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連載

【第3回】庭に小さな花壇を作ってみよう[デザイン編]

文・写真

加地一雅

かじ・かずまさ

株式会社エクステリア風雅舎代表。1987年、苗の育成から個人邸の庭のデザイン、施工、メンテナンスまで行う風雅舎を設立し、現在に至る。草花が自然風に咲くナチュラルガーデンを啓蒙、普及されるべく奮闘中。


執筆者の加地先生は2017年12月にご逝去されました。謹んでお悔やみ申し上げます。皆様の園芸知識向上にこの連載を役立ててほしいとのご家族様のご意向から、文章はご執筆当時(2016-2017年)のまま継続して掲載をさせていただくことになりました。時代を感じさせる部分があるとは思いますが、お含みおきの上ご覧ください。

【第3回】庭に小さな花壇を作ってみよう[デザイン編]

2016/03/08

花壇は花の集合体です。たとえ、それが小さな花壇であったとしても、とてもインパクトのある空間ができ上がります。
自分の思いをいっぱい詰め込んだ小さな花園を、想像力を全開させながら作ってみませんか。

イラスト:ハンダタカコ

-ポイント1- 花壇作りは何よりも場所選びが重要

知っておきたい3つの好条件

花壇に植える草花はほとんどが日当たりのよい場所を好みます。直射光が4~5時間以上当たればベストですが、反射光で比較的明るめの半日陰の場所であれば、かなり多くの草花が育てられます。

また、花壇は観賞が目的なので、リビングやダイニングからよく見える場所や玄関まわりなどの道行く人たちが目にする所にレイアウトします。

日当たり以外では風通しも重要です。風は病原菌や虫を飛ばしてくれるのと同時に植物体内の水分の蒸散をうながし、代謝をよくして植物を健康に保ってくれます。さらさらとでも風が通る所を選びましょう。

部屋のソファでくつろぎながら見える景色、台所仕事をしながら何気なく見える景色、家を出る時、帰宅した時見る玄関先の景色など、普段の生活の中でちょっとした潤いや刺激があったらいいなあ、と思う場所で日当たりがよければ、そこがベストポジションです。

-ポイント2- ライン、広さ、高さが花壇の決め手

完成度の高い花壇に仕上げるコツ

パーキングと庭の境界スペースで高木と宿根草の混植花壇

場所が決まれば、どんなラインを引いてどんな形の花壇にするか、そしてどれくらいの広さで高さをどれくらいにするかを考えます。

上の写真の花壇は、庵治石の雑石積みで縁どりし、石は見えない裏側をモルタルで留めています。緩やかな曲線を描いてナチュラル感を演出し、高木で高さを出してデザインの要にしています。植栽は白を基調にブルーやピンクが少し入る程度にして、さわやかな感じを表現しています。

ラインは直線か曲線かで表情がまるで違ってきます。直線はシャープに、曲線は優しく見えます。モダンでメリハリのある表現をしたい時は直線を使い、ナチュラルな表現をしたい時は曲線を使います。

次に広さです。花壇の広さは数株程度が植えられるかわいらしい花壇からある程度ボリュームのある花壇まで、花壇を取り巻く環境全体を見渡してバランスをとりながら決定します。

最後に高さを決めます。高さは、地面と同じレベルから10cm程度と少しだけ上げたもの、さらに20~30cmから50cmくらい上げた「レイズドベッド」と呼ばれるものまで、それぞれ表情がまるで異なって見えますので、しっかり考えて決めます。

これらの作業は実際、庭に出て地面にダイレクトにラインを描くととてもわかりやすいのでおすすめです。

ゲート前の小さな植栽マス。斑入りのエリシマムとピーチ色の花のアロンソワ、キンギョソウ「トゥイニー」などパステルカラーの草花で淡いイメージに

上の写真は、インドネシア産のジャワ鉄平石を約20cm積んだ小さなレイズドベッド花壇です。石の裏側をモルタルで留めていますが、見た目は自然な空積みに見えます。小さな花壇ですが、季節をしっかり彩っています。

玄関前アプローチサイドのレイズドベッド。後ろのフェンスに絡むようにつるバラやクレマチスを、中ほどには高さ30~50cmくらいに育つ宿根草を、前面には低く這い広がるダイアンサスなどの宿根草を植栽

この花壇はジャワ鉄平石を約40cm積んで、このスペース一番の主役としてデザインしています。レベルを高くしている分、日当たり、風通しがよくなり、また土の容量も多いので植物はすくすくと元気に育っています。

-ポイント3- 花壇は“縁どり”で表情が変わる

レンガや石を上手に活用する

赤レンガを白くペイントし、植物も白花でまとめたホワイトガーデンの花壇。中央に主木のエゴノキ、周囲にエキナセア「ヴァージン」、アンゲロニア、トレニア、ノリウツギ「ファントム」などを植栽

花壇の縁どりといえば、まず挙げられるのがレンガです。最近ではさまざまなレンガを入手できるようになりました。色、質感、大きさをチェックして目的の花壇にぴったりくるものを探しましょう。高さが20cmくらいまでならばモルタルを使わずにレンガの上に直接レンガを積む「空積み」が簡単です。

石は丸い玉石や平べったい鉄平石、庭を掘った時に出る不整形の雑石など、いろいろな表情のものがあり、どんな花壇にしたいのか自分の好みで決めます。石も20cmくらいまでならレンガと同じく空積みができます。

上の写真はホワイトガーデンの花壇ですが、宿根草、一年草、低木を取り混ぜて変化を出しています。こちらは高い建物の北側で直射光はほとんど当たりませんが、道路などの反射光で育っています。

また、花壇は水はけがとても大事。日本のように雨の多い国では、植物の生育がよくなるように、まわりの地面よりも少しでも高くした花壇が望ましいです。

センターにはジューンベリーを植えて高さを出し、ウインドーボックスには明るいピンクのペチュニアを、花壇前面の主役には青花の宿根バーベナを配して、明るいイメージを演出

写真のように、石が少し見える程度でも花壇の表情が変わり、土の量も増えて植物が元気に育ってくれます。建物と道路との間の細長い花壇で、ウインドーボックスの花とのコンビネーションで見せています。花壇は平べったい石を縦に埋めて土留めを兼ねて縁どりにしています。

小さな花壇作りは自分の思いをいっぱい込めたデザインから始まります。
感覚を磨いて理想に一歩でも近づけましょう。

次回は「庭に小さな花壇を作ってみよう[植物選び編]」を更新予定です。お楽しみに。

JADMA

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