タネから広がる園芸ライフ / 園芸のプロが選んだ情報満載

連載

【第21回】秋のタネまき私流

文・写真

三橋理恵子

みつはし・りえこ

園芸研究家。一年草・多年草をタネから育てる研究をしている。著書に『三橋理恵子の基本からよーくわかるコンテナガーデン』(農文協)、『イラストで学ぶ、はじめてのガーデニング』(角川マガジンズ)などがある。


※タネのまき時などは神奈川県横浜市における栽培に基づいて記載しています。

【第21回】秋のタネまき私流

2016/09/27

我が家の冷蔵庫の最上段には、たくさんのタネが保管されている。春まき用、秋まき用、野菜、パンジー・ビオラ、宿根草と、それぞれ保管袋に入れて分類してある。一年の初めは1月だけど、学生さんなら4月が始まりの時。そして私たちガーデナーなら9月だろう。ここからタネをまき、来春に向けてスタートをきる。新しい気持ちでまたやるぞ、と心は静かに燃えている。まずはきちんと計画を立てて準備をし、段取りを踏みながら一歩一歩進んでいく。

そういえば20代の半ばから、長年このリズム感で生活してきたのだな、と実感する。もうすっかりこれに慣れていて、9月になると自然に次の庭作りへと思いが巡り、身体も動く。その資本となるのが、小さなタネたちだ。

来春、玄関側のスペースで試したいのは、濃い赤色を主役にした花壇。春というとパステル系の花が多いが、今年は思い切ってここから脱出して、赤色と葉の緑色のコントラストを楽しもうかと考えている。もちろん赤い花だけではべったりとした印象になるので、ピンク色や紫色、黒系の花も混ぜて、できたら濃い色メインでパワフルにまとめたい。

毎年、タネの入手がしやすい種類です
(1)キンギョソウ(2)デルフィニウム(3)寒咲きジャノメギク(ベニジュウム)(4)バーベナ(5)フェリシア(6)ミムラス

このようにいろいろな試みができるのは、一年草花壇を作る一番の楽しみだ。長年、庭作りを行っていると、そう新しいことは思いつかないが、切り口を変えれば新鮮な取り組みになる。
赤い花のタネはそう多くないので、今年はさまざまなカタログをじっくり見て検討し、いろいろな種類を買いそろえた。春に咲く赤い花はイメージしにくいが、花色のバリエーションが豊富な草花に多い。キンギョソウ、ストック、ポピー、ナデシコなど、探せば案外見つかるものだ。
一方、デッキのある庭では、パステル調の花をいろいろ選んで、ふんわり華やかにまとめてみたい。どんな春になるのか、育てる前から楽しみで仕方がない。
秋まきできる草花は種類がたくさんある。だが、販売されているのはそのすべてではなく、ほかにもまだ知らない世界があるかもしれない。そんなあまりなじみのない草花たちも写真で紹介しよう。

こちらもタネが手に入りやすい種類です
(1)シノグロッサム(2)ラグラス(3)アイスランドポピー(4)スイートピー(5)スカビオサ

秋のタネまきはまず準備から。今年まくタネを出して、まく順番ごとに袋に分ける。そしてタネまき用土や用具をそろえる。秋まきはふつうヒガンバナが咲く頃と決まっているが、私はたくさんの種類をまくので、9月の初めからスタートさせる。まく順番は粒の小さなものから。小さな粒は生育に時間がかかるので、早めにまく。微細なタネは気温が高くても徒長しにくい。秋まきの発芽適温は20℃くらいだが、比較的高温でも発芽には問題ないし、気温が高い方が発芽までに日数がかからない。ただ、直射日光でまき床が乾きやすいので、まき床の置き場所だけには気をつけた方がよい。

タネまきは床まきが基本。前は小さめのお豆腐のパックをたくさん並べて、ひとつのまき床に1種類ずつまいていたが、最近はセルトレイをよく利用している。各セルが3~5cmのものを使い分けている。苗が数株しか必要でない時は、少しずつまけるので便利だ。しかもたくさんの種類がまけるので、いろいろまきたい私にはぴったり。ただし、セルトレイは個々に管理はできないので、大切に育てたいようなものは、個別にまく。またセルトレイまきは、場所をとるので外置きが基本だ。

あまり見かけない一年草ですが、丈夫でタネからよく育ちます
(1)イオノプシディウム(2)ファセリア(3)ヘリプテラム(4)アロンソア(5)オンファロデス

秋まきは、ほぼ9月ひと月が勝負だ。10月に入って適期になるのは、発芽適温のやや低いデルフィニウムとラークスパーくらい。また、スイートピーも高温でタネが腐らないように、遅めにまく。だが10月にまくと、苗の生育期間が短くなるので、苗が十分大きくならないうちに冬を迎えることに。そうすると、小さいままで成長が止まりやすく、耐寒性も弱くなってしまう。

タネをまいて発芽して、本葉が数枚出れば、直径6cmのポットに1本ずつ鉢上げをする。ここで苗は、すくすく育っていく。ポットの底から根が飛び出るくらいになれば、次は直径9cmのポットに鉢替えだ。鉢替えをした時は、ぶかぶかの洋服を着ているみたいな苗たちも、数日すれば見劣りしないくらいに育っている。鉢替えの効果はとても大きい。ここでしっかり根を張って丈夫な苗に育てば、花壇の土の準備ができ次第、定植できる。

なじみがない種類かもしれませんが、育てやすいものばかりです
(1)クラーキア(2)エキウム(3)アークトチス

タネから草花を育てるのは、育苗から花を咲かせるまでの過程を楽しむことにある。
この間、園芸店に行ったら、開花しているタマシャジンの鉢植えが売られていた。私がタネをまいて育てているものと、大きさも花の咲き加減もちょうど同じくらい。もちろん、これを買って花だけを楽しむ人もいるのだろうけれど、花を咲かせるまでの過程はわからない。
私はやっぱり植物の成長自体を楽しみたい。しかも、時間がたっぷりある秋から冬がいい。植物を育てるのが好きなら、やっぱりタネから育てたいと、つくづく思う。

園芸店などで苗ではあまり見かけない種類です
(1)バージニアストック(2)ライア(カリフォルニアデージー)(3)アナガリス(4)ディアスシア(5)レゴウシア(ビーナスルッキンググラス)

次回は「こだわる道具こだわらない道具」を取り上げる予定です。お楽しみに。

この記事の関連商品

この記事に関連するおすすめの商品は、園芸通信オンラインショップから購入いただけます。

JADMA

Copyright (C) SAKATA SEED CORPORATION All Rights Reserved.