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連載

【第22回】秋の花壇の手入れ法と楽しみ方

文・写真

加地一雅

かじ・かずまさ

株式会社エクステリア風雅舎代表。1987年、苗の育成から個人邸の庭のデザイン、施工、メンテナンスまで行う風雅舎を設立し、現在に至る。草花が自然風に咲くナチュラルガーデンを啓蒙、普及されるべく奮闘中。


執筆者の加地先生は2017年12月にご逝去されました。謹んでお悔やみ申し上げます。皆様の園芸知識向上にこの連載を役立ててほしいとのご家族様のご意向から、文章はご執筆当時(2016-2017年)のまま継続して掲載をさせていただくことになりました。時代を感じさせる部分があるとは思いますが、お含みおきの上ご覧ください。

【第22回】秋の花壇の手入れ法と楽しみ方

2017/10/10

秋は気温と湿度の低下で、実は花の発色が一年で一番きれいな季節です。しかし、暑い夏の後で、台風が来たり、後には寒い冬を控え、足早に通り過ぎていく季節でもあります。そんな中でも育て方のコツをつかむと、秋もしっかり楽しめます。今月は秋の花壇で花をきれいに咲かせる方法と、秋ならではの花壇の楽しみ方をお話ししたいと思います。

イラスト:ハンダタカコ

-ポイント1-秋の花壇は夏の延長線上で考えてみよう

夏に楽しんだ植物を切り戻して、再度、秋に花を咲かせよう

秋真っ盛りを迎え、草花たちは秋の日差しに映える黄色系の花壇を作り出し、元気に咲いています(10月下旬の様子)

秋の花壇は秋になって開花株を植えるのではなく、初夏に植えた株を夏は相応に楽しみつつ、上手に夏越しをさせて秋に再度きれいに咲かせた方が、植物も最大限に生かされ、しかも経済的です。夏の管理法は第19回「夏の花壇の手入れ法と楽しみ方」でもご紹介しましたが、8月中旬に思い切って株を3分の1から半分ぐらいに切り戻し、同時に追肥をすると、夏の終わりから秋の初めにかけて再び成長して、お彼岸ごろからきれいな花が咲き始めます。

一方、上の写真は盛夏を過ぎてから定植し、10月下旬、秋真っ盛りを迎えた花壇です。後方の木々が紅葉を始めて、秋の風情が漂っています。夏前に定植した花壇、盛夏すぎに定植した花壇、いずれにしても秋前に根を張らせておくことが大切です。秋花壇を楽しむには、遅くとも盛夏すぎまでには定植を済ませましょう。

8月上旬まで楽しんだ夏花壇を8月中旬に手入れして、9月下旬を迎えた花壇です。再び成長した枝に新たな花を付け始めています

上の花壇は8月上旬まで楽しんだ夏花壇を8月中旬に手入れして、9月下旬を迎えた花壇です。再び成長した枝に新たな花を付け始めています。気温の低下とともに株の成長はおとなしくなり、また締まった株になります。花色も夏に比べるとはるかに発色がよいです。

秋の花壇を夏花壇の延長線上で考える大きな理由は、秋に入ってからの定植では日照時間が短くなり、しかも気温が低下していくことによって、成長が期待できず、十分な根張りをしないままに少ない開花で終わってしまうことがあるからです。初夏に定植した夏花壇の株は、夏バテはしつつも、しっかり根は張っているので、秋からの再成長がスムーズに行われます。季節がどう変化していくかを見極めることも、花壇を管理していく上でとても大事ですね。

次の写真は秋花壇に欠かせない植物です。一つ目の写真は赤をシンボルカラーにまとめたエリアです。定番のコリウスに銅葉の朱赤一重咲きのダリア、後方にセンニチコウ「ファイヤーワークス」が植わっています。最後の写真は、秋も深まってから咲き始めるサルビア「ゴールデンデリシャス」。別名パイナップルセージと呼ばれるサルビアの黄金葉品種で、夏の間はリーフプランツとして、きれいな黄金葉を展開してくれます。

定番のコリウスに銅葉の朱赤一重咲きのダリア、後方にセンニチコウ「ファイヤーワークス」が植わっています(10月下旬の様子)

秋も深まってから咲き始めるサルビア「ゴールデンデリシャス」が、朱赤の花と黄金葉のコントラストを見せています

-ポイント2-秋の花壇の手入れはお彼岸後の開花に照準を合わせる

秋の回復と再成長には定期的な追肥は欠かせない

ピンク花はニコチアナとサルビア コッキネアです。赤花はダリア、後方の黄花はヒマワリ「イタリアンホワイト」です(9月下旬の様子)

