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【第5回】プランター菜園の土づくり

吉田健一 (株)ハイポネックス ジャパン

よしだ・けんいち

(株)ハイポネックス ジャパンに入社し、植物栽培試験を通して「実践型、土と肥料の基礎知識」を学ぶ。現在はNHK趣味の園芸やグリーンアドバイザー認定講師としても活躍。自宅でも園芸を楽しむサラリーマン園芸家。

【第5回】プランター菜園の土づくり

2019/04/16

前回まで土と肥料の基礎知識を説明してきました。今回は、土と肥料の基礎知識をもとに実際の土づくりと古土の再利用にチャレンジです。

オリジナル培養土をつくろう

よくある質問:オリジナル培養土(単用土の混合)のつくり方は?

単用土の種類

  種類
基本用土 赤土、赤玉土、真砂土、黒土、鹿沼土など
改良用土
(有機質)
腐葉土、ピートモス、堆肥(植物質、動物質)、もみ殻くん炭※など
改良用土
(無機質)
軽石、日向土、パーライト、バーミキュライトなど

※もみ殻くん炭 : もみ殻を焼いて炭化させもの。通気性、排水性に優れる半面、pH8程度のアルカリ性のため、混合は10パーセントが上限の目安です。

私がおすすめする吉田流オリジナル培養土づくりは、市販の赤玉土、腐葉土、軽石など、性質の異なる数種類の単用土を混合することがポイントです。「【第1回】プランター菜園のための土づくり ~土の物理性~」で説明したように、土(単用土)には「基本用土」と「改良用土(有機質)」と「改良用土(無機質)」があります。

オリジナル培養土の基本配合は、基本用土が5~6割に対して、改良用土(有機質)が3~4割、改良用土(無機質)が1~2割です。基本用土の赤玉土のサイズは均一に混ざりやすい小粒が適しています。

オリジナル培養土のつくり方

配合例として下記のように配合します。この場合、苦土石灰は3g/L、緩効性粒状肥料(マグァンプKなど)は標準量を混合します。

配合例①:赤玉土(小粒) 6割、腐葉土 3割、軽石(小粒) 1割
配合例②:赤玉土(小粒) 5割、腐葉土 3割、もみ殻くん炭 1割、軽石(小粒)1割

簡単な単用土の配合方法は、15Lのバケツを用意し、バケツの内面に目盛りとして等間隔で10本の線を引きます。配合例①の場合、赤玉土(小粒)は6目盛り、腐葉土3目盛り、軽石(小粒)1目盛り入れた後、大きなビニール袋に移し替えて、十分に混合します。

オリジナル培養土のチェック方法

プランター菜園では使用する土の容量が多く、通気性、排水性が悪くなりやすいため、野菜を植え付ける前に配合したオリジナル培養土の通気性、排水性のチェックが必要です。チェック方法として、直径15cm 鉢(5号)に混合したオリジナル培養土を鉢の縁までいっぱいに入れ、2~3回地面にトントンと軽くたたき、ウオータースペースを約1cmにした後、ジョウロで水を与えます。表面に水がたまり、染み込みにくかった場合は排水性が悪いため、もう一度配合を見直します。排水性をよくするために、腐葉土や軽石を増量します。腐葉土を多く入れ過ぎると土が軽くなり、トマトなどの草丈が高い野菜は倒れやすくなるので注意します。

市販の培養土でグレードアップ培養土をつくろう

よくある質問:市販の培養土を購入するときに気を付けることは?

袋を開けることはできないですが、市販の「野菜専用培養土」を購入するときは下記の項目をチェックします。
・培養土の裏面の品質表示ラベル(家庭園芸肥料・用土協議会)などから、使用原料、酸度(pH)、肥料の有無などの確認
・価格は20L程度の容量で500~600円以上が目安
・あまり軽過ぎると、株が倒れやすくなるので適度な重さがあること
・袋の上から土の粒子を確認して、土が細かく感じられるものは避ける
・開封後は、土にあまり水分を含んでいないか、緑藻やキノコなどが発生していないかを確認する

市販培養土のグレードアップは単用土を混合するだけで簡単にできます。栽培期間が長いトマトやナスなどは、栽培中に通気性、排水性が悪くなったり、保肥性が低下したりするので、赤玉土(小粒)と腐葉土を新たに混合するようにします。このようにすると生育がよくなり、収穫量も増えます。また、土の再利用をするときにリサイクルしやすい土になります。

市販培養土への混合方法は、市販培養土8割に赤玉土(小粒)と腐葉土を各1割混合します。また、元肥の有無を確認して、配合されていない場合は入れるようにします。

古土の再利用にチャレンジしよう

よくある質問:古土はなにが悪くなるの?

