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連載

【第9回】庭にバラを取り入れよう

文・写真

加地一雅

かじ・かずまさ

株式会社エクステリア風雅舎代表。1987年、苗の育成から個人邸の庭のデザイン、施工、メンテナンスまで行う風雅舎を設立し、現在に至る。草花が自然風に咲くナチュラルガーデンを啓蒙、普及されるべく奮闘中。


執筆者の加地先生は2017年12月にご逝去されました。謹んでお悔やみ申し上げます。皆様の園芸知識向上にこの連載を役立ててほしいとのご家族様のご意向から、文章はご執筆当時(2016-2017年)のまま継続して掲載をさせていただくことになりました。時代を感じさせる部分があるとは思いますが、お含みおきの上ご覧ください。

【第9回】庭にバラを取り入れよう

2016/09/13

バラは栽培が難しい、世話が大変、と思われて栽培をちゅうちょされる方は、とても多いと思います。でも実際に栽培してみるとこれほど強くて魅力的な植物は、他にはなかなか見つけるのが難しいように思います。ポイントをしっかり押さえて、自分好みのバラの咲く風景が再現できたら、なんとも言えない豊かな気持ちに包まれますよ。

イラスト:ハンダタカコ

門の脇に植えられた四季咲きのオールドローズ「アルシデュック ジョセフ」。見事に大株に育っています。バラの根元にはエリシマム「ボウレスモーヴ」が彩りを添えて

-ポイント1- バラは、実はとても丈夫な植物

品種を選べば無農薬栽培だってできる

駐車スペース脇のフェンスに絡ませた黄モッコウバラ。病気知らずで最強健の野生種のバラです

バラは長い間、栽培に手間がかかり技術も要求されるハイブリッドティー(HT)系の大輪四季咲きのバラが多く栽培されてきました。愛好家にとっては素晴らしい品種でも、ごく一般の人たちにはハードルがちょっと高すぎたかもしれません。そして近年、育てやすい丈夫なバラが続々とデビューし、加えて古くからある魅力的で育てやすいオールドローズも見直されてきて、初心者がバラを育てるにはかなり環境が整ってきました。

品種を選んで育てていると、バラは剪定で樹高を抑えることもできますが、最初の写真のように自由に枝を伸ばせば伸び伸びとした豊かな表情を示してくれます。上の写真の黄モッコウバラは、つる伸びが抜群で、軽く7~8mは伸びていきます。暖かい所では半常緑で越冬します。とにかく強健でよく茂るので、花後に出る枝をしっかり剪定します。

バラを育てる一番のポイントは丈夫で育てやすい品種を選ぶことです。病気にも強く、強健種ゆえに虫に食べられても萌芽力が旺盛なので再生してくれます。品種によっては無農薬栽培も可能です。

下の写真はハトヤバラですが、このバラもとても丈夫で、日なたから半日陰まで適応してくれる優れものです。つる伸びがよく、ピンクの一重咲きの花が野性味を醸してくれます。病気知らずのバラの一例です。

バラ栽培でもうひとつ重要なことは、鉢植え、庭植え共に土作りです。上質な堆肥を深くすき込んで、土壌菌が共生できるようにパーライトなどを入れて水はけをよくします。また、日当たり、風通しのよい所で栽培することがバラを元気に育てる条件であることをお忘れなく。

メッシュフェンスに絡ませたハトヤバラ。白花を咲かせるナニワイバラの変種です

-ポイント2- バラと他の植物との組み合わせを楽しむ

バラには引き立たせる淡い小花がよく似合う

主役の白バラはハイブリッドムスク系のオールドローズ「プロスペリティ」です。よく伸びるのでフェンス仕立てにも、剪定で低く抑えてブッシュ仕立てにもできます

上の写真をご覧ください。高木、低木、宿根草、一年草にバラが組み合わさったミックスドボーダーです。バラが終わると左側のアメリカアジサイ「アナベル」に主役が代わります。バラはバラだけを植えて楽しむことが多かったのですが、最近では他の宿根草や一年草、低木などと組み合わせて植栽する方も増えてきました。バラの成長に影響のない程度の間隔がキープできるのであれば、植えても問題ありません。

オーソドックスなパターンではバラの周囲に宿根草を植えると、バラの花がない時も宿根草が楽しめますし、バラとの同時開花の時は華やかさが倍化します。宿根草や一年草は、小花で中間色など淡い色がバラとの相性がよいようです。球根植物やグラス類、低木との組み合わせも、バラの品種や特性をよく考慮して選ぶと、オリジナルの独特な空間ができあがります。

下の写真は、バラと宿根草で株の上下を黄色でコーディネイトした一例です。組み合わせは上下、左右自由にアレンジできます。さらに次の写真では、バラを低木同士でコーディネイトしました。低木同士ではお互いが大きくなるので組み合わせる相手をしっかり考えて選ばなければなりません。樹間をあけることと剪定でお互いの日当たりと風通しを確保します。

バラは品種が豊富で、個性も豊かです。自分好みのバラを選び、さらに他の植物と組み合わせることによって、自分でもハッとするような空間ができあがると、感動もひとしおです。普段からいろんな植物を観察しておくと面白い組み合わせができますよ。

イングリッシュローズの名花「グラハム トーマス」と南アフリカ原産の多肉茎の宿根草ブルビネ(ハナアロエ)の黄花の組み合わせです

「グラハム トーマス」が低木のスモークツリーとコンビを組んでいる例です

-ポイント3- バラは風景作りの名手

絵になる庭を作るなら丈夫なバラを植えてみよう

少し黄色みの入った建物壁面に絶妙にコーディネイトされた「バフ ビューティ」

高さのある空間を花で彩るのに、つるバラは格好の材料です。しかもつるバラは丈夫で育てやすい品種が多く、建物の壁面やフェンス、アーチなどを自在に飾ることができ、いろいろな風景作りができます。つる伸びのよい品種は多くが一季咲きですが、咲いた時は壮観なボリュームで見事です。

おすすめのつるバラの一例として、上写真「バフ ビューティ」は、咲き始めのアプリコット色と咲き進んだ淡黄色が混じりあって、美しい風景を作っています。年期の入った太いシュートから何本も枝分かれをして、壁一面に花を咲かせています。下写真の2品種も優秀です。「フランソワ ジュランビル」はランブラー系の非常につる伸びのよい品種で、横に長いフェンスにはぴったりの品種です。つるは延々10mくらい伸びます。テリハノイバラの血を引くため、つるは細めで誘引しやすく扱いやすいです。一季咲きですが満開時は花数多く見事です。「ピエール ドゥ ロンサール」はたいへん人気のある大輪系のつるバラで、存在感を発揮しています。

普通のサイズのアーチや小さなフェンスでは、枝がよく伸びるシュラブローズがサイズ的にまとまりやすく、おすすめです。日当たりと風通しのよい所でここ一番の風景を作りたい場所にバラを植えると、華やぎが出るのはもちろんのこと、バラ独特の存在感が漂い、絵になる風景ができあがります。

左手のバラは「フランソワ ジュランビル」、右手のバラは「ピエール ドゥ ロンサール」

花がこぼれるようにたくさん咲いた「フランソワ ジュランビル」

バラ作りは好適な環境に、丈夫な品種を選び、土作りをしっかりして植えれば、バラはそれにきちんとこたえてくれて、咲いてくれると思います。ぜひ、皆さんもバラのある風景を味わってみてください。

次回は「コンテナを効果的に取り入れよう」を更新予定です。お楽しみに。

JADMA

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