秋も9月中旬までは残暑が厳しく、暑い日が続きますが、お彼岸ごろには涼しい風が吹き始め、植物も一気に元気を取り戻します。夏を何とか乗り切り、秋を迎えるには、夏は株をコンパクトに剪定して、暑さのダメージを最小限に抑えつつ秋に向けての新芽の発生を促すことがポイントです。

上の写真は9月下旬の秋花壇の様子です。夏に一気に伸びた株と違い、葉の大きさも小さめで、分枝した枝数も多く、花色も鮮やかです。ピンク花はニコチアナとサルビア コッキネアです。赤花はダリア、後方の黄花はヒマワリ「イタリアンホワイト」です。これから10月いっぱいまできれいに咲き続けてくれます。

クフェア メルビラと黄花一重咲きのダリアです。秋の陽光によく映える花々です(10月下旬の様子)

加えて9月に入って2週間おきぐらいに、株の成長を見計らって追肥を施します。肥料は有機質系の粉状かペレット状のものを、株元にぱらぱらとばらまくだけでよいです。秋の開花には、夏バテからの回復と秋の再成長が必須で、しかも長く咲かせたいわけですから、植物にとってはかなりのエネルギーが必要です。秋にきれいに咲かせようと思えば、この9月以降の追肥も重要になってきます。

このように手入れをしていくと、秋には花をいっぱい咲かせてくれます。上の写真はクフェア メルビラと黄花一重咲きのダリアです。クフェア メルビラは、黄とオレンジの混じった筒状の花を秋にいっぱい咲かせる宿根草です。

サルビア「イエローマジェスティ」です。サルビアは他にも、秋花壇によい素材がいっぱいあります(10月下旬の様子)

上の写真はサルビア「イエローマジェスティ」です。遅咲きのサルビアで、夏の間に株をぐんぐん伸ばし、人間の背丈ぐらいに達し、さらに秋の短日に何日も当たって初めて花が咲き、秋ならではの風景をつくってくれます。下の写真は秋の定番植物、シュウメイギクです。シュウメイギクは花壇に混植するよりも、広がってよいところに1種類を群生させた方が、見映えがします。植えっ放しでどんどん増えていきます。

シュウメイギクにフジバカマ、ススキなど秋の演出に欠かせない宿根草も、入手可能であれば夏までに定植しておくと、しっかり根が張って、秋にはよい感じに育ってくれます。秋の花壇の手入れのポイントは、秋までに株をしっかり育てておくということですね。

秋の定番植物、シュウメイギクです。花はピンクに白、一重咲き、八重咲き、草丈は高性にわい性など種類が豊富です

-ポイント3-秋の花壇は終演後の余韻を楽しむ

冬に向かう花壇からは落ち着いた晩秋の風情をじっくり感じよう

まだまだ元気に咲いている花もあれば、もう終わろうとしている花も混在しています(10月下旬の様子)

春の花壇は、冬の寒さから解放され、暖かでらんまんとした雰囲気を楽しみ、夏の花壇は暑さにも負けないエネルギッシュな花々を愛でて、そして秋の花壇はどう楽しむか。楽しみ方は人それぞれにいろいろあると思いますが、秋という季節柄、春から夏を、さらに秋もきれいに咲き続けた後の、いよいよ冬の休息に向かう一つの舞台の終わりを楽しみたいものです。

上の写真は10月下旬の花壇の様子です。芝生も色あせ始め、周りの木々も秋の様相を呈しています。まさに終演に近づく美を、秋の深まりとともにゆっくりと味わってみるのもよいものです。下の写真の花壇は1ページの2番目の写真の2カ月後、秋も深まるころの様子です。花そのものはもう終わろうとしていて、葉や株全体もかなり傷んだ状態ですが、終演を感じるような秋の風情が漂います。

春から続いた花のうたげもいよいよ終わろうとしている、わびさび感の漂う空間です

秋の花壇は四季の中で一番長く、しかもじっくり観賞して楽しめるものです。日本は四季がはっきりしていて、その分慌ただしく変化していくものです。特に春と夏はあっという間に過ぎていくように感じます。

秋はそんな中でも割とスローペースで、後には寒い冬が控えています。秋の前半はきれいな花を愛でて、後半は終わりゆく花壇を見ながら秋の風情を感じ、いよいよ終わりのころは終演後の余韻を楽しむ、大人の時間を過ごしたいものです。

花も咲ききり、秋の風情たっぷりの花壇です。秋は、春、夏とは違った発想で、もの憂げに秋の情緒を楽しむのも乙なものです

次回は「山野草を庭に取り入れてみよう」を更新予定です。お楽しみに。

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