新しい土に植え付けても、一作が終わるころには土はかなり劣化しています。劣化の原因は「物理性」「生物性」「化学性」に大別できます。
・物理性
生育に伴い土の粒子が細かくなって水はけが悪くなり、土の中が空気不足になります。
・生物性
腐葉土などの有機物が細かくなり通気性、排水性が悪くなるため、野菜の生育に有用な微生物が生息しにくくなります。また、生育によくない微生物や菌が増殖することもあります。
・化学性
土の中の肥料成分のバランスが崩れ、肥料成分が過剰に集積する場合があります。また、土の酸度(pH)も酸性に傾きやすくなります。

よくある質問:古土は繰り返し使うことができるの?

古土は、土の劣化したところを補うことにより再使用できます。古い土を捨てることができない市町村が多いため、処分できないことを前提にした古土の再生方法をご紹介します。

・物理性の改良
土の粒子が細かくなり水はけが悪くなっているため、通気性、排水性のよい新しい赤玉土(小粒)や腐葉土などを混合します。さらに、赤玉土と腐葉土を混合すると団粒化に効果的で、通気性、排水性も改善されます。本来は、古土を1mmのふるいにかけ、みじんを捨てるのが理想的ですが、みじんを廃棄できないため、ふるいにかけずにそのまま使用します。

・生物性の改良
有用な微生物は生息する場所や餌がなくなると、減ってしまいます。また、善玉菌と悪玉菌のバランスが崩れ、病気や根腐れが発生しやすくなります。有効微生物を増やす働きのある腐葉土や、有害物質を吸着し有用微生物を増やす働きのあるもみ殻くん炭などを混合します。

鶏ふん堆肥や牛ふん堆肥などの動物質堆肥は、一般的に粒子が細かいため、水はけをさらに悪くすることがあるので混合には注意が必要です。また、発酵が不十分なものが多く、根を傷めることが多いため使用しないようにします。

・化学性の改良
古土はカルシウム、マグネシウム、カリの塩基バランスが悪くなっている場合が多いため、保肥性の高いもみ殻くん炭やゼオライトなどを混合します。また、欠乏したカルシウムやマグネシウムの補給や酸性化した土の酸度調整のために苦土石灰を混合します。

・その他
古土には消毒が必要ですが、水分を含ませた古土を黒いビニール袋に入れて夏の高温下に1カ月ほど置く方法や、熱湯をかける方法などは十分な殺菌は難しいようです。

私がおすすめするのは、古土を十分に乾かし、残っていた根や落ち葉を取り除くだけの再生方法です。土を乾かすときは、栽培した野菜ごとに古土を乾燥させるようにします。野菜の連作障害を避けるためです。連作障害とは、前年と同じ科の野菜を植え付けると著しく生育が悪くなることです。

再生した土を使用するときは、植えた野菜ごとに別々に使用します。例えば、トマトを植えた古土にトマトはもちろん、同じ科のナスは植えることは避け、別の科のキュウリや葉菜類などを植えるようにします。つまり、科の異なった野菜をローテーションで植え付けていきます。この方法を輪作といいます。

よくある質問:古土を使った土づくりはどうするの?

古土を使った土づくり

古土は新聞紙などの上に広げ、十分に乾かした後、残っていた根や葉などを取り除きます。オリジナル培養土をつくるときに使用した15Lバケツを用意し、乾かした古土5目盛り、赤玉土(小粒)2目盛り、腐葉土2目盛り、もみ殻くん炭1目盛りをバケツに入れ、大きなビニール袋に移し替えて、十分に混合すれば古土再生培養土は完成です。

混合した古土再生培養土に元肥と苦土石灰を混合します。15L当たりの目安は、苦土石灰一握り、リン酸成分の多い緩効性粒状肥料を約二握り混合します。混合して保存する場合は、元肥だけは植え付けるときに施します。

今月のまとめ

今回紹介した「吉田流オリジナル培養土」「市販の培養土でグレードアップ培養土」「古土再生培養土」のどの土をつくるにも、土の通気性、排水性をよくすることが基本です。良好にするためには赤玉土(小粒)と腐葉土を混合することを忘れずに!

次回は「失敗の少ないプランター選びと植え付け方法」です。お楽しみに。

JADMA

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