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連載

【第23回】山野草を庭に取り入れてみよう

文・写真

加地一雅

かじ・かずまさ

株式会社エクステリア風雅舎代表。1987年、苗の育成から個人邸の庭のデザイン、施工、メンテナンスまで行う風雅舎を設立し、現在に至る。草花が自然風に咲くナチュラルガーデンを啓蒙、普及されるべく奮闘中。


執筆者の加地先生は2017年12月にご逝去されました。謹んでお悔やみ申し上げます。皆様の園芸知識向上にこの連載を役立ててほしいとのご家族様のご意向から、文章はご執筆当時(2016-2017年)のまま継続して掲載をさせていただくことになりました。時代を感じさせる部分があるとは思いますが、お含みおきの上ご覧ください。

【第23回】山野草を庭に取り入れてみよう

2017/11/14

日本は世界でも有数の野生植物の宝庫です。その中でも草本類は山野草と呼ばれ、自然の中で四季を謳歌(おうか)しています。また、海外に目を向ければ、その土地に根ざしたたくさんの山野草が自生しています。今月はこのような国内外の山野草について庭への取り入れ方をご紹介しましょう。

イラスト:ハンダタカコ

-ポイント1-野生美、風情を醸す日本の山野草

山野草は自生地の環境に似た条件下で育ててみよう

夏から秋にかけて日陰の庭を彩る、日本の誇る耐寒性ベゴニア、シュウカイドウです

日本の山野草は風情のある味わい深いものがいっぱいあります。そんな日本の山野草は、落葉性の雑木の根元を飾るにはぴったりのものです。さらに広い空間では、里山の風景を切り取って庭に落とし込み、山野草が四季を織り成す空間をつくることが、山野草の一番の表現法だと思います。

山野草として思い浮かぶのが上の写真の、日本が誇る耐寒性ベゴニア、シュウカイドウです。建物の北側、中庭など直射光が当たらない、やや湿ったところが適地です。場所が合えば、むかごで辺り一面広がっていきます。普通の植物が嫌がるような日陰でジメジメしたところで効果を発揮します。

青い小花は日本の山野に自生するホタルカズラ。赤と白の二色花は日本種とヨーロッパ種を掛け合わせたイカリソウ「ルブラム」という交配種です

二重咲き白花のホタルブクロが群生しているところです

上の写真2枚をご覧ください。1枚目は日本の山野に自生するホタルカズラと交配種のイカリソウ「ルブラム」ですが、結構暗い樹林下ですが毎年同じ場所で春を告げてくれます。2枚目はホタルブクロです。とても丈夫な山野草で、地下茎でどんどん増えていってくれます。派手さはありませんが、群生して咲くと見応えがあります。明るい半日陰地が適地です。

日本の山野草は森や林などの樹林下で育っているものも多く、半日陰が好環境なので日照を得難い今の日本の住宅事情の庭にも、利用できる場はいっぱいあると思います。逆に、山林の周辺部や野原に自生している山野草は日なたを好むので、日照条件のよいところに植えてください。

日なたの水辺に自生するハンゲショウです

上と下の写真は日照条件のよいところに生える山野草です。上の写真のハンゲショウは梅雨空の下、白花が咲き乱れ、初夏らしい風景をつくってくれます。本来、水辺が適地なのですが、水辺でなくとも育ってくれます。地下茎の繁殖力がとても強いので、植えるときはしっかり場所を見定めた方がよいです。

下の写真は黄平戸ユリといって、長崎県平戸地方に自生するコオニユリの黄花の変種です。黄色の花弁に赤茶色の斑点が入り、そのコントラストがとてもきれいです。野生ユリはヤマユリ、オニユリ、ササユリなど種類も豊富で、いずれの種類も庭にパッと華やぎを添えてくれます。ユリ類は総体的に明るいところに植栽します。

6月下旬~7月上旬にかけて咲く日本の野生ユリの一種、黄平戸ユリです

日本の山野草はいろいろな環境下で育っています。日照も日当たりのよい野原から日が差さない樹林下まで、土壌湿度もよく乾いたところからジメジメした常に湿ったところまで、それぞれの環境に適応して育っています。

下の写真は日当たりを好むカリガネソウです。鼻を近づけると異臭を放つのが難点ですが、ブルーの小花をいっぱい付けてとてもきれいです。かなり草丈が伸びるので、秋の野原を演出するには好素材です。

秋の庭を彩るカリガネソウです。秋の野原を演出するには好素材で、日当たりを好みます

山野草を庭に取り込む一番のポイントは、植えたい庭の環境と同じ環境で育っている山野草を選ぶことです。上と下の写真のカリガネソウやシオンなど野原系の野草は、日当たりと風通しのよいところが最適地です。

また普通の花壇と違って、野山の自然の風景の再現になるので、ナチュラルで風情のある空間づくりに励んでください。普段から、自然を観察することも大切ですね。

秋の野原を彩るシオンです。すらっと伸びたスレンダーな草姿が秋の庭によく映えます

-ポイント2-洋種の山野草で華やぎを演出

日本種にはない花色、花姿で庭にバリエーションをもたらす

洋種のプリムラの仲間、プリムラ ヴェリス。またの名をカウスリップといいます

山野草は日本のものばかりではありません。海外の自然の野山にも多種多様な山野草が自生しています。そういったものを総称して洋種の山野草と呼んでいます。日本とは気候が異なるので、日本ではお目にかかれない珍しいものもたくさんあります。その中で日本でも育つ丈夫な種類を植栽すると、また日本種にはない趣があって、楽しみ方も増えると思います。

