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【第1回】プランター菜園のための土づくり ~土の物理性~

吉田健一 (株)ハイポネックス ジャパン

よしだ・けんいち

(株)ハイポネックス ジャパンに入社し、植物栽培試験を通して「実践型、土と肥料の基礎知識」を学ぶ。現在はNHK趣味の園芸やグリーンアドバイザー認定講師としても活躍。自宅でも園芸を楽しむサラリーマン園芸家。

【第1回】プランター菜園のための土づくり ~土の物理性~

2018/12/18

「土と根がカギ 吉田流プランター菜園」を6カ月にわたって連載します。土づくりは全ての基本。しっかり学んでおいしい野菜を育てられるようになりましょう!この連載は、私が日本中で野菜や花の栽培セミナーをするときに、皆さんから寄せられた質問に答える形式で進めます。あなたの疑問にもきっと答えられると思います。


さっそく本題に入ります。
実際の土づくりを大別すると下記の3つの条件があります。

①土の排水性、通気性、保水性、重さなどの「土の物理性」 
②土に混ぜる石灰類、肥料などの「土の化学性」 
③土質の向上、根の生育に欠かせない有機物の混合などの「土の生物性」


今月はまず、根の生育のために欠かせない「土の物理性」についてお話ししましょう。

土の通気性と排水性

よくある質問:根の生育にとって「乾きやすい土」がいいのですか?

家庭でのコンテナ菜園の土づくりは、与えられた水でいつまでもプランター内がじめじめせず、湿る、乾くがはっきりした「乾きやすい土づくり」が大切です。根から肥料や水分を吸収するには酸素が必要で、酸素不足では吸収しにくくなります。土に水を与えて湿らすことは容易ですが、じめじめした土を乾かすことは難しいのです。

「乾きやすい土」をつくるヒントは、畑の「畝(うね)」にあります。トマト、ナス、キュウリ、イチゴは必ず畝に植わっていますが、お米はフラットな水田に植わっています。つまり、畝に風が当たり、土が乾きやすくなる工夫がなされています。一方、お米は、いつも土が湿ってないといけないのでフラットな状態です。プランター栽培は畝を立てることができないので、通気性、排水性をよい土が重要になってきます。

野菜が元気に生育し、根が健全に生育するには、土の中に酸素が必要です。いつもじめじめしている土は酸素量が少なくなっています。水分や肥料を根から吸えなくなり、根の張りが悪く、茎が徒長(茎が細く、節と節の間が伸び、株全体が弱々しく育つこと)しやすくなります。ひどいときは、根が窒息し「根腐れ」を起こします。

プランターの底部で根腐れが起こりやすい理由は、底部に微塵(みじん)(細かい粒)がたまって水の流れが止まり、過湿になりやすいためです。プランターの底に鉢底石を敷く理由は、排水性をよくして底部の過湿を防ぐためです。また、根の生育が悪いと病虫害にかかる原因の一つになります。

根から酸素、水分、肥料を吸収しやすくするためには土に隙間が不可欠です。細かい土の粒(単粒)が多い単粒構造の土は隙間ができにくく、通気性、排水性が悪くなり根に酸素を与えにくくなります。土に隙間をつくるためには、粒状の土(団粒)が多い団粒構造の土を使用するようにします。土の団粒化は腐葉土などの有機物を土に混ぜることにより、土の中の微生物の餌になり腐植ができ、この腐植や微生物が分泌する粘液質などにより単粒を団子状にして団粒にします。団粒化については、「土の生物性」で詳しくお話しします。

土の保水性

よくある質問: 「乾きやすく保水性のよい土を選ぶといい」と本には書いてありますが矛盾していないですか?

「乾きやすい土」は野菜が生育する上で重要な条件ですが、水を与えても急激に土が乾燥すると、根の先が傷みやすくなります。水やりをした後は土がゆっくりと乾いていく必要があります。ゆっくり乾いていく間隔は、季節、鉢サイズ、土の量により異なります。

プランター栽培では菜園と比較すると、プランター内の土の量が少なく、夏などは急激に乾燥するために、保水性のある赤玉土を混合するようにします。赤玉土は粒に水分を含み保水性を高め、ゆっくりと乾きます。加えて、形状が粒状なので、土の中の隙間をつくり、通気性をよくし、土が過湿になりにくいという特性もあります。逆に、土が細かく微塵の多い土は、保水性が高い半面、通気性が悪く、土が過湿になります。特に、鉢の底部は水がとどまりやすいため、単粒構造の土が多いと保水性が高くなりじめじめしやすくなります。

使用する赤玉土の混合量は、市販の野菜専用培養土に2割程度を目安にします。注意することは、使用する赤玉土のサイズですが、土に均一に混ざり、隙間もつくりやすいため「小粒」をおすすめします。

土の保肥性

よくある質問: 水をたっぷり与えるとプランターの底から肥料成分は流されないの?

土の中にある肥料成分は、水やりごとに流されていきます。特に、プランター栽培と菜園を比較すると、プランター栽培は土の量が少なく水やりの回数が多くなるため、肥料成分は流されやすく、プランター内の変動が大きくなります。土の中の肥料成分を保持する力を保肥性といいます。実は赤玉土は保肥性にとても優れ、肥料成分の流亡を防ぐには最適なのです。

少し難しくなりますが、赤玉土が保肥性に優れている理由をお話しします。土の表面は電気的にマイナスに帯電しています。特に、赤玉土はマイナスの帯電力が強いため、土の中で水に溶けたプラスイオンの窒素(アンモニア)、カリ、マグネシウム、カルシウムなどが赤玉土の表面に吸着され、肥料成分が流されにくくなります。赤玉土のサイズとしては小粒が適しています。市販の野菜専用培養土に赤玉土(小粒)を2割程度混合すると、保肥性が増します。

また、プランターの底部は粘土質の土の微塵(単粒)などが集積しやすく、過湿になり、保肥性も高くなり過ぎるため、根腐れを起こしやすくなります。そのため鉢底には、保肥性が弱く、底部に集積しやすい余分な肥料成分を流す働きのある軽石などを鉢底石として使用することが多いです。

土の重さ

よくある質問:軽い土は作業や移動が楽なのに、トマトなどの果菜類には合わないの?

野菜の種類により異なりますが、軽い土に植えると草丈のあるトマト、ナス、ピーマンなどは株元がぐらつき、倒れやすくなります。さらに草丈の高くなるキュウリやゴーヤーなどのつる性の植物は、よりしっかりした支柱が必要になり、軽い土だと支柱が立てられません。土の重さは一般に1L当たり400~600gといわれますが、株を植え付ける前に1m程度の支柱がぐらつかず、固定できるかどうかが目安になります。株や支柱がぐらつくと、根が十分に張り切らず、生育が悪くなります。

持ってみて軽いと感じる土はピートモスやココピートなどが多く含まれるため、粒子が細かく、栽培しているうちに、水はけが悪くなり、土が圧縮されて表面の土が沈下したりするため、栽培期間が長い野菜には適しません。

今月のまとめ

野菜作りは根づくりから。微塵を少なくし、土の中に隙間をつくり、土の物理性を改善して、乾きやすい土づくりから始めましょう。

次回は「【第2回】プランター菜園のための土づくり ~土の化学性と生物性~」です。お楽しみに。

JADMA

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