文・写真
加地一雅
かじ・かずまさ
株式会社エクステリア風雅舎代表。1987年、苗の育成から個人邸の庭のデザイン、施工、メンテナンスまで行う風雅舎を設立し、現在に至る。草花が自然風に咲くナチュラルガーデンを啓蒙、普及されるべく奮闘中。
執筆者の加地先生は2017年12月にご逝去されました。謹んでお悔やみ申し上げます。皆様の園芸知識向上にこの連載を役立ててほしいとのご家族様のご意向から、文章はご執筆当時(2016-2017年)のまま継続して掲載をさせていただくことになりました。時代を感じさせる部分があるとは思いますが、お含みおきの上ご覧ください。
【第5回】玄関前に小さな花壇を作ろう
2016/05/10
玄関前は表から見えるソーシャルな場所。たとえスペースが狭くても、効果的におしゃれに見せることは可能です。玄関前を通る人たちにも喜んでもらえる小さな花壇作りは、やってみるととてもやりごたえがありますよ。
-ポイント1- 表に向けて自分らしさを表現
人目につく玄関周りの植栽は腕の見せどころ
玄関は外から家への入り口で、道路からよく見える場所であることが多いです。玄関周りは、表に向けて、住まい手の自分たちらしさを表現できる場であり、道行く人にも見てもらえるので腕の見せどころでもあります。
玄関が東西南北どちらに向いているかで日照条件が変わりますので、まずは自宅玄関の日照条件に適応する植物をピックアップしてから、その範囲内で表現していくことになります。
一年草を植えてシーズンごとに植え替えるのか、数年間は植えっ放しのできる宿根草を植えるのか、はたまた、華やかにするのかしっとりさせるのか、いろいろな表現が可能ですので、普段から植物の知識をいっぱいためておいて、何を植えるのか考えておくことも大切です。
ただ、道行く人を意識しすぎて、がんばりすぎるのも禁物。肩の力を抜いてリラックスして、楽しんでやってください。表現の楽しさを覚えたら、もうやみつきになりますよ。
上の写真は、玄関前アプローチに枕木を使い、枕木周りにリッピアを植えてナチュラルな景観を作った例です。
さらに玄関横にはごく自然なイメージに雑石を積んで植えマスを作り、高さを表現できるアオダモを植え、銀葉のセントーレア「ギムノカルパ」、アガパンサス「クイーンマム」など丈夫な宿根草が足元を飾っています。
ごくごく自然なイメージを表現しました。
こちらは、伊勢ゴロタの玉石を段差のある所の土留めに積み上げ、敷地に入ってすぐ右手にイロハモミジを、一段上がった所にコマユミの若木を、左手奥には趣を変えてドライイメージのオリーブを植栽。
草花類は、明るい所を好む丈夫な宿根草を植えて、明るく開放的な玄関前をデザインしました。
-ポイント2- 樹木とのマッチング
樹木を取り入れて花壇に高さを出す
スペースにもよりますが、草花だけを植栽した平面的な花壇に比べ、一本、木が入るだけでも高さが出てイメージがかなり変わります。平面プラス高さで、空間がより広く感じられるのです。
狭いスペースには大きな木や、今は小さくても将来大きく育つ木は植えられません。比較的コンパクトに育つ樹種や品種が適しています。たとえば、コマユミやクロモジ、ツリバナなど線が細くて樹形が美しい木がおすすめです。
少しスペースにゆとりがあれば、株立ちの雑木類、たとえばアオダモやヒメシャラなどを取り入れれば、見違えるような空間に変身します。中木のバイカウツギや低木のノリウツギなども魅力的な花木で、季節を彩る逸品です。
玄関で人を迎えるウェルカムツリーは、しっかり考えて選びたいものです。
-ポイント3- 玄関前は植えマスかコンテナで決まり!
道路に面した玄関前やコンクリートスペースの演出方法
玄関前は、道路に面していてスペースに余裕がないケースが多いと思います。それゆえ、植物を植えるとなると何かで囲った植えマスを作るか、コンテナで植栽することになります。
植えマスは、レンガや石を積んで作る方法と地面と同じレベルで囲ってフラットなマスを作るのと、2通りあります。玄関前の状況と、どのように見せたいかで決めてください。
上の写真は、玄関前の道路に面したスペースに作った半円形のフラットな植えマス花壇です。アカシデの株立ちを中心に、周囲に季節の一年草をたくさん植えました。ピンクのクレピスとルピナス、ムラサキハナナに白いビオラ、手前に黒葉のクローバーを植えて全体を引き締めています。
一方で、都市部の住宅では玄関前はタイルやコンクリートで固められていることも多く、そのような場所ではコンテナが活躍します。
この写真の玄関には土のスペースはなく、コンテナとつり鉢で構成しています。
向かって右手にコンテナを、ステップを上がって左右につり鉢をセットして、さっぱりとしたイメージの空間になりました。つり鉢は紫のロベリアを、コンテナには白のオステオスペルマムを植え、シンプルで落ち着いた雰囲気を醸し出しています。
植えマスやコンテナ栽培で気をつけたいこと
植えマスやコンテナを使う場合に注意が必要なことは、用土の質です。
地植えに比べて土の量が少ないので、よく改良された用土や良質の培養土を使わないと、うまく育ってくれません。ほかの場所よりも、用土には気を配ってください。
玄関前の小さな花壇は、自分がデザインして育てる楽しさと、道行く人にも楽しんでもらう喜びと、よいことずくめのガーデニングです。ぜひ皆さんもトライしてみてください。
次回は「猛暑でも楽しめる花壇を作ろう」を取り上げる予定です。お楽しみに。