自分でできる! 植物いきいき! プランターと花壇の土づくり 【第3回】よい土づくりに欠かせない「三つの要素」とは?

植物が健やかに育つ“よい土”は「固体」「水分」「空気(酸素)」の三つのバランスが整っています。今回は、土の基本について学んでいきましょう!

はじめに

植物が健やかに成長するために、水分、空気(酸素)、栄養(肥料)が大切なのはいうまでもありませんが、種や根の“ふかふかのベッド”となる土もとても重要。そして、よい土をつくる際のポイントは、土の中の「水分」と「空気(酸素)」のバランスです。適度に水はけがよく、水もちもよい土壌では、植物の根とともに有益な微生物たちもいきいきと元気に活動できます。

「広い庭はないし、プランターや花壇ならそんなに土にこだわらなくても…」と思っていませんか? 限られたスペースだからこそ、よい土かどうかが植物にとってはとても大切なんです。“生きている”理想の土について知るために、まずは土の成り立ちからご説明します。

土の成り立ちを知りましょう!

そもそも土のもとになっている材料(母材)は、主に風や雨、化学変化などによって岩石が砕けてできた細かい粒。火山灰土では、火山から噴出した火山砕くず物が母材となっています。しかし、これだけではまだ水や栄養を保つ力はありません。

この無機物質である母材を、「生きた土」に変えてくれるのが有機物です。植物の根や枯れ葉や枝、動物の死骸を微生物が分解してできた「腐植」が、無機物の母材に付くことによって、水や養分を維持する力を持つ肥よくな土が出来上がるのです。

腐植化のしくみ

腐植化の仕組み

肥よくな土ができるまでには、長い歳月がかかります。日本の気候で厚さ1cmの土ができるまでに必要とされるのは、なんと100年! つまり、土は貴重な資源なのです。

“よい土”は、植物の根の「呼吸」や「食事」を妨げない!

それでは、植物が育ちやすい“よい土”とは、どのようなものでしょうか。

最も重要なポイントは「植物の“呼吸”を妨げない」ということ! 植物は、茎葉の気孔だけではなく、根からも空気(酸素)を取り入れます(=呼吸)。土の粒子の隙間にある酸素や、水の中に溶けている空気を吸い上げて内部に取り入れているわけです。つまり、土の中の酸素が少なかったり、吸い上げられない状態になっていたりすると、植物にとって命取りになってしまいます。

最も重要なポイントは「植物の“呼吸”を妨げない」ということ! 植物は、茎葉の気孔だけではなく、根からも空気(酸素)を取り入れます(=呼吸)。土の粒子の隙間にある酸素や、水の中に溶けている空気を吸い上げて内部に取り入れているわけです。つまり、土の中の酸素が少なかったり、吸い上げられない状態になっていたりすると、植物にとって命取りになってしまいます。

例えば、水はけの悪い土に植えられた植物に水をやっても、根が呼吸できず、空気(酸素)不足により枯死してしまう恐れがあります。また、水はけの悪い粘土質の土などでは、雨が降った後に土が乾いてカチカチに固まることがあります。こうなると植物は根を伸ばせず、成育が阻害されてしまいます。

一方、水はけがよ過ぎる土も、植物にとってはストレスなのです。酸素と同じように、植物は水に溶けた状態で栄養分を吸収します(=食事)。乾燥が続くと、水分ばかりか栄養分も吸えず、植物は元気に育ちません。「植物の“食事”を妨げない」ということも大切なポイントです。

水はけの悪い土と水はけがよ過ぎる土

つまり、水はけが悪過ぎず・よ過ぎず、植物の根の「呼吸」や「食事」を妨げないの土が「よい土」というわけです。

よい土壌は「三相」のバランスがいい

「植物の根の“呼吸”や“食事”を妨げない土(=”よい土”)」かどうかを判断するのに大切な三つの要素は、「固体」「水分」「空気(酸素)」。この三つのバランスが整っていることが大切です。これらを「固相(土粒子や有機物などの固体)」、「液相(固体の隙間の水分)」、「気相(固体の隙間の空気(酸素))」、まとめて「三相」と呼びます。

「固相」は植物の根を支え、栄養分を保持する役割を持ちます。しかし、固相の割合が高過ぎると、土が硬くなり、根が伸びにくくなってしまいます。

「液相」は植物が取り入れる水分はもちろん、水に溶けた栄養分を吸収するために必要。いわゆる「水はけ」や「保水性」に関わる重要な要素です。しかし、液相の割合が高過ぎると水分が多過ぎてしまい、植物が空気(酸素)不足になってしまいます。また、湿害の原因にもなるので要注意です。

「気相」は植物が空気(酸素)を取り入れるのに不可欠。気相の割合が低いと植物の根が酸欠状態になってしまいます。

理想とされる三相の比率は「固相40~50%:液相20~30%:気相20~30%」です。

理想とされる三相の比率

三相のバランスが崩れるとどうなる?

