草花を種から育て、芽が出て、やがて花が咲く。この上なく楽しいことです!
今回は寒さにも強く、香りも楽しめる金魚草(キンギョソウ)をご紹介します。心躍るような花姿でカラフルで愛らしい花の開花を待って、種まきから始めましょう。
楽しむ
あふれる香りの花、キンギョソウ
独特の花形を持ち、色とりどりの花を咲かせるキンギョソウは、切り花や花壇に広く利用されているゴマノハグサ科の草花です。南欧や北アフリカの地中海沿岸地方が原産地の多年草ですが、園芸的には一年草として取り扱われています。
属名である「アンティリヌム」は「鼻に似た」という意味で、特異な花の形から名付けられたものです。和名の「金魚草」も英名の「スナップドラゴン」も花の形から名付けられたものですが、日本ではこの花を「金魚」に、英国では「竜の口」に見立てた感覚の違いに妙に納得させられます。


品種を知る
バラエティーに富んだ品種群を持つ一年草で、その金魚のような愛らしい花形で、多くの人に愛されています。四季咲き性の品種も増え、用途に合わせさまざまなシーンで活躍します。
育てる
種まき
発芽適温は20℃前後で、春まき・秋まきいずれも可能です。秋まきは9月上旬~10月中旬が適しますが、しっかりした株張りでボリュームのある花を咲かせるには9月末までにまけばより安心で、確実です。もちろん10月中旬までタネまきできます。タネは非常に微細なので覆土はせず、受け皿に水を入れて下から吸わせるようにし、直径9cmくらいの素焼き鉢にまくのがおすすめです。鉢に用土を8分目まで入れ、平らに表面をならした後、均一にタネをばらまきします。秋とはいえ高温にならないように、できるだけ涼しい環境下で管理します。
タネはばらまきし、覆土はせず、水は底から吸わせる
プロのアドバイス
まきどきである秋は台風のシーズンなので、雨、強風の避けられる場所で管理します。発芽後は速やかに受け皿の水を捨て、徐々に日に当て、直射日光に慣らします。子葉展開後は鉢土をやや乾かしぎみに管理すると、根張りのしっかりした苗に育ちます。
育苗
種まき後、1週間程度で発芽してきます。
苗が密に生えると徒長しやすいので、何回かに分けて間引くようにし、本葉2~4枚になったら直径6~7.5cmポットに1本ずつ仮植えして育苗します。あるいは苗を間引かずに、子葉が展開し、本葉が出始めたころに6cmポットかトレーに1本ずつ移植することもできます。苗が小さいので、移植時は先端を細く削った箸を利用すると作業がラクです。移植後2週間ほど経過したら、週に1度液肥を与え、しっかりした苗に育てます。
本葉が2~4枚ほど出たらポットに1本ずつ植える
密に生えたところは間引き、苗を徒長させないようにする
プロのアドバイス
幼苗時は十分な水やりが必要ですが、過湿に弱いので、水のやり過ぎに注意してください。移植後に液肥を与えますが、幼苗時は濃い肥料では根が傷みやすいので、規定濃度よりやや薄めの濃度で与えるのがおすすめです。
定植
日当たり、水はけのよい場所が適し、土質はあまり選びませんが、花穂の長いしっかりした花を咲かせるためには、有機質に富む肥沃な土壌準備が必要です。堆肥や腐葉土などの有機物、元肥として化成肥料を入れ、よく耕して土づくりをしておきます。秋にタネをまいた苗は寒くなるまでに定植します。定植間隔は一季咲き性品種は20~25cm、四季咲き性品種は15~20cmにします。鉢に植える場合は直径18cm鉢なら3株、21cm鉢なら4~5株程度を目安にします。いずれの場合もポットに根が回ったら速やかに植え替えます。なお比較的寒さに強い草花ですが、真冬は霜よけをした方が安心です。
プロのアドバイス
切り花用品種は本葉7~8枚のころに本葉を4~6枚(2~3節)残して芯を摘むと枝数が多くなり、開花時は見応えがあります。
開花
切り花用品種は育苗時、強い風に当たると株が倒伏しやすくなり、そのままにしておくと茎が曲がって直りません。茎が伸び出してきたら、早めに支柱を立てます。鉢植えの株は、開花前の冬の育苗期間にしっかりした株に育てておくことが、春の立派な花穂につながります。過湿に気をつけ、乾いたら十分に水を与え、2週に1度液肥を水やり代わりに与えます。切り花にする場合は、1花穂が4~5輪くらい開花したころが切りどきです。なお花壇用の「ソネット」は草丈が30~50cmになるので、切り花としても楽しむことができます。
プロのアドバイス
気温が高くなってくると乾きが早く、水切れを起こしやすくなるので、用土の表面が白く乾いたらたっぷり水を与えます。開花中は肥料が必要なので、定期的に液肥を与えましょう。咲き終わった花がらは早めに摘んでやると見栄えもよく、次の花が充実して咲きます。
『園芸通信』2011年10月号「種まきから始めよう!草花栽培 キンギョソウ」および『家庭園芸』より再掲