文・写真
三橋理恵子
みつはし・りえこ
園芸研究家。一年草・多年草をタネから育てる研究をしている。著書に『三橋理恵子の基本からよーくわかるコンテナガーデン』(農文協)、『イラストで学ぶ、はじめてのガーデニング』(角川マガジンズ)などがある。
※タネのまき時などは神奈川県横浜市における栽培に基づいて記載しています。
【第15回】春まき計画スタート
2016/03/22
庭で春の気配を探し始める頃になると、春のタネまきの季節がやってくる。いや、本当はもう2月から私のタネまきは始まっているのだが、やはりメインは春からだ。この時期にまくのは初夏から秋まで咲く熱帯性の草花たち。春咲きの一年草が終わると、入れ替えをする。早い時期にタネをまくと、植えつけの適期には苗が育ちすぎてしまう。苗は、ちょうど植えどきに直径9cmのポットの底から白い根が飛び出すくらいがちょうどいい。草花の種類にもよるが、タネをまくのはだいたい植えつける2カ月前が目安だ。
実は私はここ数年、夏花壇の魅力にすっかり取りつかれている。これまで一年草花壇の主役は絶対に春だと思っていたのに、夏から秋の草花たちもすばらしいと今さらながら気づいた。夏花壇が好きになった理由は、前はさほど好きでなかった赤色やローズ色、オレンジ色などの鮮やかな色の花を生かせるようになったから。今は積極的にこうした濃い色を重ねて花壇作りをしている。
夏花壇の苗はさほど大きく広がらない分、草姿も乱れないし、比較的倒伏しにくいのもよい点だ。夏花壇の魅力を知ってから、春まきの楽しみもぐんと増した。
私が夏花壇で定番にしているお気に入りたちを紹介しよう。一番はやはりセンニチコウ。高性種やわい性種など、毎年いろいろな品種のタネをまいて、庭に小さなポンポンをたくさん咲かせている。花もちがよいので、夏にはとても重宝する。特におすすめなのがわい性種。株いっぱいに咲くので、たくさんタネまきして植えると華やかだ。
昔から大好きなのはジニア。ヒャクニチソウという和名でもおなじみで、花もちがよいところから名づけられた。最近気に入っている品種が「アズテック サンセット」。これはバイカラーの花が夏らしく、しかもとても丈夫。初夏から秋遅くまで次々に花が咲く。もちろん、ジニアの種間交雑で生まれた園芸品種である「プロフュージョン」も欠かせない。なにより存在感があるし、花色も豊富。うちではハダニがつきやすいのが難点だが、ハダニに効く殺虫スプレーを1本用意することで問題は解決できた。
それから毎年欠かさずまくのは、紫葉のバジル「ダークオパール」。これを赤やローズ色、紫色といった濃い色の花と合わせると映える。赤紫色の花がかわいらしく、草丈も30〜40cm程度と扱いやすい。
もうひとつ早春に欠かさずタネまきするのが、ベゴニア。木立ち性のタイプから品種改良された花壇用の園芸品種がいろいろある。「ドラゴンウィング」や「アイコン」などが代表で、鉢植えにするととてもエレガント。しかも冬は屋内に入れれば、そのまま花を楽しめ、翌年は大株に育つ。ベゴニアのタネは微細なので、注意してまく必要がある。早春から春早めにまいて、屋内でしっかりまき床を管理すると成功しやすい。
さらに、丈夫で毎年庭で長くよいパフォーマンスを見せてくれるのがケイトウ類。種類は「羽毛けいとう」「やりげいとう」「葉げいとう」などいろいろあって、草姿も草丈もさまざま。特に「やりげいとう」は、花壇や大型コンテナで縦のラインが生きる。
夏花壇作りで最近コンセプトにしているのが、「濃密色」。パステルカラーの花をほとんど使わず、赤やローズ色、オレンジ色、紫色といった濃い色の花を集めて、銅葉の葉もの類などと合わせる。好みもあるだろうが、華やかさに上品さも加わる。トロピカルな雰囲気もたっぷりだし、夏らしい草花の花色を最大限に生かせる色合いだと思う。
濃い色を花壇にぎゅっと凝縮させると、そこだけ空気まで濃密になったよう。夏の花たちは、比較的株がコンパクトにまとまり、花つきも春ほどではないので、葉の緑の分量も多くなる。決して花でゴテゴテした感じにはならないので、たくさん植えても自然な風情になる。今年もこれまで試したことのない濃密色の夏花壇を夢見て、まずはタネまきに精を出そうと思う。
次回は「観賞用野菜を花壇で使う」を取り上げる予定です。お楽しみに。