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連載

【第23回】草丈と草姿から植栽を作る

文・写真

三橋理恵子

みつはし・りえこ

園芸研究家。一年草・多年草をタネから育てる研究をしている。著書に『三橋理恵子の基本からよーくわかるコンテナガーデン』(農文協)、『イラストで学ぶ、はじめてのガーデニング』(角川マガジンズ)などがある。


※タネのまき時などは神奈川県横浜市における栽培に基づいて記載しています。

【第23回】草丈と草姿から植栽を作る

2016/11/22

草花は花や葉の形の違いだけでなく、姿もさまざま。草花の草丈や草姿は、花壇作りのポイントになる。
草丈は大きく分けて草丈の高い高性種と、低いわい性種がある。その中間の膝丈ぐらいの高さのものをニーハイ種と呼ぶこともある。また、茎が立ち上がる立性タイプと、はうように伸びて枝垂れるほふく性タイプがあり、趣も使い方もだいぶん変わる。茎が伸び巻き付いて育つ、つる性のタイプもある。また、茎がたくさん立ち上がるタイプの他にも、デージーやジギタリスなどのように地面に張り付くように茎を広げるロゼット型と呼ばれるものも多くある。これは花の時期になると、花茎を立ち上げる。

(1)高性種の代表、セントーレア「ブラック ボール」(2)ニーハイ種のサルビア コッキネア(3)わい性種のアゲラタム(4)ロゼット型のイングリッシュデージー(5)つる性のスイートピー(6)枝垂れるように育つほふく性のリムナンテス

花壇の多様性を何よりも重視する私は、草花の種類や花色だけでなく、草丈や草姿のことをいつも考えている。これらの異なるタイプの草花を適材適所に配置すると、バラエティーに富む花壇や庭を作れる。上へ、下へ、横へなど動きを出すことで、庭の表情付けに役立つ。
同じようなわい性の草花を並べて植えただけでは、花壇の魅力は半減してしまう。その後、育てる楽しみだって少ない。草丈や草姿の異なるものを組み合わせると、多様感はぐんとアップするし、お互いを引き立て合う効果も生まれる。それに、いろいろな組み合わせを切磋琢磨(せっさたくま)して試していると、必ず花壇のセンスアップにつながると思う。その意味でも草丈と草姿は重要だ。園芸店で販売される植物は、茎がたくさん立ち上がって咲くタイプがほとんど。これを基本に、違うものをどう組み合わせるかがポイントになる。

花壇では手前にわい性種、真ん中にニーハイ種、背面に高性種が基本。コンテナでも、同じようにわい性種から高性種までを組み合わせると華やかです

草丈は同じ種類でも品種によって違いがあり、それが品種の個性の一部になっている。例えば、ナデシコの中には、15~20cmぐらいのわい性でこんもり茂るものもあるし、茎が100cmぐらい長く伸びるものもある。中でも高性種は、もともと切り花用として作られた品種だ。高性種のように茎が伸びるものは、家庭の庭で育てるときは支柱を立てる必要がある。

去年の春に訪れた植物園で、高性種のニゲラが群植されている場所があった。たまたま嵐の後で、株は残らず倒れていた。今年、訪れたときは、やはりニゲラが植えられていたが、茎が太く草丈の低い品種に変わっていた。しかもフロックスやクリサンセマム「ノースポール」、シノグロッサムなどと混植されていた。高性種を他の草花が支える役割をしていた。

高性種が伸び過ぎて乱れたり、倒れやすいのは事実。私は品種を選ぶときに、草丈の情報もよく精査する。草丈80cmより60cmの品種を、という具合になるべく草丈の低い品種を選ぶようにしている。特に小さな花壇では、高性種は持て余すことも少なくない。倒れにくさ、まとめやすさからいっても、草丈はより低めにまとめる方が無難だ。夏咲きの熱帯性草花の中には、ニーハイ種が多い。メインで使うと管理がしやすく、ボリュームも豊かになる。

キンギョソウの高性種(左)とわい性種(右)。わい性種は茎が何本も伸びる株立ちタイプが主流です

デルフィニウムの高性種(上)とわい性種(下)

ナデシコの高性種(左)とニーハイ種(右上)、わい性種(右下)。品種により、草丈はバラエティーに富んでいます

高さだけでなく、花壇では隣同士の距離感も重要だ。草丈が縦なら、こちらは横の話だ。株間は空き過ぎていても、詰まり過ぎていても美しくない。タネから育てる場合は、タネ袋の解説に、株間をどのくらい空けたらいいか、その目安が記載されている。20cmと書かれていれば、株の中央から隣の株の中央までの距離が20cm必要ということ。草花の生育度合にかかわらず、株間を設定できる仕組みになっている。
わが家のような小さな庭では、まず株間の空き過ぎで悩むことは少ない。苗がたくさんあって、いつも植え過ぎが問題になる。窮屈に植えられた花壇は、見る側からも窮屈そうに見える。美しく整ったイングリッシュガーデンでも、花同士は仲良く並んで咲いているように見えるが、そうではない。実は隣の草花との株間は広く空いていて、それでちょうど美しく見える。ただ、植えてから植物はだんだん育っていく。ちょうど開花するぐらいの時期に程よい株間になるのが理想だが、花期の長いものなどは、適当な株間にするのは難しい。

苗を植えたばかりの夏花壇。株間が空いていて寂しいように見えますが、この後、大きく株を広げます

草花の生育については、年々、痛感することが一つある。それは毎年、同じ種類、品種を育てても、草丈も微妙に違うし、株張りは大きく変わることもよくある。これは特に春咲きのものに顕著だ。それは気候のせいでもあるし、土や水、栄養状態の違いも関係する。だから、一度試してうまくいかなくても、もう一度トライすると全然違う結果になることも少なくない。草丈と草姿も、草花の生育次第。これも事実なのは確かだ。いろいろな組み合わせを試して、その時々のドラマを楽しむのもいい。

草丈と草姿の違うものを組み合わせて、多様性に富む花壇を作りましょう

次回は「草花と草丈」を取り上げる予定です。お楽しみに。

JADMA

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