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連載

【第4回】庭に小さな花壇を作ってみよう [植物選び編]

文・写真

加地一雅

かじ・かずまさ

株式会社エクステリア風雅舎代表。1987年、苗の育成から個人邸の庭のデザイン、施工、メンテナンスまで行う風雅舎を設立し、現在に至る。草花が自然風に咲くナチュラルガーデンを啓蒙、普及されるべく奮闘中。


執筆者の加地先生は2017年12月にご逝去されました。謹んでお悔やみ申し上げます。皆様の園芸知識向上にこの連載を役立ててほしいとのご家族様のご意向から、文章はご執筆当時(2016-2017年)のまま継続して掲載をさせていただくことになりました。時代を感じさせる部分があるとは思いますが、お含みおきの上ご覧ください。

【第4回】庭に小さな花壇を作ってみよう [植物選び編]

2016/04/12

小さな花壇でもたくさんの可能性を秘めています。場所やスペースに合う植物を選んでやればいろいろな表現ができ、辺り一面の雰囲気がガラッと変わります。今回は小さな花壇の植物選びのポイントをお伝えします。

イラスト:ハンダタカコ

-ポイント1- 小さな花壇でも華やかに見せる植物選び

草丈が高い植物を植栽のメインに

中央にデルフィニウム(紫花)、右奥にアークトチス(白花)、左奥にサルビア ホルミナム(紫花)と草丈の高い花を植栽。花壇のへりの中央にキンギョソウ(白とピンクの2色)、右にブラキカム(薄紫花)、左にディアスキア(オレンジ花)を配置

写真は、パン屋さんの前の木製ボックス花壇です。流木を配置して高さとナチュラル感を強調しました。タイル張りの所に分厚い木枠を組み、防根シートを内張りにした、どこにでも設置できる花壇です。深さは40cmあり、ほとんどの植物が育てられます。
比較的、日がよく当たる場所なので、来店されるお客様にも喜んでもらえるように、色のコントラストを出して華やかに演出しました。このように華やかに花で演出したい時は、日当たりがよいのは絶対条件です。

次のポイントは、草丈の高くなる植物を植栽のメインに据えることです。ここではデルフィニウムを使っています。わき枝の花を含めると、結構長い期間楽しめます。サイドには華やかすぎない高性の草花を配置します。こうすることで、全体のボリューム感と華やぎがまるで違ってきます。
ボックスのへりには草丈の低い草花を配置し、あふれ咲くように演出します。長期間咲き続けるブラキカムとディアスキア、それに銅葉のキンギョソウがへりを彩り、花壇全体を引き立てています。

このボックス花壇では、華やぎのある花を選び、高低差を出し、まわりに長期間咲き続ける草花を配置することがポイントになっています。

-ポイント2- ナチュラルテイストの植物選び

花壇でもナチュラル志向は世界的潮流

歩道に面した小さな花壇。夜は小さな明かりがともり、ほのぼのとした印象を与えてくれます

写真は、門前の小さな植えマスの花壇です。小さな花壇でも植物を上手に選べば、可憐な自然風花壇ができます。左手奥に草丈が高くなる薄紫花のエリシマムを、その前に薄黄色のプリムラ ブルガリス、一番手前に銅葉のベロニカ「オックスフォードブルー」を植えています。また、ビオラや宿根ネメシアをランダムに配置し、より自然に見えるように演出しています。最後に土の表面に山ゴケを敷いてでき上がりです。
もう少し日にちがたつと原種の小さなチューリップが咲き、また違ったイメージに映ります。エリシマムはこのあと2カ月ほど咲き続け、50~60cmくらいまで育ち、最盛期には小花をいっぱい咲かせます。また、原種のベロニカやプリムラ、白花アケボノフウロが花時、野趣を添え、より一層のナチュラル感を醸してくれます。

ナチュラルテイストの植物選びのポイントは、小さくて優しい色の花で、ゆっくり成長しつつ大きく育ちすぎない種類を選ぶことです。そしてランダムに配置をして、株間にスノードロップなどの小球根を入れると、思った以上にナチュラル感が増します。草丈の高い植物を植える場合は、風にそよぐ細い花茎の繊細なイメージの植物を選ぶことが重要です。ナチュラルということで山野草を選んでもよいのですが、多くの山野草は開花期間が短いので、改良された園芸植物の中で自然な雰囲気を醸しているものを選ぶことをおすすめします。

-ポイント3- 日陰になる所の植物選び

オブジェや葉ものを取り入れる

日陰にある小さな花壇では、オブジェを使うのもひとつの手

花壇にしたい場所は、必ずしも日当たりのよい所ばかりとは限りません。
日陰になる所でも花壇は作れます。
写真は建物北側の花壇で、直射光は当たりません。玄関先からよく見える場所なのできれいにおしゃれにしたいところです。ここでは、3つのテラコッタのオブジェに葉もののプルモナリア、ヒューケラが絡み合いシンボリックな風景を作ってくれています。オブジェと葉もののバランスがよく、さらにまわりの濃いグリーンとのコンビネーションも、視線を中央に寄せる大きな要因になっています。葉色の違いを普段から観察しておくのも大切ですね。 

さらにこのまわりには、秋にはシクラメン ヘデリフォリウムが、冬にはクリスマスローズが、夏にはチェリーセージが咲いて、彩りを添えてくれます。いずれも長命で長い間、美しい風景を保ってくれます。

日陰の小さな花壇の植物選びは、日陰で育つことが第一条件ですが、なかでも葉ものを選ぶことがポイントです。もともと、日陰に自生している植物は日ざしが弱い分、葉面積を大きくして光合成を補っているものが多くあり、葉のきれいな品種は、遠くからでもよく目立ちます。明るい葉色のものを選べば、葉ものでも明るさや華やぎを感じられる花壇を作ることが可能です。

また、花ではクリスマスローズが一番のおすすめです。真冬~初春の一番寒い時期に彩りを添えて、冬中楽しませてくれます。

いろいろなロケーションの、いろいろな思いのこもった小さな花壇。ワクワク、ドキドキしながら植物選びに励んでください。

次回は「玄関前に小さな花壇を作ろう」を更新予定です。お楽しみに。

JADMA

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