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連載

【第2回】いろいろなタネ

文・写真

三橋理恵子

みつはし・りえこ

園芸研究家。一年草・多年草をタネから育てる研究をしている。著書に『三橋理恵子の基本からよーくわかるコンテナガーデン』(農文協)、『イラストで学ぶ、はじめてのガーデニング』(角川マガジンズ)などがある。


※タネのまきどきなどは神奈川県横浜市における栽培に基づいて記載しています。

【第2回】いろいろなタネ

2017/02/28

イラスト:阿部真由美

タネは大きさも形もさまざま。バラエティーに富んでいます

タネまきは、まずタネを手に入れるところから始まります。タネは購入するのが一般的なので、お店でならタネ袋を手に取って選びます。この段階ではタネを選んではいるものの、中のタネは見ていないわけですから、タネとの出合いはしばしお預けです。興味があっても中袋は開けず、湿気を避けるために保存瓶や缶、ビニール袋などに入れて、すぐに冷蔵庫で保管します。タネをよい状態で保存するためです。

タネと出合うのは、タネまきのとき。中袋を開けて慎重にタネを小皿などに出します。タネは大きさや形、色など、種類によりさまざま。とはいえ、庭で育てる草花やハーブ、葉菜類などのタネは、手で1粒ずつつまむのが難しいくらいごく小さなものがほとんど。色も黒っぽいものが多く、なんの変哲もない感じです。もし顕微鏡で観察できれば、その極小の世界は驚きに満ちた造形が広がっていますが、そんな世界も家庭では無縁かもしれません。

タネまきが初めてなら、その小さなタネの扱いは難しいでしょう。時には1袋に1000粒などと、途方もない数のタネが入っていることがあります。そんなときは一粒一粒のタネと向き合うのはまず無理です。ざっくり大ざっぱにタネをパラパラまくというスタイルになります。普通は1袋に20〜60粒ぐらいのものが多いので、これならきちんとタネと向き合えます。

中には手でつまめるくらいの大粒のタネもあります。野菜のタネもマメ類は大きめ。草花でも、アサガオやスイートピー、ルピナス、ナスタチウムなどは大きい方で扱いやすいので、タネまきの初心者向きです。タネが大きい植物は、出てくる芽も大きく生育も早いので、より成長を実感できます。
反対に微細種子と呼ばれる、ごくごく細かいタネもあります。微細なタネから出てくる芽はごく小さいのですが、どれもが個体の小さなわい性の草花に育つわけではありません。ジギタリスなど大型に育つものもたくさんあります。ペチュニアのタネも微細ですが、発芽後2〜3カ月で花を付けるほどにぐんぐん成長します。

タネの寿命は、種類や保存状態によりさまざま

タネは湿気を避けるため、保存瓶や缶、ビニール袋などに入れて冷蔵庫で保管するとよいでしょう

小さくて黒っぽいタネたちを目の当たりにしても、生き物という実感は湧かないかもしれません。それでも私たちと同じように呼吸をしています。酸素を吸い、二酸化炭素を出しているのです。タネを冷蔵庫で保管するのも、タネが生きているから。多くの野菜は冷蔵庫で保管すると鮮度を保てますが、タネも同じ。呼吸量がぐっと抑えられて、タネの寿命は延びます。暑い季節にタネを常温に置いたままにすると、暑さで呼吸が激しくなり、タネたちはへとへとになります。想像してみると、ちょっとおかしいですね。植物育ては目に見えないことが多い分、そんなふうに想像力を働かせることがとても大切です。

もちろんそれぞれのタネにも、寿命はあります。ただ、保存状態や種類により異なるので、おのおのの目安を示すことは難しいです。ただし、トマトのように長寿命のものもあれば、デルフィニウムのように短命のものもあります。短命のものは新しく保存状態のよいタネを買い求めることが大切です。店頭で日差しにさらされたタネなどは、避けた方が賢明です。
家でまき残しのタネを冷蔵保存しても、経年で発芽率はだんだん落ちます。それでも家庭で育てるなら、少し多めにまいて対応できます。ただし、かなり古くなったタネの場合、芽は出てもその後の生育がおもわしくないこともあります。

タネにはいろいろな処理が施されています

一般的に販売されているタネには、何らかの処理が施されているものが多くあります。それが加工種子です。
多くは殺菌処理で、これはタネを雑菌から守ります。中には袋から出したタネが白かったり、青かったり、緑色だったりすることもあります。これは殺菌剤で色付けされているもののほか、タネがごく小さいためにコーティングしてサイズを大きくしてあるもの。もともとのタネはその内側に隠れていて見えません。
これ以外にも、硬実処理、プライマックス処理などいろいろあります。これらは、私たちがまきやすいように、また発芽しやすいように処理されています。また反対にタネの外殻などが付いた状態で売られているものもあります。この場合は、まく前に水につけるなどの処理を施すと、発芽がスムーズになります。

次回は「春まきで楽しむ、夏から秋の草花」を取り上げる予定です。お楽しみに。

JADMA

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