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連載

【第6回】猛暑でも楽しめる花壇をつくろう

文・写真

加地一雅

かじ・かずまさ

株式会社エクステリア風雅舎代表。1987年、苗の育成から個人邸の庭のデザイン、施工、メンテナンスまで行う風雅舎を設立し、現在に至る。草花が自然風に咲くナチュラルガーデンを啓蒙、普及されるべく奮闘中。


執筆者の加地先生は2017年12月にご逝去されました。謹んでお悔やみ申し上げます。皆様の園芸知識向上にこの連載を役立ててほしいとのご家族様のご意向から、文章はご執筆当時(2016-2017年)のまま継続して掲載をさせていただくことになりました。時代を感じさせる部分があるとは思いますが、お含みおきの上ご覧ください。

【第6回】猛暑でも楽しめる花壇をつくろう

2016/06/14

気候変動とやらで、夏がとびっきり暑くなっているように感じます。人も植物もバテ気味の猛暑の中でも、暑さなんか、ものともしない花が、実はたくさんあります。暑い夏のさなか、照りつける太陽に負けずに咲き続ける花を見ると、いっぱい元気がもらえますよ。

イラスト:ハンダタカコ

-ポイント1- 意外と多い真夏のつわもの

原産地や品種改良など、花の由来を確かめて

真夏の暑さもまったく平気な植物で構成された四角いレイズドベッド

日本の夏はとにかく暑いです。この日本の暑さの特徴は、気温の高さに加えて湿度も高いところにあります。多くの植物はこの高い温度と湿度のダブルパンチでダメージを受けます。

ところが温度と湿度が高かろうが、まったくと言っていいほど平気な花があります。それは、熱帯圏が由来の花や、品種改良の結果暑さに強くなった花で、ここ何年か見ているとどんどん種類が増えていると感じます。

上の写真の花壇は真夏の暑さもまったく平気な植物でできています。レイズドベッドの中ほどには高さの出る紫色や絞りのアンゲロニアと、銀葉のプレクトランサス アルゲンタツスを、まわりにはピンクのニチニチソウの「フラッペ」シリーズや白い小花のユーフォルビア「スターマイン」、ほふく性青花のトレニア「カタリーナ ブルーリバー」を、アクセントに斑入りのランタナやミントリーフを植えています。

暑さに強い植物の一例として、まずあげられるのがアンゲロニア。紫、ピンク、白と涼しげな花色で、猛暑でもバンバン咲いてくれます。葉もので空間を埋め尽くすコリウスはカラフルでインパクト抜群です。ベトナムがふるさとのトレニアは、どんなに暑くても平気ですが、ことにほふく性のタイプはカーペットのように広がっていっぱい花を咲かせ続けます。ベゴニアでは木立タイプの「レッドウィング」や「リッチモンデンシス」が強い直射光にも負けずに咲き続けます。

下の写真は庭植えの一角です。中ほどの赤花の大株はサルビア スプレンデンス「バンホウティ」、左手オレンジ花は木立性になる宿根草で、スファエラルケア「ニューリーズコーラル」を、手前右手にダークな葉色のコリウス「プリミティブクール」、その隣にオレンジ色のニチニチソウ「ナツミカン」、赤花のベゴニア「リッチモンデンシス」を、左手前下にはアンゲロニアの白花を植えています。

庭の一角に夏でもいっぱい咲き続けるボリューム感のある花壇を作りました

-ポイント2- どんなに暑くても涼しい顔の役者たち

涼しげな花色でクールダウンを!

