始めたら週に1度液肥を与えます。
本葉が出始めたら週に1度液肥(ハイポネックス1000倍液など)を与える
プロのアドバイス
小苗での移植の場合、移植が遅れると根が伸び過ぎ、植え傷みのストレスで活着が悪くなるので、植え遅れないように気を付けます。また、育苗時に乾かし過ぎや肥料切れを起こすと株が老化し、小苗で花穂が付いて貧弱になるので注意します。
定植
ポットに十分に根が回ったら、苗が老化しないうちに定植します。日当たりと水はけのよい場所を好みます。定植床はあらかじめ堆肥、腐葉土などの有機質を多めにすき込み、よく土ごしらえしておきます。植え付けの間隔はわい性種で15~20cm、中高性種で25~30cmにします。中高性種を切り花として楽しむ場合は、10~15cm間隔の密植にすると、茎がスリムになり、切り花らしいスタイルになります。
ポットに根が回ったら、苗が老化しないうちに定植する。
深植えにならないよう注意する
プロのアドバイス
ケイトウの生育、開花にはカリ肥料が特に必要です。カリ分が欠乏すると茎割れしやすくなるので元肥、追肥ともにカリ分が多く含まれる化成肥料を用いるようにします。
開花
春まき一年草ですが、一度にまかず、5~7月に分けてまくと、次々と開花し、常に新しい花が楽しめます。羽毛ケイトウを秋に開花させる場合は、8月上~中旬にまくことをおすすめします。遅くとも8月下旬までに種まきをしましょう。生育、開花には日当たりが必要ですが、一度開花した株は日当たりの悪い場所でも色あせせず開花します。秋に開花させた株は特に花色もきれいなので、鉢植え、プランター植えにして好きな場所で楽しんでください。
プロのアドバイス
3~4号鉢に20~30粒のタネをまくと、一株一株の苗が小さくなり、かわいくコンパクトに育てられる「多粒まき」もおすすめです。
『園芸通信』2011年1月号「種まきから始めよう!草花栽培 ケイトウ」および『家庭園芸』より再掲