固相が多過ぎる
  • 土が硬くなり、根が伸びにくくなる
  • 空気や水の通り道が減って、通気性・排水性が低下する
  • 微生物の活動が鈍くなり、腐植の生成が進みにくくなる
液相が多過ぎる
  • 水はけが悪く、空気(酸素)不足の原因になる
  • 湿害が起こりやすくなる
気相が少ない
  • 根の呼吸ができず成長が止まる(根の周囲の空気が不足する「嫌気状態」)
  • 微生物の種類が偏り、分解や養分循環が滞る
  • 土壌病害が発生しやすくなる

この三相のバランスは、ヘアスタイルをイメージすると分かりやすいかもしれません。髪の毛(固相)にほどよい水分(液相)が含まれ、スタイリングで空気(気相)もほどよく含ませることによって、ふわっとしたつや髪の素敵なヘアスタイルに仕上がるわけです。

さて、ここまで「土の成り立ち」と「よい土」の条件についてお話ししてきました。

「よい土」づくりは難しそうだと感じた方もいらっしゃるかもしれませんが、ポイントを押さえれば大丈夫! 一緒に学んでいきましょう。

「腐植」と「団粒構造」が“よい土”づくりのキーワード!

この連載の第1回でもお伝えしたように、ミミズや有益な微生物たちが有機物を分解し、窒素などの養分を供給してくれる“生きた土”では、植物は健全に育ちます。そこで欠かせないのが、先にも述べた「腐植」です。

「腐植」とは、植物や動物の死骸が微生物によって分解されてできるもので、“生きていない有機物”とも呼ばれています。土の中では栄養分の保持、水分の調整、微生物の繁殖の場となる大切な存在です。腐植があることで「よい土」――つまり、水もちがよく、水はけもよいという相反する性質を持つ、三相のバランスが整った「団粒構造」の土になります。「団粒構造」とは、土の粒子が集まって小さな塊をつくり、大小の団粒がバランスよく混ざり合った土の状態です。

団粒構造の土

団粒構造の土

そうした微生物の豊かな循環の仕組みを生かすのにおすすめなのが、腐葉土。庭はもちろん、プランターや花壇でも、落ち葉などが微生物の力で分解されてできた腐葉土を混ぜることで、簡単に「よい土」に近付けられます(腐葉土を使った土づくりの手順は、第1回をご覧ください)。

腐植の主な効果

保肥力の向上 養分をしっかり土にとどめて、植物に届ける
pHの緩衝作用 土壌の酸性・アルカリ性の変化を優しく調整
団粒構造の促進 土の粒子をくっつけて、ふかふかの構造をつくる
地力窒素の発現 地温が上がると、腐植が窒素を放出して、植物に栄養を届ける
リン酸の吸収促進
(無機養分の供給)
鉄やアルミと結び付いたリン酸を、腐植中の有機酸などが可溶化し、植物が吸収しやすくする
有害物質の吸着
(キレート作用)
重金属などの有害物質を吸着して、植物に吸収されにくくする

バーミキュライトは、優れた土壌改良材!

三相のバランスを整えるには、土壌改良剤を使うのもおすすめです。特に注目したい実力派の土壌改良材が、キラキラとした輝きが特徴的な「バーミキュライト」。

その原料は「苦土蛭石(くどひるいし)」という鉱石です。850〜1000℃で焼成すると、苦土蛭石に含まれる雲母がパイ生地のように膨張し、何層ものりん片状に変化します。膨らんでできた隙間に水分と空気が保持されるため、液相と気相を安定させ、微生物のすみ家にもなるわけです。

高温で焼成すると、苦土蛭石に含まれる雲母がパイ生地のように膨張! これが三相のバランスを整えるカギ。

高温で焼成すると、苦土蛭石に含まれる雲母がパイ生地のように膨張! これが三相のバランスを整えるカギ。

液体に溶けた肥料分をしっかりキープするため、保肥力も高い! パイ生地のように重なった空気の層が、”羽毛布団”のような断熱材の働きをしてくれるため、土の温度が安定するという、うれしい効果もあります。