黄色と白色をメインに青色や赤紫色をプラスしてナチュラルで涼しげな花壇に

夏の花壇は、強い夏の日ざしに映える赤やオレンジや黄色などのホットカラーが素材的にも多くなるのですが、ちょっと探してみると意外やクールカラーの花を見つけることができます。

上の写真で注目の植物が真ん中のレモンイエローの葉、コリウス「ワサビ」。葉が株全体を覆うため、遠目にもインパクトがあります。右手の白花はマリーゴールド「ホワイトバニラ」。その上の青花はサルビア ガラニチカ「アルゼンチンスカイズ」とサルビア ウリギノサが、下の方にはサルビア ファリナセアが小花をのぞかせています。左手には白い穂のペニセタム ビロサム、赤紫のセンニチコウ「ファイヤーワークス」がナチュラル感を醸しています。

クールカラーの代表格はサルビアの青花です。サルビアには何種類か青花がありますが、小型種ではファリナセアがポピュラーで、大型種ではラベンダーセージとガラニチが強健です。プルンバゴ(ルリマツリ)は熱帯性の花木で、空色のきれいな花を夏中咲かせ続けます。耐寒性はありませんが、霜が降りる前に鉢に植え替えて屋内に入れると、楽に冬越しします。
マリーゴールドの「ホワイトバニラ」は珍しい白花の逸品でとにかく長く咲いてくれます。日本ではまだあまり知られていないヒマワリ「イタリアンホワイト」は、涼しげなレモンイエローの花が夏から秋までずっと咲き続けます。分枝しながら蕾をつけるので、3~4カ月は優に咲き続けます。2mくらいまで育ち、花壇の中心的存在になってくれます。

寒色系のブルーや白をベースにした花たちは、暑い夏を気分的にクールダウンしてくれるありがたい存在です。積極的に花壇に取り入れてみましょう。

夏空に映えるヒマワリ「イタリアンホワイト」。ヒマワリの中では小輪系で、レモンイエローの花弁がとてもさわやか

-ポイント3- 猛暑でも咲かせるコツ、秋まで咲かせるコツ

暑くても長く咲き続けるには追肥が必要

夏から秋を彩るコンテナガーデン。野性味にあふれとてもナチュラルです

上のコンテナは夏から秋まで長く楽しめる植物でできています。高く伸びているのはグラスのペニセタム「カーリーローズ」。まわりには白花のアンゲロニア、白と紫のストライプ柄のペチュニア「ブルースターダスト」、黄花のコレオプシス「スィートマーマレード」があふれるように咲いています。

猛暑でも咲かせる1番目のコツは、7月初め頃の梅雨明けまでに苗を植えつけ、少しでも早く根づかせることです。暑くなってからでは根つきが遅れ、元気に育ちにくいからです。

2番目のコツは、元肥をしっかりと与え、さらに追肥を1カ月に一度ぐらいのわりで与え続けることです。夏は植物も体力の消耗が激しく、おまけに花を咲かせ続けるのにもエネルギーがいるからです。
与える肥料は元肥、追肥ともに根にもやさしい有機質系のものがおすすめです。追肥で体力を維持させるのは秋まで咲かせるコツにもつながります。夏に咲く花は上手に育てると、ほとんどが秋まで咲き続けます。

下の写真は秋まで元気な花壇です。真ん中のオレンジ花は、サンパチェンス「さくさく パッションオレンジ」。夏の炎天時から秋までずっと咲き続け、花壇の主役になってくれます。左右の黄金葉はコリウス「ガイズデライト」、手前の黄色小花はメカルドニア「イエロークロサイト」、奥のもみじ葉の植物は実をハイビスカスティーにするローゼルです。

夏の強い日ざしにも負けないオレンジと黄色で構成された元気いっぱいの花壇

8月も半ばを過ぎた時には追肥に加えて剪定を実施します。剪定時期は8月下旬~9月上旬にかけて。ずっと花を途切れさせない時は、株の高さの上部1~2割程度で剪定を。夏の終わりは少々少なくても秋に思いっきり咲かせたい時は、株の高さを下から3分の2から半分程度まで剪定します。
剪定後、新芽がまちがいなく伸びてきますので、秋には再びきれいな花を咲かせてくれます。暑い夏をものともせず、秋まで咲かせる花壇、ぜひ一度お試しを。

次回は「半日陰でも緑豊かな花壇に」を更新予定です。お楽しみに。

JADMA

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