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連載

【第7回】半日陰でも緑豊かな花壇に

文・写真

加地一雅

かじ・かずまさ

株式会社エクステリア風雅舎代表。1987年、苗の育成から個人邸の庭のデザイン、施工、メンテナンスまで行う風雅舎を設立し、現在に至る。草花が自然風に咲くナチュラルガーデンを啓蒙、普及されるべく奮闘中。


執筆者の加地先生は2017年12月にご逝去されました。謹んでお悔やみ申し上げます。皆様の園芸知識向上にこの連載を役立ててほしいとのご家族様のご意向から、文章はご執筆当時(2016-2017年)のまま継続して掲載をさせていただくことになりました。時代を感じさせる部分があるとは思いますが、お含みおきの上ご覧ください。

【第7回】半日陰でも緑豊かな花壇に

2016/07/12

日当たりがわるい所では植物は育たない、と思い込んでいる方は大勢いらっしゃると思います。でも実は、日当たりがわるい半日陰が好きだ、という植物が世界にはいっぱいあり、半日陰で元気に育っています。今回はシェイドラビングプランツ(shade loving plants)のご紹介です。

イラスト:ハンダタカコ

-ポイント1- 半日陰は葉もののパラダイス

半日陰でも使える植物はバラエティ豊か

左手前の大きい葉はギボウシ「アンティオチ」、右手前の黄金葉はヒューケラ「シトロレナ」、その奥の細葉はオオフイリカンスゲ。左手前のシダはジュウモンジシダ、右奥はリョウメンシダ

半日陰というと、ジメジメした日陰でうっとうしいイメージがつきまといますが、植物の使い方ひとつで、見違えるような心地よいパラダイスに変身します。半日陰が好きな植物は、もともと半日陰の所に自生し、弱光線下でもしっかり光合成を行い、元気に生き延びるパワーをもっています。逆に日ざしが強いと、葉焼けをおこし、ダメージを受けてしまいます。

こんな半日陰で育つ植物をよく観察してみると、葉がきれいな植物が多いことに気づかされます。しかも半日陰ゆえに日ざしの照り返しがなく、やわらかな弱光線の下で、葉が目に鮮やかに映ります。

上の写真は家の周囲の植栽を写したものです。ここは園路脇の植栽で変化を出して、歩くことが楽しくなるように演出しています。植栽はいろんなバラエティに富んだ葉ものを混植しています。

半日陰好きの葉ものといっても、かなりバラエティ豊富で、大きな葉を広げるギボウシから細長い葉のヤブラン、細やかに切れ込んだ葉のシダ類、そして葉色も緑の濃淡、斑入り、銅葉、黄金葉など、表情がとても豊か。ガーデナーの本領発揮といったところで、どんな表現も可能です。

下の写真は、庭の南側に設置したウッドフェンスの陰になるところの植栽です。本来、日陰好きの植物と、日陰でも育つ日なた好きの植物の混植で、葉も花も楽しめる半日陰の植栽です。いずれも元気に育っています。

左からギボウシ「シェードファンファーレ」、クジャクシダ、斑入りフウチソウ、石の手前はグラウンドカバーのリピア、石の上の切れ葉の小花はティアレラ「ピンクスカイロケット」で、奥の背の高い草はサルビア グアラニティカ

-ポイント2- 半日陰で機嫌よく花が咲く草花たち

定番のクリスマスローズから使い始めてみて

手前に見える淡青花は香りフロックス「ブルーパフューム」、奥の淡青花は球根花のブルーベルで、ともに落葉樹の根元などの半日陰が適地です。写真は植えつけ後数年経過してなじんだ姿

半日陰を好んで花が咲く草花たちは、もともと山野の樹林下で自生していたものが多いです。ホトトギスやシュウカイドウなどがその代表格。それとは別に、本来日なた向きですが、半日陰でも元気に育ち花が咲く草花もあります。ジギタリスやサルビア グアラニティカなどは日なたでも半日陰でも育って、きれいに花が咲いてくれます。

落葉樹の根元で冬から春先までよく日が当たり、晩春から秋までは木陰になるところでは、スイセンやムスカリ、ブルーベルなどが元気に育ち、花をいっぱい咲かせてくれます。珍しいところでは秋咲きの原種シクラメン ヘデリフォリウムが特におすすめで、タネがこぼれて増えるほど丈夫で、ピンクや白い花が秋~早春にいっぱい咲いてくれます。もちろん、木の根元や建物の北側などで元気に育ち、葉も模様が入りきれいです。育て方は、球根が隠れるくらいの深さで植えて、水やりは雨に任せて放っておくのがポイントです。

ポピュラーなところでは、クリスマスローズが半日陰の女王といってよいぐらいおすすめです。常緑の葉が年中地面を覆い、真冬~早春のほとんど花のない季節に咲いてくれるすぐれものです。さらに、タネで勝手に増えてナチュラルな風景をつくってくれます。探すと案外、半日陰でも咲いてくれる草花に出合うものです。思いがけず、好きなものが選べますよ。

夏は休眠し、秋になると花がいっぱい咲いて、開花後葉が展開するシクラメン ヘデリフォリウム

クリスマスローズとスイセン「テータテート」がランダムに咲き乱れています。ともにとても丈夫で、植えつけて数年は植え放しで咲いてくれます

-ポイント3- 半日陰が大好きな低木やつる性植物

アオキやヤツデも斑入り種を使えば今どきの植栽に

青いアジサイは「エンドレスサマー」。開花期間の長いアジサイで、中小輪の花をたくさん咲かせます。手前にも数種類のアジサイを植えて、アジサイの競演を楽しみます

半日陰の植栽で、ある程度ボリュームを出して存在感を出したい時は、半日陰で育つ低木を植えることをおすすめします。低木も半日陰で育つ種類がたくさんあります。代表格はアジサイ。品種が豊富で好みのものを選べます。花色は土壌の酸度で変わりますので、青くしたい時は酸性を強めて、赤くしたい時は弱めます。

現代ではすっかり人気がなくなったアオキやヤツデも半日陰が大好きです。ともに斑入りのきれいな品種があり、これから大いに使いたいものです。半日陰の壁面には半日陰好きのつる性植物がおすすめです。ツルアジサイやイワガラミは結構暗い場所でも、壁面にくっつきながら茂って花も咲いてくれます。
ほかにはテイカカズラがおすすめで、濃緑色の葉を年中茂らせ、香りのよい花も咲いて、緑の壁面を作ってくれます。

上の写真の後ろの壁面にはイワガラミ「ムーンライト」が咲いています。花もさることながら葉もきれいな品種で、しかも丈夫です。白みがかった葉に濃色の葉脈が入り、観賞価値の高い品種です。

半日陰は華々しい花がいっぱい咲く環境ではありませんが、しっとりと落ち着いた緑豊かな花壇を作るにはぴったりの空間です。ぜひとも半日陰の庭をお楽しみください。

次回は「家の周囲の暗くて細長いスペースを見直そう」を更新予定です。お楽しみに。

JADMA

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