文・写真
加地一雅
かじ・かずまさ
株式会社エクステリア風雅舎代表。1987年、苗の育成から個人邸の庭のデザイン、施工、メンテナンスまで行う風雅舎を設立し、現在に至る。草花が自然風に咲くナチュラルガーデンを啓蒙、普及されるべく奮闘中。
執筆者の加地先生は2017年12月にご逝去されました。謹んでお悔やみ申し上げます。皆様の園芸知識向上にこの連載を役立ててほしいとのご家族様のご意向から、文章はご執筆当時(2016-2017年)のまま継続して掲載をさせていただくことになりました。時代を感じさせる部分があるとは思いますが、お含みおきの上ご覧ください。
【第11回】庭に樹木を上手に取り入れよう
2016/11/08
庭に木を植えようと思っても、どこに何を植えてよいのやら、将来どうなるのやら、と困っている方々に、今月はどんな木があってどう植えたらよいかの話です。樹木はそこにあるだけで、豊かな気持ちになります。ぜひ体感してみてください。
-ポイント1- 目を引くところにはシンボルツリー、シンボルシュラブを植えよう
見せ場を生み出すシンボルツリー、シンボルシュラブ
樹木は大きく二つに分けられます。一つは、幹が年々年輪を刻みながら太くなり、樹姿全体もどんどん大きくなる高木(英語でtree)。もう一つは、幹と枝の区別が付かず地面から何本も細い枝を出し、比較的低いところで成長が止まる低木(英語でshrub)に分けられます。高木も低木も種類が豊富で、その中には、ドラマの主役級に例えられる遠くから見ても目立つものが、いくつかあります。
この主役級の目立つ高木や低木を、庭の一番目を引くところに植えると、庭に一番の盛り上がりをつくってくれます。これらの木々を、庭のデザイン上、「シンボルツリー」「シンボルシュラブ」と呼んでいます。シンボルにふさわしい目立つ要素とは、木のボリューム、花の咲き方・形・色・大きさ、樹形、葉色などをチェックして、総合的に判断します。場所が広ければシンボルツリー、狭ければシンボルシュラブと使い分ければ、いかなる場所でも対応できます。
シンボルツリーによく使われる樹種としてヤマボウシがあります。ヤマボウシは、晩春に咲く花は白く清楚で、秋の紅葉もきれいです。枝が横広がりなので、ある程度スペースに余裕があるところが理想的です。一年中適度な湿度を保つ土壌を好むので、乾きやすいところや西日の強いところは避けます。また、同じくジューンベリーがあります。春一番に白い花を株一面に咲き誇らせ、6月に赤い実をいっぱい付け、秋遅くにはきれいに紅葉します。他の樹木と比べ枝の茂り方がおとなしく、木の根元にもよく日が差すので、根元に植えた草花もよく育ってくれます。実は熟すと赤黒く変色し、よりおいしくなるのですが、鳥たちの格好の餌にもなるのでそれまでに収穫するとよいでしょう。
-ポイント2- アクセントが欲しいところには葉のきれいな樹木を植えよう
種類が豊富だから庭にぴったりの樹木が見つかる
樹木には葉がきれいな種類がいっぱいあって、それも、葉全体が黄色だったり、紅色だったり、斑が入っていたり、緑を見慣れた目にはとても新鮮です。庭に樹木を植えるとき、しっとり落ち着いた雰囲気にしたいときは、緑一色でよいのですが、何か変化を求めたいとき、アクセントが欲しいときは、その場に応じた葉色の樹木で対応したいものです。
上の写真は葉に白い縁取りがある斑入りミズキの例です。右隣には斑入りミズキを引き立てるために赤銅色のバーベリス「ローズグロー」を植えました。周囲の緑の中でまさしくアクセントになっています。下の写真は黄葉のジャスミナム「フィオナサンライズ」。常緑つる性低木で、葉は鮮やかな黄色でよく目立ちます。春に香りのよい白花を咲かせ、刈り込めばブッシュ仕立てにもできます。やや寒がるので寒冷地では鉢植えで楽しむとよいでしょう。
上写真のように黄色系の葉は、その場を明るくしてくれます。ブロンズリーフと呼ばれる銅色、紅色、茶色、黒紅色の葉は、その場を引き締め、シックな落ち着いた雰囲気を漂わせます。次の写真は赤銅葉のスモークツリー「ロイヤルパープル」の例です。この品種は成長が非常に遅く、スモークツリーとしては葉も小さめですが、赤銅色の樹姿はとてもインパクトがあります。年数をかけてじっくり育ててください。
下の写真はカエデ「アリアドネ」という品種です。日本のカエデは変わり葉の品種がいっぱいあり、特に春の新芽の展開時がことのほか美しいです。植える場所としては、変わり葉のカエデは大きな木の陰になるところが好適です。
斑入りの葉は、その場を明るくしつつ刺激を与えてくれます。樹木を植えようと思い立ったら、いろんな葉の樹木があることを頭に入れて、そこが緑一色でよいのか、他の葉色で変化を出すのか、しっかり検討してください。これはまさしく樹木の植栽デザインの最も面白い想像の世界です。本やウェブサイトの画像をいっぱい見ながら、楽しくやってみましょう。
-ポイント3- 華やぎが欲しいところには花木を植えよう
手間を掛けずに華やぎを演出できる花木
庭で圧倒的な存在感で季節を伝えてくれるのは、何といっても花木です。花木というとサクラやモクレンなどの高木を想像したりしますが、低木にも、高木をはるかに超える数多くの花木があり、季節の演出にも事欠きません。
冬の寒いさなかに咲くマンサクに始まり、春に入ってヒュウガミズキ、ユキヤナギ、ライラックと続き、そしてオオデマリの仲間が咲いて、花木の女王バラへとつながります。その後、初夏から盛夏にかけてはフヨウの仲間やニンジンボクが咲いて、秋の実ものや紅葉する木へと主役が代わっていきます。
例えば、上の写真はウツギ「マジシャン」ですが、とにかく丈夫です。周りに広がってもよい、少し余裕のあるスペースに植えるのがおすすめです。また、下の写真はセアノサス「ベルサイユ」です。冬に落葉するタイプでとても育てやすく、結構大きく伸び広がります。このお宅では右側の壁面にはクレマチス「ペルルダジュール」を植え、この辺りがブルーの花で埋まるようにコーディネートしています。最後の写真はビバーナム「ステリーレ」。とにかく大輪でしかもいっぱい咲いてくれます。剪定しないと結構大株になるので、大きくしたくないときは、剪定でコントロールします。
華やぎを演出できる花木ですが、花木を植える一番のメリットは、何といっても草花ほど手間を掛けずに放っておいても、季節が来ると花が咲くということです。大きくなり過ぎないように、数年に一度は剪定が必要ですが、特別難しい作業ではありません。ローメンテナンスと季節の演出を同時に満たす花木は、これからの時代、重要な役割を果たすことでしょう。
樹木は高木であれ低木であれ、長生きして季節を告げてくれて、何より緑の存在そのものが人を癒やしてくれます。樹木とはもっと身近に、もっと意識して長く付き合っていきたいものです。
次回は「椅子やベンチ、オーナメントを使ってみよう」を更新予定です。お楽しみに。