バーミキュライト

「バーミキュライトは土をグレードアップしてくれる“守り神”! 粒がそろっていて、ふんわり軽量、土となじみやすいのもいいですね」(山田先生)

良質なバーミキュライトは、明るくつやがあります(劣化してくると色がくすんでくることがあります)。水にぬれてもすぐに崩れないものは、長く使えて土の構造を保ちやすいので、形がしっかりしているものも良質といえますね。

バーミキュライトのすごい効果

①高い『保水性』

  • 粒の中に無数の空洞があり、水分を蓄える
  • 乾燥しやすい育苗期に最適

良好な『通気性』『排水性』

  • 空気の通り道が多く、根が呼吸しやすい環境をつくる
  • 水はけもよくて空気(酸素)不足になりにくい

③『保肥性』に優れる

  • 肥料成分(Ca・Mg・K等)を保持する力が強く、肥料の流出を防ぐ

④『無菌』で『清潔』

  • 焼成されており、無菌。種まき、挿し木用土にも使用できる

⑤『軽量』

  • 軽くて扱いやすい。土の重さを軽量化できる

たっぷりの水やりで、根に新鮮な空気が届く

「よい土」をつくるのと同時に、日々のお手入れでも植物の根の呼吸を助けるためのポイントがあります。それは水やりです!

プランターなら、鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと水やりをすることで、土の中の古い空気が押し出され、新しい水に含まれた新鮮な空気(酸素)が根に届きます(水やりのときに出る気泡の正体は、古い空気です)。雨が降るときも同じ作用があります。

水やりのときに出る気泡の正体は、古い空気

水やりのときに出る気泡の正体は、古い空気

ただし、根は水分と空気(酸素)、栄養分を求めて伸びるため、常に土がぬれていると根はあまり動かず、広がりにくくなってしまいます。逆にいうと、ある程度乾燥することでこれらを探し求めて根がぐっと伸びるわけです。例えば、人間もこたつの上にミカンやお茶がそろっていたら、快適なこたつから出る気が起きずに運動不足になりますよね。植物を「甘やかし過ぎず」に、乾いたら水やりをする、という乾湿のメリハリをつけることが、健やかな根の成長を促すポイントです。

三相のバランスを調べてみましょう

最後に、簡易的な方法ですが、三相の割合を自分で調べる方法をご紹介します。目安として、雨が降った(もしくは水やりをした)3日後くらいの水分が落ち着いた状態の土を使います。

※「土壌三相計」を使えば、より正確に測定できます。

準備するもの

  • 雨の3日後など、水分が落ち着いた状態の土
  • 空き缶や筒状の容器(高さ10cm程度)
  • デジタル計
  • フライパン
  • 計量カップ

手順

1. 土の表面から3cmを取り除いてから、空き缶などの容器を地面に容器の高さまで差し込んで、土を筒状に掘り出す。

2. 1.の土の重さ(生土の重量)をデジタル計で量る。

3. フライパンに土を入れ、弱火でじっくりとカラカラになるまで炒る。炒った土の重さ(乾いた土の重量)をデジタル計で量る。

4. 1.で使った容器に水を入れ、その水を計量カップに移して容積を量る。

5. 以下の方法で三相を計算する。

液相率 ={(生土の重量 − 乾いた土の重量) ÷ 容積}× 100

固相率 =(乾いた土の重量 ÷ 容積)× 100

気相率 = 100 − 液相率 − 固相率

おわりに

“よい土”の条件とは、気相・液相・固相の「三相」のバランスが整っていること。「よい土で植物を育てる」ということは、人間に例えるなら「生きるのに欠かせない空気、水と食べ物が過不足なく整い、ふかふかのベッドがある心地よい部屋で過ごせる」ようなイメージです。バーミキュライトはそんな環境を整えてくれる「守り神」といえるでしょう。

次の第4回では、今回お伝えした内容を活用した「古い土の再生」についてご紹介します。

文:加藤恭子 写真:加藤熊三

山田朗子

園芸家・庭人(にわんちゅ)

山田朗子

やまだ・さえこ

自宅の庭づくりをきっかけに園芸・造園の世界へ。造園土木施工の専門教育課程を修了したのち、植木屋、造園の現場、バラやハーブ、寄せ植えの分野で実務経験を積む。自然をお手本としたナチュラルな植栽を得意とし、庭のお手入れ、寄せ植えなど、植物に関わる幅広い仕事に携わりながら、園芸講座の講師としても活躍中。肩書の“庭人”は、「“庭に関わる人”として、庭と人とをつなぐ」という園芸家としての原点に由来する。

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