上の写真は洋種のプリムラの仲間、プリムラ ヴェリスです。改良された園芸種のプリムラに比べると、おとなしい感じですが、肌寒い早春の庭で次々とクリームイエローの小花を咲かせてくれると、気分も浮き浮きしてきます。夏は木陰になる涼しいところに定植すると越夏して宿根します。

半日陰を好むプルモナリア「ブルーエンサイン」です

洋種の山野草は日本のものより、おおむね花色に関しては華やかなものが多いと思います。ですから、ワイルド感と色彩的な華やぎが同時に欲しい場合は、この洋種の山野草が役に立ちます。例えば、上の写真はプルモナリア「ブルーエンサイン」です。早春の3月ごろに、葉を十分展開する前に濃いブルーの花を地上部にのぞかせます。落葉樹の根元に点在させて植えると存在感を発揮します。

下の写真の植物の学名はゲラニウム サンギネウム、和名のアケボノフウロとも呼ばれる、とても丈夫な洋種の山野草です。山野草の中では大型に育つ種類で、ヨーロッパでは花壇にもよく使われます。花色は濃い赤紫色から淡いピンク、白までと濃淡の色幅があり、場所やデザインによって使い分けることができます。日当たりのよいところで、大株に育つ前提で植えてください。冬は地上部が潔く枯れて、地下茎で越冬します。

学名はゲラニウム サンギネウム、和名のアケボノフウロとも呼ばれる、とても丈夫な洋種の山野草です

下の写真をご覧ください。ミツバシモツケという和名が付いている北米原産の野生植物ギレニアといいます。草丈60~80cmまで伸びる高性の山野草です。暑さ寒さともに強く、初夏には白い小花を乱舞させます。日なたから明るい半日陰までが適地です。

このように洋種山野草は極めて日本的な風情を感じられるものから、明らかに洋の雰囲気を醸しているものまで、バラエティーが豊富です。植えたい場所の環境と表現したい雰囲気から選ぶと、日本種だけから選ぶより、選択肢が増えて豊かな表現ができると思います。

ミツバシモツケという和名が付いている北米原産の野生植物ギレニアです

-ポイント3-庭の根締めで葉物の山野草を使おう

葉が主人公の山野草で地面を覆えば里山の風景に

フッキソウに斑入りのギボウシ、アスチルベ、低木のヤマアジサイが混植された風景です

シックな落ち着いた植栽をつくりたいとき、日本の気候風土でしっくりくるのは、日本の雑木と山野草の組み合わせです。山野草というと、季節、季節に咲く花が主人公の植物が多くを占めますが、山野に入れば下草と呼ばれる葉が主人公の植物が、日本にはたくさん自生しています。

上の写真をご覧ください。さまざまな山野草を取り入れ、とても自然風でしっとりと落ち着いた空間になっています。葉の大きさや形、緑の濃淡、花の変化などが加味されると、こういった風景が出来上がります。ここまで育つと、雑草も生えない、安定したお手入れの楽な植栽に仕上がります。

常緑のフッキソウを下草に、落葉性のシダ、クジャクシダを組み合わせた風景です

落ち着いた山野草の植わった庭をつくるときに、この下草を木の根元にあしらうと、緑の地面が広がって、里山の風景を切り取った空間が再現できます。常緑性のヤブラン、ノシラン、フッキソウ、キチジョウソウなどは定番で、これらの緑で地面が覆われるだけで目の前の風景が一変します。

上の写真は常緑のフッキソウを下草に、落葉性のシダ、クジャクシダを組み合わせた風景です。フッキソウだけでは単調になりがちですが、葉が細かく切れ込んだクジャクシダが入ることによって、大きな変化が生まれました。

続いて2枚の写真をご覧ください。1枚目は常緑性下草の一つ、ヤブランです。公園などのグラウンドカバープランツとして使われることが多いですが、れっきとした日本の山野草でもあります。ほどよいボリュームで茂ってくれ、さらに花もきれいで、使い勝手のよい下草です。2枚目の写真はノシランで、夏に純白の花を樹林下の暗いところでもきれいに咲かせてくれます。植栽の奥の方で、手入れもままならないようなところで効果を発揮します。暑さ寒さともに全く平気な最強健の常緑性下草の一つです。

グラウンドカバープランツとして使われることが多いヤブランですが、れっきとした日本の山野草でもあります

大型の常緑性下草、ノシランです。葉を長く伸ばし、大株になって地面を覆ってくれます

庭づくりでは前述の常緑性下草に、さらに落葉性下草のギボウシやフウチソウを加え、極めつけは、常緑性や落葉性のいろんなバラエティーのシダを点在させると、とてもナチュラルな落ち着いた空間が広がります。

下の写真をご覧ください。青葉のフウチソウが地面を覆う中で、中国のヤブレガサが葉を展開し、花も咲かせている風景です。繊細なフウチソウが野原感を醸し、中国のヤブレガサが季節と個性を発揮し、小さな風景をつくっています。

青葉のフウチソウが地面を覆う中で、中国のヤブレガサが葉を展開し、花も咲かせている風景です

改良された園芸植物で庭を彩ることも楽しいですが、もう片方で山野草の似合う落ち着いた植栽も、味わい深く、じっくり楽しめます。どちらか一方に庭をつくることもありですが、庭の環境や見え方によって、華やかな園芸植物が咲くエリアと、ナチュラルな山野草が似合うエリアが混在していてもよいと思います。

庭をうろうろしながら、想像たくましく、ゾーニング(※)を楽しんでください。きっと、楽しみの多い、素晴らしい庭が出来上がると思いますよ。

※ゾーニング:庭をいろんなエリア、ゾーンに区分けすること

次回は「経年変化を見守ろう」を更新予定です。お楽しみに。

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