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連載

【第13回】冬花壇の手入れ法と楽しみ方

文・写真

加地一雅

かじ・かずまさ

株式会社エクステリア風雅舎代表。1987年、苗の育成から個人邸の庭のデザイン、施工、メンテナンスまで行う風雅舎を設立し、現在に至る。草花が自然風に咲くナチュラルガーデンを啓蒙、普及されるべく奮闘中。


執筆者の加地先生は2017年12月にご逝去されました。謹んでお悔やみ申し上げます。皆様の園芸知識向上にこの連載を役立ててほしいとのご家族様のご意向から、文章はご執筆当時(2016-2017年)のまま継続して掲載をさせていただくことになりました。時代を感じさせる部分があるとは思いますが、お含みおきの上ご覧ください。

【第13回】冬花壇の手入れ法と楽しみ方

2017/01/17

冬花壇の手入れは基本、来春のための準備が中心です。多くの植物は休眠期に入り、移植や定植の適期にも突入します。来春の花壇のデザインを考えたり、土作りをやったり、宿根草の株分けや花壇の定植をやったりと、冬でも結構忙しく、体も頭もフル活動です。

イラスト:ハンダタカコ

-ポイント1- 冬花壇の手入れは、土作りと苗の定植がポイント

疲れている土に土壌改良材を施して、地力をアップさせよう

冬に定植した花壇が、5月にはこんな花いっぱいの花壇に変身しました。冬の間に定植して十分に株を作り込むことによって結果が出ます

冬花壇の手入れは、秋まで頑張った土や植物のケアが一番に挙げられます。土も春から秋まで植物が茂って、咲き続けてきたわけですから、地力が落ちています。地力の落ちた土をリセットするには冬が最適期です。

方法は、まず植物の掘り上げから始めます。次に荒起こしをして、草や木の根を取り除きます。そして堆肥や腐葉土、パーライトやもみ殻くん炭、苦土石灰、油かすや骨粉などを地表面にばらまき、よく混ぜ込みながら耕します。これで地力は回復して、数日置いておけば土がよくなじんで定植可能になります(土壌改良の詳しい方法は『園芸通信』2016年2月第2回にて掲載)。

こうして土作りができたなら、いよいよ定植です。春から初夏に咲く一年草や宿根草は冬の寒いうちに根が張り、春の気温の上昇とともに株を茂らせ、花を咲かせます。ということは冬でもできるだけ早いうちに定植した方がよく根が張り、充実した株になるということです。ですから、年内にこの作業ができるのが理想的ではありますが、寒さが厳しくなる1、2月の定植でも構いません。


上の花壇写真をご覧ください。春に開花株を植えてもここまでのボリュームは出せません。冬の間の土作りに加え、植え付け間隔を広めに取り、十分に株を作り込むことによってこのような結果が出ます。冬の間の定植はとても重要なことを表しています。

下の写真は冬花壇の手入れの手順を追ったものです。大きな花壇ですが、草花の定植後は植え替え部分のみ、土の状態を見て堆肥、肥料類、苦土石灰を適量加えます。土作りはかなり体を使う作業なので、暑くない冬の作業にぴったりです。土作り数日後、定植すると、育ち始めた植物は寒さに当たっているため、上に伸びず、地際で新芽をいっぱい増やし、こんもりとロゼット状態になります。冬を越した後は周りの株が大きくなり過ぎないうちに、隙間ができたところに苗を補ってやること(補植)がポイントです。

土壌改良材や肥料を地面にまいたところ。既存木の周りを花壇にするため、初回の土壌改良時はかなり多めにすき込みます

土壌改良後の地ならし。地表面がきれいにならされていると花壇もきれいに見えます

冬の間にしっかりと根付かせている花壇の状態。地下ではしっかりと縦横にたくさんの根が伸びています

冬越しを終えた花壇に補植しているところ。冬の間に枯れてしまったところなど花壇の隙間を埋める作業です

-ポイント2- 宿根草を長い年月楽しむには、冬の株分けが大切

よく切れる刃物でスパッと親株を分けてみよう

宿根フロックスを株分けし、できた子株を定植して初めて迎えた夏の様子。暑さをものともせず元気に咲いています

宿根草はずっと植えっぱなしができると、勘違いしている方は多いと思います。種類にもよるのですが、多くは定植後3~4年目がピークで、これ以降、株は痩せていき、花も咲きにくくなってきます。株分けはこのちょうどピークが過ぎる前、早めに実施するのが望ましいです。

