タネから広がる園芸ライフ / 園芸のプロが選んだ情報満載

連載

【第12回・最終回】自然セラピーの効果的なリラックス法

宮崎良文

みやざき・よしふみ

千葉大学環境健康フィールド科学センター教授・副センター長20194月からグランドフェロー)。専門は生理人類学。自然セラピー学の確立を目指し、人が自然に触れると安らぐという感覚を科学的視点から研究している。

【第12回・最終回】自然セラピーの効果的なリラックス法

2019/11/12

「花と緑 癒しの科学」連載の最終回となりました。本連載においては、1回目と2回目において、「自然と人の関係」と「快適性の考え方」を示し、3回目~7回目では、花、観葉植物、盆栽、木材を見たり、香りを嗅いだり、触ったりしたときの生理的なリラックス効果を紹介しました。8回目~10回目では、公園や森林等のフィールドにおけるリラックス効果を記し、11回目では、自然セラピーが持つ「生体調整効果」を紹介しました。


最終回では、日常生活において、どのように自然セラピーを楽しみ、ストレス状態の改善に使えばよいのか提案したいと思います。

1.自然セラピーは能動的快適性

上の図に快適性の種類について示しました(引用文献1)。「受動的快適性」と「能動的快適性」です。「受動的快適性」は不快の除去を目的とします。代表的な不快は、暑さと寒さです。暑くて汗だらけのときに涼しい喫茶店に入ると快適ですし、寒くて震えているときに暖かい部屋に入ると誰でも快適に感じます。個人差はありません。私が10歳のときに東京オリンピックがありましたが、そのころの日本は、この「受動的快適性」を目指していました。近所には冷房が効いた公共施設はありませんでしたし、家の中で氷が張ったこともあります。一方、今の日本は、「能動的快適性」の時代に入りました。「受動的快適性」が確保され、五感を介した+αの獲得に向かっています。当然、大きな個人差が生じます。自然セラピーも「能動的快適性」の範疇に含まれます。

それでは、どのようにして、自然セラピーを楽しめばよいのでしょうか。

2. 好みの自然がもたらす生理的リラックス効果

結論から申し上げると、自分の好きな「自然」を選択することです。

上の図に「小さな自然」から「大きな自然」に至る具体的な「自然」を示しました。私たちは、これまで、ここに示したほとんどの「自然」において実験を行い、全ての結果で、生理的リラックス効果があることを報告しています。詳細は、本シリーズ1~11回をご覧ください。さらに、自分にとって快適な自然を選択することによって、大きなリラックス効果が得られることも分かっています。同じ自然由来の刺激であっても、その人が好きであると感じている場合には、大きな効果が得られます。自分の好みの自然を選択することが重要なのです。

つまり、自分にとっての「快適な自然」を選ぶことによって、「生理的リラックス効果」が得られ、そこには「科学的エビデンス」があるということなのです。

上の写真は、自宅のバルコニーと私が使っている木の机です。これが、私の代表的な「快適な自然」です。自分の好きな自然を探して、自然セラピーを楽しみ、ストレス状態の改善に役立ててください。

引用文献

1) Y. Miyazaki Shinrin-yoku: The Japanese Way of Forest Bathing for Health and Relaxation. Hachette UK Company pp192, 2018
2) 宮崎良文Shinrin-Yoku(森林浴)心と体を癒す自然セラピー 192pp 創元社 2018

JADMA

Copyright (C) SAKATA SEED CORPORATION All Rights Reserved.