文・写真
三橋理恵子
みつはし・りえこ
園芸研究家。一年草・多年草をタネから育てる研究をしている。著書に『三橋理恵子の基本からよーくわかるコンテナガーデン』(農文協)、『イラストで学ぶ、はじめてのガーデニング』(角川マガジンズ)などがある。
※タネのまきどきなどは神奈川県横浜市における栽培に基づいて記載しています。
【第3回】春まきで楽しむ、夏から秋の草花
2017/03/28
タネまきの期間が初夏まで長く続く、春のタネまき
今春はどんな草花のタネをまきましょうか。タネは発芽適温になる時期を待ってタイミングよくまくのが肝心ですが、春まきは別です。春から初夏まで暖かな気候が続くので、長くタネまきが楽しめます。春はのんびり、ゆったり構えていても、まき時を逃すことはありません。春まきの主な草花は、暖かな気候でぐんぐん生育する熱帯性の草花たち。原産地も熱帯アジアやアフリカ、メキシコ、ブラジルなど多彩です。
タネまきをして育てた苗で夏から秋の花壇を作るなら、わい性種、中ぐらいの草丈のニーハイ種、高性種、つる性と、さまざまな種類を組み合わせたいもの。品種によって草丈は異なるので、植える目的に合わせて選びます。
熱帯性の草花には、マリーゴールドやヒャクニチソウ(ジニア)、ペチュニアなどのように丸っこい花のものが多いので、穂が付くもの、集合花などを意識して多めに加えると花壇が多彩になります。花の大きさも小花、大きな花を組み合わせると、熱帯の風情を演出できます。私が夏花壇に欠かさないのがヒャクニチソウとセンニチコウ。名前の通り暑い季節でも花持ちが抜群。またコリウスやハツユキソウ、バジル「ダークオパール」など、葉が美しく観賞できるタイプもぜひ加えてみてください。
発芽適温に合わせて順にまきましょう
春まきの草花は、屋内にまき床を置けば、屋外が発芽適温になる前に早まきができます。中でも、微細タネは出てくる芽も小さく、初期の生育に時間がかかるので、なるべく早めのタネまきがおすすめです。早くまけば早く苗が育ち、花も長く咲きます。ペチュニア、ベゴニア、マツバボタンなどが代表。ただしこれらは、発芽適温が25℃前後と高めなので、居間などの暖かで日の当たる窓辺で管理する必要があります。
屋外でのタネまきは、八重ザクラが散るころから。発芽適温が20℃前後のものからスタートです。しかし、このタイプは発芽適温の幅が広いものがほとんど。高温になっても発芽するので、あまり気温に神経質になる必要はありません。なるべく小さい粒のタネからまき始め、だんだん大粒のタネをまきます。大粒のタネは生育が早く、苗の仕上がりも早いためです。例外としては、ダリアやナスタチウムは大粒ですが、早めにまくことをおすすめします。というのは、暑くなると花を休めるため。夏までに咲かせるには、早めのタネまきが向いています。
この後、温暖地ならゴールデンウイークのころを待って、発芽適温が25℃前後の高温発芽性の草花たちのタネをまきます。ニチニチソウ、ケイトウ、トウガラシなど。つる性草花も高温発芽性です。これらは温度が足りないと芽が出ないので、半袖で快適に過ごせるくらいの気温が目安です。気温が安定しないと発芽に日数がかかりますが、気温の高い時期へと向かうので、発芽が難しいわけではありません。
最後は6~7月に、夏に弱った株の補植用や秋花壇用の草花のタネをまきます。秋は草花がよく生育する時期で、寒さが来るまでの間、長く楽しめます。アゲラタムやマリーゴールドなど、日が短くなってからよく咲くタイプの草花のタネまきにも向いています。秋には花色が濃くなり深みも増すので、この時期に花壇をしっかり作り込むとにぎやかになります。
若苗をタイミングよく植えるために、まき時を調整するのもポイント
春のタネまきでは、発芽適温の他にもう一つ考えたいことがあります。それは苗の生育と植え付けとの関係。一年草の春花壇からの入れ替えを前提にすると、春咲きのコンテナや花壇では、花が終わったものから順番に植え替えていきます。花壇では春遅くまで咲いている草花もあり、土作りすることを考えると、そんなに早い時期から空きが出ません。
しかし苗の生育はスピーディーです。早くまき過ぎるとポットで根詰まりを起こし、苗が老化してしまいます。芽が出てから一番花が咲くころまでの育苗期間は、だいたい2カ月が目安。定植はその前から順にできますので、早まきは禁物です。定植の時期をよく見極めてまき時を考えると、スムーズに春まきの夏花壇に移行できます。
また、つる性や高性種の草花は、茎が長く伸びやすいもの。コンパクトに抑えたければ、遅めにタネをまくのもテクニックの一つです。適期がきても急いでいっぺんにまかずに、順番にゆったりやりましょう。早く咲かせたいものから優先してまくとよいでしょう。
次回は「タネまきの基本、床まきをマスターしましょう」を取り上げる予定です。お楽しみに。