株分けを必要とする宿根草は、元々の中心の芽が年を経るごとにいくつも増えるタイプの植物です。木立ちになったり、ランナーで増えるタイプの植物は、挿し芽やランナーの子株で株を更新するので株分けはできません。株分け作業はそんなに難しくはありませんが、親株からザクッと太い根を切り分けないとならない種類もあり、その場合は少し勇気が必要です。

クリスマスローズやシャクヤク、ギボウシ、宿根フロックスなどがそれに当たります。よく切れる刃物でスパッと親株を切るのがポイントです。株分けした株はできるだけ速やかに定植するのが理想ですが、無理なときはポットなどに一時的に仮植えしておいても構いません。宿根草は数年おきに株分けなどで株を更新していくことが、長く楽しむコツです。

下の写真は宿根フロックス「ブライトアイズ」を例に株分けの手順を追ったものです。宿根フロックスは花房の中から次々と新しい小花が咲いてくれるので、かなり長い期間楽しめ、とても繁殖力のある宿根草です。株分けをせずにこのまま放っておくと貧弱な花しか咲かなくなり、株もどんどん衰弱していきます。

定植後、株が充実したシーズンの冬が株分けのベストタイミングです。今回は親株を4つに分けていますが、さらに分けてもっと増やすことも可能です。ただし、定植後の株のボリュームに影響するので、どんな花壇でどう見せたいか、によって子株の芽数を決めたらよいと思います。

宿根フロックス「ブライトアイズ」の定植後3年経過した株の冬の状態。新芽が何十と分かれています

株分けは、まず株の周囲にスコップを入れて、株回りの根を切ります。そして株底の根も切って、全体の根が切れたところで、株全体を掘り上げます

掘り上げた株の全体像。中心の親株自体は枯れ、周りにいくつも子株を増やしています

まずは大きく2つに分けます。くっついている根は横方向に引き離します

さらに2等分して、合計4株に分けました

花壇に株分けした株を6株並べたところ。宿根草は株の見た目より、かなり大きく成長するので、株間は広めに取ります

花壇に定植を終えたところ。周りには西洋オダマキやダイアンサス、ラバテラなどをコーディネートし、管理が楽なように全て宿根草でまとめています

-ポイント3- 寒くてもまったく平気! 冬に楽しめる植物たち

寒さの中で咲く花は春の訪れを予感させる

マンサクの黄花。霜が毎日降りる1~2月から咲き始めます

冬花壇は寂しいと思われがちですが、冬に花が咲いたり、実がきれいだったりする植物は案外たくさんあります。樹木の代表格ではツバキやサザンカが有名です。大輪から中小輪、華やかな色合いの花から上品な色合いの花まで、選ぶのに困るほどです。

年明けぐらいからは、黄やオレンジのマンサクや極上の香りのするロウバイが咲き始めます。これらの植物の開花は、なんとなく春の気配がほんの少し感じられるころと重なります。中国原産のロウアガキは鮮やかな朱赤の実を冬中付けて、ひときわ目立ちます。とても丈夫な育てやすい低木です。

中国原産のロウアガキ。落葉樹で冬の朱赤の実が遠くからでも目立ちます

宿根草ではいろんな種類のクリスマスローズが木陰を彩り、庭をにぎわしてくれます。球根植物も冬咲きのクロッカスやスイセンがまだ寒い冬中から咲き出してくれて、春がそう遠くないことを知らせてくれます。クリスマスローズも半野生化するほど手間のかからない植物ですが、スイセン「テータテート」も毎年よく咲く丈夫な品種です。同じくバルボコジュームも小型のとても丈夫なスイセンで、2月ごろ、毎年可憐に咲いてくれます。

冬も、冬咲き種の植物を使えば、あちらこちらに見どころをいっぱい作ることができますよ。

冬の後半に活躍するクリスマスローズと早咲きのスイセン「テータテート」。クリスマスローズはタネで増えて半野生化しています

スイセンの原種の一つバルボコジューム。副冠がラッパ状に広がって、そのユニークな姿が目を引きます

冬といえども、ガーデニングにおいては重要な作業がいっぱいあります。冬の日だまりの暖かい日を選んで、春を夢見ながら、作業にいそしんでください。

次回は「オーガニックで植物を育ててみよう」を更新予定です。お楽しみに。

JADMA

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